アークナイツ「慈悲光塔」RTA 1098年10ヶ月   作:おじさん

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お ま た せ
1週間待たせておいてアレなんですが、なんと次話を書き溜めていません。てめぇ様は何をしてくれちゃってるんだスギ?(憤慨)
運が良ければ明日に#12が上がったり上がらなかったりします。

主人公がやや重めの感情を向けられるのは当たり前だよなぁ?


#11

ホモちゃんがそろそろイェラグに移動するRTA、はぁじまるよー。

 

前回はカジミエーシュの王様にカチコミ申してきました。

じゃけんどんなトロフィー貰ったか確認しましょうね〜。

 

 

 

テレレレレテーッテッテッテ♪

テレレレレテーッテッテッテー♪

テーッテレレ♪

 

 

だ〜〜〜〜れだ!!!!

 

 

(CM)

 

 

テレレレレレレレレー♪

テーッテッテテテテテテ♪

 

トロフィー『影騎士』

 

 

 

ということで、トロフィー『影騎士』を入手しました。

 

……トロフィー『影騎士』!?!?

まさか隠しノードクリアで騎士号持ちになれるとは……たまげたなあ。

騎士号獲得RTAはテラ歴元年からレヴァナントとして走ると現状最速らしいです。他の走者兄貴姉貴達による挑戦、チャート開拓をお待ちしております。

 

隠しノードの報酬として経験値も沢山貰えましたので、普段の走りよりも早い段階で中々の強さになりました。

勿論報酬素材も沢山貰えましたね。これでイェラグにで、出ますよ……。

 

 

「うんうん、納得の勲章だな!」

 

アルバートニキ曰く納得らしいです。ほなええか……(適当)

この人の納得の基準はなんなんですかね?

 

まあ報酬は貰えども王との対面で+審判の時+になるかと思ったのですが、思ったより大丈夫みたいですね。

これはwikiにコメントしておかないと!(使命感)

 

「俺は中で何があったか分からないが……何か言われたりはしていないか? ほら、嫌味とか……」

 

その辺りはんまぁそう……(ムービースキップしたので)よくわかんなかったです。

まあでも言われてないんじゃない?

それ以上動いたら切るゾ。とかされてないんなら、嫌味も言われることは無いかと思います。テラ歴元年のテラ人は意外と心がそんなに捻くれていません。

文明の複雑化もそこまで進んでないから、当然ではありますね。

 

「おいモーヴィスト! 騎士号を賜ったそうじゃないか、ん!?」

「あ、エドウィン」

 

なんだァ?てめェ……遅延イベントは、罪だろ。

これは祝いに来ていますね、間違いない。そんなことしなくていいから(良心)

 

「馬鹿者ォ! 祝いに来……てはいるが!!」

 

なんでそれ以外の用も無いのに来る必要なんかあるんですか。

お前遅ェんだよォ!!まるでアングリーバードだぜ(至言)

 

「おッ前……!! 俺が……!! 巫術について知った時、どんな気持ちをしていたと……!!」

 

……ん?

この騎士今アーツじゃなくて巫術って言いました?

 

「このように重大な秘密をわざわざ俺に探らせるなこの大馬鹿者がァ!!!!」

 

なんか巫術のなんたるかも知ってそうな雰囲気出したり出さなかったりしてませんか?

これもしかして……もしかするかもしれませんよ……。

 

「フウ……フウ…………おい、モーヴィスト。王は“それ”を知った上でお前に騎士号を与えたのだな?」

 

ほんとぉ?(透き通るような世界観)

ムービースキップしてるのでよくわかんぬい……会話の流れ的にはこれホモちゃん種族バレしてる……してない?

 

もし仮に種族バレしてるなら、王がそれを知らないはずがないですし、もしかしなくてもサルカズであることを知られた上で勲章を貰ったということになりますねぇ!

 

……ほ、ほんとぉ??(疑念)

果たしてサルカズだと分かっていて騎士号を賜わす王がいるのか?ホモは訝しんだ。

 

「……お前の巫術があの脅威を退ける鍵であったのならば、その勲章は妥当だろう。……癪だが、認めてやる。立ち向かったお前は強い。その名に恥じぬ騎士だとな」

 

そう……(無関心)

 

「それで、お前たちはあの集落へ戻るのか」

「そうだな。ホルス嬢も障りないようだし」

 

あ〜今日も学校楽しかったな〜。早く帰って宿題しなきゃ(使命感)

さっさとこんなところからオサラバしてやるぜ!

 

「えっ」

「? カジミエーシュを出るのか?」

 

なんで両方とも驚いてるんですかね……エドウィンニキはまだしも、アルバートニキは……まさか忘れてたのでしかね?

何やってんだミカァ!(聖園)

 

イェラグに行く決まってるよなぁ!?

雪山登山日和ってるやついる!?いねぇよなぁ!!

集落への帰還は行きで使った台車をもう一度加速アーツで押し続ければいいだけなので、今の時間に出て夕方に着くから、安定のために夜はスキップして……明日ですね。

 

「えっもう!? 聞いてないぞホルス嬢!?」

「そういえば元々は旅人とかいう話だったな……忙しない奴め」

「えっ、本当に明日!? 本当に!? いくらなんでも急じゃないか!?」

 

RTAは鮮度が命ってそれ一番言われてるから。

 

アルバートニキがなんか必死に説得しようとしていますが、B連打でその予定はキャンセルだ、騎士。

聞くって言ったのに聞かねぇってお前おかしいだろそれよぉ!!

 

「おいアルバート、その様子だと説得しても無駄だろう。いいからさっさと台車を引いてこい。お前が訓練場に置いてきたせいで邪魔でかなわん」

「ぐ、ぐぬ……」

 

走者も、そうだそうだと言っています。

おう、あくしろよ。ヨツンヴァインになるんだよ(台車取ってくるんだよ)

 

さて、アルバートニキが台車を取りに行ってる間に、集まった素材からイェラグ行きの装備を作成しておきましょう。

専用の作業台が必要となるようなものは既に作ってあるので、あとはこいつらを報酬素材で丁寧丁寧丁寧(ていねいていねていねい)に包んだり包まなかったりしろ!!

かしこい走者は、隙間時間に作業が出来る。

 

「……おい、モーヴィスト」

 

また君かぁ壊れるなぁ……。

おい、遅延するなら命賭けろよ(覚悟)

 

あれ(・・)はよほどお前に懐いているらしい。駄々をこねるだろうが……お前がそれに付き合う必要はない。お前のしたいようにしろ、いいな」

 

よくわかんないけど……なんかわかった!(NT並感)

あれ(・・)の指す所さんは、アルバートニキですかね。まあだいぶ親愛度上がってるからね、仕方ないね。

 

 

さて、エドウィンニキが長々と話してるのを聞き流しつつ、仕様の解説を挟んでおきます。

NPCからこういった忠告が入る場合、ムービー中に特別分岐が入ります。ムービーを眺めてたらいきなり分岐選択が出てきてビビった初見兄貴姉貴達も多いんじゃないかな?

 

ここで特別分岐の選択……今回で言うと、カジミエーシュの滞在ですかね?それを選択すると、特別イベント……というより、特別ルートに入ります。

 

まあ具体的に言うと、カジミエーシュの重要人物になります。騎士号持ちな時点で相当重要人物じゃない?というのは一旦置いておいて……そうですね……。

もっと具体的に言うと、ホモちゃんにカジミエーシュ陣営効果が乗るようになります。あと1000年後とかのカジミエーシュイベントに強制参加することになります。いや~キツイっす(素)

 

当然今回のチャートではこれは採用しません。遅延だし、あんまりうまあじもないからね。残当。

 

そしてこれはRTAにおける重要テクニックですが、ムービースキップすることで、ムービー中の分岐自体をキャンセルできます。朝日テレビはキャンセルだ。

これによって特別ルートに入ることもなく安全に突破が可能です。やったね!

 

「……おい、聞いているのか。おい!」

 

おう、考えてやるよ(聞くとは言っていない)

と、いうことで、心配無用です。

ホモちゃんがここに残らないゾは、当たり前だスギ?

 

 

 

 

 

 

 行きはよいよい、帰りはなんとやら。などということは全くなかった。レヴァナントと騎士は何事もなく、日が傾いた頃に集落へと帰還した。

 集落の全員に心配をかけたレヴァナントは、無事の帰還に喜ぶ住民たちにしばらくの間揉みくちゃにされたし、次いで明日には出ることと、今日までの感謝を伝えると再び揉みくちゃにされた。

 騎士もそれをしばらくの間とめることなく見守っていたせいで、レヴァナントが騎士の家に帰る頃にははすっかり日が落ちていた。

 

「……なあ、ホルス嬢」

「なんだ」

「本当に行ってしまうのか」

「元よりそのような話だろう」

「それは、そうなんだが……」

「明日は早い内に出る。私はもう寝るぞ」

「も、もう寝るのか!?」

「早い内に出ると言っただろう」

 

 そう言ってレヴァナントは床に作った簡易的な寝床に横たわる。

 レヴァナントが騎士の家に居候して1年ほどのとき、見かねた他の住民が譲ってくれた布団で作ったものだ。それを貰っても結局は騎士に誘われてほぼ毎晩寝床の譲り合いをかけたチェスをしていたのだが。

 今日はもう寝るからチェスはしない、と言外に圧をかけて布団を被るも、騎士はどうにも煮え切らない様子のままだった。

 

「なんだ」

「俺が寂しいんだ。話に付き合ってくれ……ちゃんと明日は起こすから……」

「……仕方がないな」

 

 困ったことに、レヴァナントは身内には甘かった。本人にその自覚はないが。

 布団をひざ掛けにして起き上がると、騎士は嬉々としてスープの残りを温め始める。

 どれぐらい起こすつもりなんだ、と呆れつつもレヴァナントは何も言わなかった。レヴァナントは身内にはたいへん甘かった。

 

 騎士からスープの入った碗を受け取ると、騎士も同じものを持って隣に腰掛け、朗々と話し始める。

 これまでの5年間の楽しかった話、焦った話、驚いた話、嬉しかった話、何故か毎度駄獣に襲われまくった話……レヴァナントはそれらに相槌をうち、たまに口出しをしながら耳を傾ける。

 たかが5年、されど5年。レヴァナントの生きてきた年数には到底及ばないような時間であっても、思い出というものは多く積み上がっていたらしい。

 

 そろそろ語り尽くしただろう、と思うこと7回。騎士はようやく言葉を止める。にわかに騎士の纏う空気が重くなったことをレヴァナントは感じ取った。

 

「……ここだけの話なんだが、いいか」

「どうぞ」

「砦で皆を失ってから毎日、悪夢を見ていたんだ」

「どのような悪夢だ」

「なぜ俺だけが生き残ったのかと、なぜ皆を守れなかったのかと、無数の暗闇に責め立てられる夢だ」

 

 ありがちな悪夢だな、とレヴァナントは頷いた。

 カズデルに居る若いサルカズなんかはよく見る類の夢だろう。そして現実でも悪夢のような戦いを繰り返して、擦り切れて、やがて夢を見れども何も感じることがなくなる。

 それを目の当たりにし続けて、いつの日かレヴァナントはカズデルを飛び出した。

 

「……君を家に招いた、最初の夜を覚えているか?」

「ああ。まさか初対面で食料も寝床も分けてもらえるとは思っていなかったからな。覚えているよ」

 

 塩で味付けしたマッシュポテトを思い出す。あの日、騎士はマッシャー代わりになるものが見つからないのを理由にほぼ手で芋を粉砕していた。

 近頃のクランタは随分と力が強いのだなと感心したのも束の間。騎士は外れ値であることを知るのは早かった。

 

「君を招いて、チェスをしたあの日は悪夢を見なかった」

 

 騎士が微笑む。

 よほど嬉しいのだろうか、宝物を撫でるようなやわい声色で騎士は静かに言葉を続ける。

 

「……俺がやりたいと言えば、懲りもせずに何度も付き合ってくれただろう」

「そうでもしないと貴方は毎日その寝床を私に譲ろうとするからな」

「当たり前だ。騎士たるもの……というか、あんなに痩せ細っていた君を床や椅子で寝かせられるものか」

 

 確かに、今と比べてあの頃はかなりの不健康だった。

 今でこそ、この体にも少しずつ筋肉というものがつき始めたが、あの頃はレヴァナントとしての肉体の操縦であの身体を動かしていた側面が強い。

 

「あれが……ふふふ、うん。本当に楽しかったんだ、毎日」

「毎回息切れしてたからな、貴方は」

 

 5年間、ほぼ毎晩。

 レヴァナントと騎士はあの到底ふざけているとしか思えないチェスをやっていた。

 最初は騎士を疲れさせる目的でチェスに誘ったレヴァナントだが、次の晩からは騎士からチェスをしようと提案してくるものだから、少し驚いた。

 キングは飛ぶし、クイーンは国を傾けるし、ルークは城ごと突撃してくるし、ナイトは合体するし、ヴィショップは祈りの力で駒を復活させるし、ポーンはデモ活動をしていた。

 

「楽しくて、楽しくて……自分が罪人であることを忘れるほどに、楽しかったんだ」

 

 今レヴァナントが腰掛ける布団を譲ってもらったころ、もうチェスはしなくてもよさそうだなと言ったにも関わらず、騎士は変わらずいそいそとチェスボードを用意していた。相手は恩人であるため、レヴァナントもしぶしぶといった様子で騎士の向かいに座るのだった。

 騎士は毎晩、息が切れるほどに全力でチェスに向き合って、時にはやかましいと他の住民からゲンコツを食らう。それでも懲りずにまたしても全力で臨むものだから、レヴァナントも途中から諦めて素直に付き合うことにした。

 

「この5年間、君が居る夜は悪夢を見なかった」

 

 なんとなくそうなんだろうな(・・・・・・・・)、と感じ始めたのはいつだっただろうか。

 レヴァナントがこの集落で働き、交流を深めていったある日だったか。集落の東側に住む、料理が得意なクランタの老父が言ったのだ。「お嬢ちゃんが来てから、みんなも、騎士様も、毎日楽しそうだ」と。

 

「君が居なくなると思って、途端に怖くなったんだ。……なあ、俺はまた幸せであることを、安らかに眠れる夜があることを知ったんだ」

 

 騎士の声が揺れている。不安と恐怖が入り交じって、どこか早口に言葉を紡いでいた。

 クランタの老父の言葉を聞いたあの時、レヴァナントは違和感を抱いた。騎士が落ち込んでいる様子というのは中々想像がつかなかったからだ。

 騎士は誰かが死んだのならば当然落ち込むだろうが、それでも立ち直ろうとする者だとレヴァナントは認識している。

 だから、自分が来てから楽しそうだ、という言葉にレヴァナントは首を傾げつつも、もしかしたらそう(・・)なのかもしれないと、薄々感じ取っていた。

 

「だから、だから……」

 

 レヴァナントの隣が静かになる。

 その先の言葉が長いこと無いこと訝しんで騎士に視線を向けると、騎士は膝を抱え込んで、そこに頭も埋めて、ひどく小さくなっていた。

 

「……どうした?」

「いや……いい。忘れてくれ、全部」

「貴方にこの5年間を忘れてもらうことは出来るが」

「ッ駄目だ!!」

 

 騎士がバッと顔を上げ、レヴァナントの肩を強く掴む。

 また骨を折るつもりか、とレヴァナントが言葉を零すと、騎士はハッとした顔で手を離す。しかしどうやら納得がいかないのか、表情は曇ったままだった。

 

「そんな酷いこと、冗談でも言わないでくれ」

「悪かった。それでさっきは何を言おうとしたんだ」

「それは……」

 

 またしても顔ごと目線が逸らされる。

 ばつが悪そうな様子で、忙しなく耳や尾を揺らしながら、それでも騎士はその先を言葉にしなかった。

 

「聞くかどうかは別だが……言うだけ言ってみろ、サー・アルバート」

「……君に迷惑をかけたくない……」

「そこまで言えばほぼ言っているようなものだろう。怒ったりしないから、ほら」

「…………」

 

 この5年間、ぴんと立ったままだった騎士の耳が傾いている。

 当然といえば当然だが、後に続くであろう言葉をレヴァナントは察していた。

 長い、長い沈黙のさなか、さてどんな言葉を返したものかな、だとか、あとどれくらい黙っているかな、だとかを呑気に考えている。

 

 だから、騎士の言葉に面食らったのだ。

 

 

 

「…………たのむから、いかないでくれ……」

 

 耳を澄ましてようやく聞こえるかどうか、といったその声は、しかしてはっきりとレヴァナントに届いた。それは思っていたよりもずっと重くて、ずっと痛切な響きをしている。

 

「まいったな…………」

 

 レヴァナントの第一声はそれだった。

 予想していたよりもずっと寂しそうな声は、シミュレーションしていた返事を全て吹っ飛ばしてしまった。

 悪魔を前にしてあれだけの虚勢を張っていた騎士が、こうも苦しげな声を出すなどと、思ってもいなかったのだ。

 それこそ、もう少し軽く……冗談のような、受け入れられると思っていない頼み事をするような声色でその言葉を出すと思っていた。

 

「君が、俺に悪夢を忘れさせて、俺に夢を見せたんだ」

「……どのような夢だ」

「俺が罪人ではなく真の騎士だという、もしもの夢だ」

「まだ夢の続きを見たいから、私を止めるのか?」

「夢はいずれ覚めるものだと分かっていても、それが……夢が覚めるのが、もう少し先になってほしいと願うのは、おかしなことかな」

「いいや、何も。当然だとも」

 

 安寧が続くことを望む者は少なくない。レヴァナントもまたその一人だ。

 騎士はその言葉を最後にして、こちらの返答を待つように黙り込む。

 レヴァナントは少し困って唸ると、先に吹き飛んでしまった言葉を探り、吟味して、騎士へと返す答えを組み立てる。手慰みに擦った碗の中身は、とっくに空だった。

 

「先に断っておくと、残念ながら貴方の願いを叶えることはできない。だが…………おいサー・アルバート。聞け。こら、拗ねるな……子供でもあるまいし」

 

 頭上の耳をぺたりと下ろし、その上揺すれどもこちらを向かない騎士にため息を吐き出す。仕方がないので騎士をそのままにして口を開いた。

 

「貴方が歩んだ5年間は、夢ではないよ」

 

 未だこちらを向こうとしないまま、騎士の肩が揺れる。

 騎士は未だ己の過去に打ち震えている。それに追いかけられるようにして生きている。

 だから騎士は己を罪人だと嘲ったし、過去から距離を置いた今の姿を夢なのだと思い込んでいる。

 

「貴方が前を向いて、駆けてきた、貴方が積み重ねてきた現実だ」

 

 レヴァナントはこの5年間を夢だと思うことはなかったが、何度か夢のようだとは考えたことはある。

 手始めに騎士の善性だった。彼が縋った『騎士』とやらの姿に殉じようとしていたからなのか、生粋のものなのか。この5年間、騎士はレヴァナントが思わず目を疑うほどのお人好しのままだった。

 

「たとえどのような夢であってもいずれは覚める。悪夢であろうと例外はない。……私が貴方を悪夢から覚ましたのではない。貴方が悪夢から目覚めて、現実を見ているだけだ」

 

 だから、絆された。

 そうでなければ毎夜チェスに付き合ったりなどはしないし、そもそもカジミエーシュにこうして滞在していない。

 無償の善意を差し出されたから、なんだかもどかしくなって、レヴァナントは返せるものを返したのだ。

 

「サー・アルバート。貴方は己を罪人だと、誰一人守れずに生き残った咎人だと言うが、それは違うだろう。

過去は消えない。貴方の抱えた傷もすべては真実だ。現在も未来も、過去の代替にはなり得ない。逆も当然だ」

 

 悪魔と戦った後、城塞の一角で目覚めて騎士の話を聞いた時。

 騎士が、己の過去を話す様子を見て、レヴァナントもそれ以降己の真の種族を隠す事はしなくなった。

 むしろ、周囲に自分がレヴァナントであることを知るように仕向けてきたと言える。

 その末路はよいものではないだろうと想像していたが、想像に反してレヴァナントは人というものに恵まれた。

 

「それでも……私も、サー・エドウィンも、この集落の皆も。全部貴方が守ってきたものだ」

 

 レヴァナントが今もなお依代とする肉体も、この国で掴み取った勲章も、レヴァナントだけの力で得たものではない。

 支えられて(生きて)耐え抜いて(生きて)駆け抜けて(生きて)、一人では届かないその距離を、導いてもらって、ようやく辿り着いたのが現在。

 はじまりは、この騎士だった。

 だから──だから、そう。

 

「私が見てきた貴方は騎士だった。紛れもなく、貴方が縋った夢というのは幻想ではない」

 

 

 

 ──まあ全ては私の所感に過ぎないが、と言葉を続けようとして騎士の顔を覗き込み、レヴァナントはぎょっとした。

 

「……な、泣くのか。これは、その……どうしたらいいんだ……」

「泣゛い゛て゛な゛い゛…………」

「それは流石に無理があるだろう」

 

 これは泣く機能が備わっていたのか、とレヴァナントは苦笑した。格好つけて言葉を吐いたのがなんだか馬鹿馬鹿しい。

 泣いているのを隠すように目やら鼻やらを擦る騎士の顔を、仕方なくひざ掛けにしていた布団で拭ってやりながら背中を擦る。

 レヴァナントには子守などという経験はないため、これは集落の泣きやまない子供にそれをやっていた騎士の見様見真似だ。

 

「……どうだ、サー・アルバート。独り立ちできそうか」

「余計行かないでほしくなった……」

「なんだと? 私に毎日貴方を宥めろとでもいうのか」

「君が居てくれるなら毎日泣いたりしない……」

「……私が居なければ毎日泣くと?」

「…………」

 

 毎日宥めるなど御免被るが、毎日泣いている騎士はそれはそれでちょっと面白いな、とレヴァナントは密かにそう思った。

 

 仕方のない奴め、と金色の頭をわしゃわしゃ撫で回す。騎士は一瞬驚いた様子を見せたが、誤魔化そうとしている事を悟ると、すぐに不満気な顔に戻っていた。

 

「また来るから」

「いつだ」

「いつかな……1000年後とか、どうだ」

「俺がもう生きてないじゃないか……!!」

 

 不満気なままだったが、騎士の髪をわしゃわしゃとかき混ぜるレヴァナントの手を止めることはしなかった。

 それが諦めなのか、許容なのか、呆れなのか、真実をレヴァナントが知り得ることはない。しかし、それでいいと思った。

 

 結局のところ騎士は泣き止まなかったので、レヴァナントは仕方なくその日を共寝にした。

 炎国だかどこかに、寝屋でひたすら恨み言を述べる詩というジャンルがある、とかつて教えてもらったことをふと思い出す。騎士は炎国に行っても生きていけるだろうな、と息を吐くように笑った。

 騎士は耳聡いもので、何故笑っているかを問い詰めてくるのでレヴァナントはそこで連想ゲームをやめにして、寝たふりに徹することにした。

 

 結局のところ、騎士は寝落ちするまでぶつくさ言いながらすすり泣いていたし、レヴァナントの背中は騎士の涙でビッチョビチョに濡れていた。

 さながら幼子の寝床に並べるぬいぐるみといった気分であったが、自分が生きてきた年数に比べたら騎士も幼子のようなものかと納得したので、何も言わずにレヴァナントも目を瞑るのみだった。

 

 




自分で読んでいるときは誤字がないのに、投稿してから誤字が発生するのは一体何故なのでしょうか。(ヒント:作者は節穴)
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