「それにしても、今回の話よく受ける気になったな」
「俺じゃなくてユズハがね。……俺は正直、働きたくはない」
「そんなん俺もだわ」
できればグータラしていたい。
「今回の依頼主『第八火葬会』って名前の組織なんだが、知ってるか?」
「俺はさっぱり知らん」
名前がダサいことしか分からん。
「ユズハ嬢ちゃんは?」
「私も詳しくは知らないっす。ガラが悪くて、ウチの業界でも評判が悪い集団ってことくらいっすね」
「……通りで」
カンちゃんが頭をポリポリと掻きながら、深いため息をつく。
「最初に言っておくが、やっぱり無しってのは勘弁してくれよ?……今回の依頼元は、旧軍から分派した組織だ」
「げっ」
「……っ!」
旧軍。
この言葉が指すのは、特定の国の軍隊ではない。
簡単にいえば、世界が滅びる前、滅ぶ原因となったシステムや魔獣を好き放題使いまくった昔の軍隊の総称だ。
「……ユズハ。どうする?」
そして、ユズハがもともと所属していた組織も旧軍絡みだそうだ。なんだったら、原作のユズハはその組織にずっといたくらい縁が深い。
もっとも、ろくな思い出じゃないみたいだが。
「……もう私と旧軍は関係ないっすから、問題無いっす。それよりもウチの貯金の方が大問題っすよ」
「そっか。……そんな貯金ねぇの?」
本人が大丈夫って言うなら、大丈夫だろう。
何かあれば、俺がフォローすればいい。
チームでやってるわけだしな。
「とりあえず、問題無いってことでいいな?」
「っす」
「それじゃあ、改めて仕事の話だ」
カンちゃんがテーブルの上にスマホのような機械を置き、画面をタップする。
ぶぉん……という音がしながら、立体的なマップが空中に表示される。
こういうのSFって感じで結構好きだなぁ。
「といっても、内容はシンプルだ。依頼元との合流ポイントで荷物を受け取り、そのまま依頼先まで運ぶ」
「……いつも通りって感じだよね」
正直、こんな物々しい部屋に通されるほどじゃないと思うんだけど……。
ユズハと顔を見合わせていると、カンちゃんがスッと二本の指を立てた。
「問題は二つ。一つが極力、荷物に触れないこと。開けるのはもってのほかだ」
「めんどくさぁ」
「聞けって。そして、もう一つ。コレが問題なんだが、荷物を引き渡す合流ポイントが『狼の巣』ってことだ」
「はぁ!?」
「そいつらバカなんすか?」
思わず、大きな声が出る。
「まあ、そういう反応になるわな」
「狼の巣って、狼型の魔獣を培養しているプラントがある場所っすよね?」
昨日、追いかけ回された奴らな。
おかげさまで、全身ボロボロになっちゃったよ。
「近寄りたくねーよー」
ぐでぇ……と机の上に突っ伏す。
気分は、おもちゃ売り場で寝っ転がる子どもの気分だ。
……もっとも、おもちゃ売り場なんてこっちの世界にはないんだけどね。
「んなこと言われてもよ。もうアッチには依頼を受けるっつってんだぞ」
「飛んでいいか?」
「アイツらから鉛玉が飛んでくるだろうな」
八方塞がり。
オッケーなんて言わずに働きたくないって駄々こねればよかったかもしれない。
とてつもない醜態を晒すことになるとは思うが。
「……なにを運ぶんすかね?」
「さあな。それも含めて機密だとよ。……おかげさまでデバガメ連中が荷物を掠め取らないようコソコソ話す羽目になっちまってよぉ」
通りで厳重だと思ったよ。
たまにいるんだよね。
運び屋の依頼を盗み聞きして、盗賊よろしく荷物を奪っていこうとするやつが。
俺たちも、何度か酒場で見た顔の盗賊に襲われたことがある。
ことごとくボコボコにしてやったが。
「とにかく、この二点を踏まえた上でブツの輸送を頼むぞロク。依頼元から恨まれたくねえからな」
「チンピラなんだろ?」
「チンピラは力の差がわからんから面倒なんだよ」
なるほど。確かに。
「それじゃあ、俺らも睨まれない程度に仕事をしますか。……準備するよユズハ」
「っす」