ある日、神様がやってきたとする。
その、なんやかんやで降りてきた神様的なヤツが「おお、死んでしまうとは情けない。情けなさ過ぎて哀れなので大好きだったゲームや漫画の世界に転生させてやろう!」みたいなことを言ったとする。
そりゃマジなら多くの人間が望むだろうさ。
現実なんて大抵くそったれで、だからこそゲームだの漫画だの腐るほど作られてるワケだしな。
とはいえ、だ。
俺としては、そいつの肩を持って、ちょっと待てって言ってやりたいね。
結局のところ、主人公たちの努力によってそのゲームや漫画の世界は美しく見えているだけで、その実、現実なんかよりもよっぽど厳しい世界だったりもする。
結局何が言いたいかって言うと、そんなに良いもんじゃないって話だ。
なんで、そんなことが分かるかって?
――GRRRRRAAAAAAA!
「ああああああああ! 死ぬ! 今度こそ死ぬ!」
俺がポストアポカリプスの世界に転生した当事者だからだよ!
「ヤバイ! 今度こそ本当にヤバイ!」
荒廃したビル群の道路。
その中央を全速力で突っ切る。
後ろからは、バイオでハザードに機械をプラスしたような狼の群れが迫ってきている。
『センパイ。さっきからヤバイとか死ぬとかしか言ってないじゃないですか。語彙力、道に落としてきました?』
右耳にセットしたインカムから、女の子の声がする。
よく見知った声だ。
「お前ね! 魔獣に襲われてる時に言うのがそれか!? お前こそ倫理感どこに落としてきた!?」
『使わないと思って事務所に置いてきました』
「取りに行ってこいっ!」
『わかりました。迎えに行ってたんですが、Uターンして事務所に戻ります』
「嘘だよっ! ごめんねっ! そのまま迎えに来て!」
『しょうがないなぁ~』
コイツ……マジでどうしてくれようか……ッ!
心底ムカつくが、命が助かるならプライドなどいくらでも捨ててやろうという気概で、必死に機嫌を取る。
絶対後で、十字固めとか決めてやろうという決意とともになっ!
半ば、スライディングじみた動きで十字路を曲がる。
荒廃したビルから、やはり荒廃したアスファルトの舗装道路。
そこには、見知ったライトバンと、運転席から拳銃を突き出している少女が……。
――BANG!
「あっぶね!」
こちらに向けられた銃口が視界に入った瞬間、ライトバンに向かって、ヘッドスライディング。
頭を下げた瞬間、視界の端でマズルフラッシュが光り、発砲音が響く。
「おぅっ!」
ゴロゴロと転がって、背中をライトバンのタイヤに強打。
肺の奥の方から、声が漏れる。
「センパイ大丈夫ですか?」
「大丈夫ですかって……。お前のせいで、死にかけたよ」
右手はバンの車体をなでながら、左手で痛めた背中を擦りながら立ち上がる。
先ほどまで全速力で追いかけてきた魔獣たちは、いきなり現れた車と、仲間を射殺した新しい敵を警戒して近づいてこない。
よしよし。
好都合だ。
このまま、とんずらしちまおう。
「死んでないから問題ないっすね。……はいこれ」
逃げの算段を立てていた俺の目の前にひょいっと、マットブラックの棒が差し出される。
俺愛用の武器である。
「……えっ? 戦うの? マジで?」
「マジっす。今回の仕事、途中で邪魔が入って報酬の半分が飛んじゃったんですから。せめて、魔獣のドロップくらいは回収しないと」
「えぇ……でもさぁ……」
「問題ないっすよ。私もこっから援護しますんで」
そう言って、マガジンを変えつつ、自動拳銃をコッキング。
ハンドルに置いていた片手を、拳銃に添えて、魔獣を狙う。
逃げようにも、バンの運転席は占領されてるし、何より銃を向けられたアチラさんが、それはもうやる気を出し始めてしまった。
「はぁ……。もうちょっと平穏な世界だったらなぁ」
な?
転生なんて、そんな良いもんじゃないんだよ。
というわけで、オリジナル新作。というか、見切り発車っ!