「ここがエルデン学園か〜」
俺、
楽しみだな〜と一歩踏み出したところで、角から出てきた人とぶつかってしまう。
「いてて…」
「大丈夫ですか?」
すごくベタな展開だ!ひょっとしたら今作のヒロイン!?と思って顔を上げればそこにあったのは白面。
薄ら笑いを浮かべた白面をかぶった人物がこちらに手を差し伸べている。
「あ…大丈夫です…」
「おお、あなたは…新入生だったんですね」
彼の手を取って立ち上がり埃を払うと、彼は俺の首に着けたピンバッジで学年を把握したらしい。
「入学おめでとうございます。私の名前はヴァレー。あなたの名前をお聞かせください」
「俺は、褪人谷樹っていいます。先輩…なんですかね?」
ちらと首のピンバッジを見るがついていない。我々の校章でもある黄金律、その輪の数で学年を示すのだが…彼の首襟にはついていないのだ。
「褪人さん…ですか。そうですね、私はあなたより少し早くこの学園にお邪魔させていただいています」
「あ、そうだったんすね。ところで、なぜ校章をつけていないんですか…?」
「まあそれは諸事情ありまして。部活とか…はまだ決まってないでしょうね。ささ、今日は入学式でしょうから先を急いでください。再び会えるのを楽しみにしていますよ」
そう促されて時計を見れば時刻は7:50を指していた。今日は8:00までには教室にとお触れが出ていた。
「やべっ!それじゃあまた!ありがとうございました!」
とヴァレーさんに別れを告げて学校へと入る。校門の脇には超怖い騎兵がいた。全身金の警備服に斧槍に盾でデカい馬て。警備員として圧はあるけど趣味悪くない?
すでに人気のない昇降口を抜け、1年の教室へ走る。途中なぜかスタミナが切れたので歩き、また走り出して何とか55分には教室に着いた。
教室
なんか変なテロップ入ったな。
教室の中はすごく静かだ。皆おとなしく座っている。このクラスは俺、狼頭の人、亜人、やたら猫背の上流の子の4人だ。
この学園自体には学生いっぱいいるはずなのに一年だけ生徒が少なすぎる。
うちは野球部とか部員40人くらいいるのに。ほとんど卑兵とかだけど。
「よろしくな、俺褪人」
隣に座っている狼頭の男に話しかけた。その男はこちらに一瞥を向けると、すぐに足を組んで寝始めてしまった。
「うぉいフル無視かよ」
「あ、あのはじめまして」
と文句を言っていると後ろから話しかけられる。やたらと猫背な貴族然とした少女だ。
「おう、よろしく!俺褪人。君は?」
「私はラーヤと申します。褪人様ですね、よろしくお願いします」
和気藹藹、自己紹介に興じていると廊下から先生が部屋に入ってくる。なんか、変な頭をかぶってる…女性?なんだろうか。
「諸君ら一年の担任になったセレンだ。1年間よろしく。専門は魔術なのでな、それについてなら教えられる」
「おねがいしまーす」「お願いします」
かぶりものの外見通り女性だ。声の感じがすごく冷たい。
「君たちは…ここの入学試験を越えているくらいだからそれなりに素質があるんだろう。私では足りんだろうから繋ぎくらいに思っていろ」
なんか自嘲気味に笑ったような気がした。噂で聞いただけだけどここの先生はエリートまみれ、しかも黄金律教育が強い学校だから魔術の先生は肩身が狭いんだろうな。
「このあとすぐに入学式だからな、体育館に移動するぞ」
先生に連れられて、教室を出る。二列、普通なら長くなるはずであるのに短い列で廊下を進む。
しかし、上の学年は今日は学校ないのだろうか、学内でカケラも見かけない。入学式の日に学校に用事がないのはそうだが、なにか違和感がある。
体育館につけば、先生陣とおぼしき人たちが壁際に並んでいる。が、それだけ。広い体育館には見合わないほどのだだっ広さだ。
我ら4人だけが真ん中に並べられ、正面の壇上をじっと見つめると、無機質な入学式、開式のアナウンスが流れた。
4人だからか諸々の儀礼がすっ飛ばされ、校長からの言葉になった。
しかし壇上に上がったのは校長である、マリカ先生ではない。俺の知っているそれじゃない。
「えー、校長代理を務めているモーゴットである。入学おめでとう。以上だ」
一礼してひとこと言って、退場していった。それで終わり?ウソでしょ。ヴァレーさんと言ってる言葉の量変わんねぇけど。ていうかなぜ校長代理なんだ。
続きまして、生徒会長より祝福の言葉、と告げられ入れ替わりで壇上には複数人が登ってきた。
あれがうちの生徒会なんだろうけど、メンバーがジジイとババアばっかじゃないか?
てか生徒会長以外がなんで登壇してるんだ?
「我々は本校の生徒会、円卓だ。そして私が生徒会長を務める百智卿ギデオン=オーフニールだ。1年生諸君、君たちが優れた仲間であることを願っているよ。私から言うべきは以上だ」
鼻につくなこの人。そして声と腰の曲がりがジジイすぎるけど生徒なのか?そしてモーゴット校長代理に続いて短いな。
短ければ助かるけど風情がないよ、風情が。
話終えたギデオン生徒会長を先頭に後ろに立っていた人たちもぞろぞろと降壇していく。
あの人達いる意味あった?そして最初先生陣だと思ったのは全員生徒会だったのかよ。
そのまま閉式し、セレン先生の戻るぞの言葉に連れられて教室に戻る。
すると、先生が話始める。
「実のところ、校長は今失踪しているんだ」
「えぇっ!?」
「あまり大きな声を出すな。私も詳しくは知らんが、少し前にうちの学園の教師が殺害された事件を皮切りにいなくなってしまったんだ」
「殺害って…そんなことが?でも殺人事件なんて起こったら俺たちが知らないわけが…」
「全力でうちの学園が隠蔽しているからな、知らないのも無理はない。ホームページにマリカ先生の不在は記しているから…今年はこの生徒の数というわけだな」
セレン先生が教室を見回してすこしため息混じりにつぶやく。
「まあそんなわけで日夜職員会議が繰り返されている。私が担任を務めることになったのは、異端だからだろうな」
「いや…まあ…」
そうともちげーとも言えない空気、出会って初日で先生にずっと自虐されるとそれはそれでキツイものがありますわ。
「まあ、そんなわけだからしばらく教師陣がバタバタしているが気にするな。では、解散」
セレン先生はそう言い残すと、名簿をたたんで教室から出ていってしまった。なんちゅーか、非常時だからしょうがないんだろうけどあまりにも雑じゃないかな。
俺の隣の狼くんも先生とほぼ同時にカバンをもって教室から出ていってしまった。
気づいた時には亜人の彼もおらず、なんかわかんないけど教室のなかに木が生えていた。
ここは生命あふれるエルデン学園、そういうこともあるか。
教室の中には俺とラーヤちゃんしかのこってない。
「う〜ん…ラーヤちゃんはこのあとどうするの?」
「ええと、タニス様…私の養母に早く帰ってくるように言いつけられているのでこのまま帰ろうと思います」
「そうなんだ。じゃあまた明日」
「ええ、また明日」
柔らかく手を振る彼女に別れを告げる。彼女の首にキラリと光る首飾り、あれに映ってた女性がそのタニス様って人なんかな。
しかし養母とは実に複雑そうだな、ラーヤちゃんのお家は。
俺はやっているか分からないが部活とか校舎をみたりしてから帰ろうと思い席を立った瞬間、バン!と教室の扉が開かれる。
そこにいたのは角の生えた馬に乗った少女。
グラサンをつけてロアの実ガムを口で膨らましている…スケバンと言った風体だ。さらにいえば右手にナイフを握りしめている。
「はじめまして、私はメリナ。貴方と取引がしたいの」