自分用   作:raian sinra

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9話

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】第九部:処刑の炎と、空駆ける海賊

### 第一章:双殛(そうきょく)の解放と、灼熱の空

尸魂界(ソウル・ソサエティ)の空が、異様な熱を帯びていた。

ルキアの処刑場である瀞霊廷の最高峰『双殛の丘』。その中心にそびえ立つ巨大な矛が、真の姿を現そうとしていた。

百万本の斬魄刀の破壊力を持つとされる究極の処刑具。それが解放された瞬間、天を焦がすような凄まじい炎と共に、巨大な火の鳥――『毀鷇王(きこうおう)』が顕現した。

「……始まった」

地下修練場で瞑想を続けていた宝鐘マリンは、目を開けた。

地上から地下の奥深くまで伝わってくる、肌を焼き焦がすような圧倒的な霊圧。それは、これまで感じてきたどの隊長の霊圧とも違う、純粋な「破壊と死」のエネルギーそのものだった。

「ルキアちゃん……!」

マリンは立ち上がり、腰に差した『紅海月』の柄を固く握りしめた。

市丸ギンから受けた右肩の傷はまだ痛むが、剣を振るうのに支障はない。何より、彼女の心の中には、恐怖を完全に塗り潰すほどの強い決意が満ちていた。

阿散井恋次が命を懸けて繋いだ時間。そして、黒崎一護がこの場所で流した血と汗。

すべては、あの丘で死を待つただ一人の友を救い出すためだ。

「行くぞ、マリン」

背後から、低く落ち着いた声がした。

振り返ると、真っ黒な死覇装を纏い、背中に巨大な斬月を背負った一護が立っていた。彼から放たれる霊圧は、以前の荒々しさが嘘のように静まり返り、しかし刃のように鋭く研ぎ澄まされている。卍解の修行を終え、極限の力を手にした者の顔だった。

「一護……。うん、行こう。私たちのダチを、あの理不尽な処刑台から引きずり下ろすために」

マリンは不敵な笑みを浮かべた。

夜一が一足先に地上へと向かう中、一護とマリンは地下修練場の出口へ向かって地を蹴った。

隠れる必要などもうない。ここからは、護廷十三隊の全戦力を相手に回した、正面突破の大立ち回りだ。

### 第二章:海賊船長、白亜の空を駆ける

「出航せよ——『紅海月』!!」

地上に飛び出した瞬間、マリンは始解を解放した。

刀身から吹き出す高圧の蒼い水流が、灼熱に焼かれる瀞霊廷の空気を一気に冷やしていく。彼女はその水流を足元に集中させ、爆発的な推進力を生み出した。

「一護、私は私のルートで行く! 丘の上で合流しよう!」

「ああ! 遅れんなよ、マリン!」

一護は瞬歩にも似た恐るべき速度で、一直線に双殛の丘へと駆け上がっていく。

一方のマリンは、紅海月の水を空中に放ち、それを「足場」にして跳躍を繰り返すという、彼女特有の空中機動を展開した。

(急げ、急げ……!!)

眼下に広がる白亜の街並みが、凄まじい速度で後ろへと飛び去っていく。

風を切り裂きながら、マリンの脳裏にはルキアと過ごした現世での日々がフラッシュバックしていた。

黒崎家のリビングで、一緒にご飯を食べたこと。

ルキアが描く、絶望的に下手くそなウサギの絵を見て笑い合ったこと。

虚の脅威から、命を懸けて自分たちを護ってくれたあの夜のこと。

『一護……マリン……。私のために、絶対に追ってくるな。……生きてくれ』

現世で白哉に連れ去られる直前、ルキアが残したあの悲痛な表情。

「誰が言うこと聞くもんですか……! 船長が一度船に乗せた仲間を、勝手に降ろすなんて絶対に許さないんだから!」

マリンは足元の水場を蹴り砕き、さらに速度を上げた。

双殛の丘から放たれる火の鳥(毀鷇王)の霊圧が、肌をジリジリと焦がす。処刑の刃が、今まさにルキアを貫こうとしているのが分かった。

「間に合えェエエエエエエッ!!!」

### 第三章:激突、そして崩壊する処刑台

マリンが双殛の丘の縁に飛び乗った、まさにその瞬間だった。

ドゴォオオオオオオオオオオオオンッ!!!

凄まじい衝撃波が丘全体を吹き飛ばし、巨大な炎の鳥が「何者か」によって完全に受け止められていた。

「え……?」

マリンは着地と同時に目を疑った。

百万の斬魄刀の威力を持つ毀鷇王の嘴を、たった一本の巨大な包丁――一護の『斬月』が、真っ向から受け止めていたのだ。

黒いマントを翻し、処刑台の目の前でルキアを背にかばって立つ一護の姿。その背中は、かつて虚からマリンを護ってくれた時よりも、遥かに大きく、頼もしく見えた。

「一護……! やった、間に合ったんだ……!」

マリンの口から、安堵の息が漏れる。

しかし、驚きはそれだけでは終わらなかった。

一護が火の鳥を弾き返した直後、処刑台の足元に二人の隊長が飛び込んできたのだ。

十三番隊隊長・浮竹十四郎。

八番隊隊長・京楽春水。

彼らは四楓院家が持つ伝説の武具『天踏絢(てんとうけん)』を使い、巨大な双殛の矛そのものを破壊し始めた。

光の縄が処刑台を粉砕し、ルキアの体が宙に投げ出される。

「ルキア!!」

一護が跳躍し、空中でルキアをしっかりと抱きとめた。

そのまま、満身創痍で丘にたどり着いていた阿散井恋次に向かって、ルキアを容赦無く放り投げる。

「阿散井! そいつを連れて死に物狂いで逃げろ!!」

「……ああ!!」

恋次がルキアを抱え、一目散に駆け出していく。

それを追おうとする副隊長たちを、一護は素手でいとも容易く殴り飛ばし、完全に制圧してみせた。

その圧倒的な光景に、双殛の丘に集まっていた護廷十三隊の隊長・副隊長たちは息を呑み、完全に動きを止めていた。

「すごい……一護、あんなに強くなって……」

マリンは紅海月を下段に構えながら、周囲の状況を素早く分析した。

一護の前には、彼の最大の標的である朽木白哉が静かに進み出ている。あの二人の戦いには、もはや誰も介入できない。

なら、自分にできることは何か。ルキアを追う追っ手を食い止めるか、それとも他の隊長の足止めか。

その時、マリンの視界に、先ほど双殛を破壊した二人の隊長――浮竹と京楽の姿が飛び込んできた。

彼らは破壊した処刑台の傍らで、どこか申し訳なさそうに、しかし確かな覚悟を持って立っている。

マリンのオッドアイが、キラリと輝いた。

(あそこ……長髪の優しそうなオジサマと、着流しで渋い色気のオジサマがいる!!)

マリンの「海賊」としての勘、いや「宝鐘マリン」としての嗅覚が、彼らがルキアの味方であること、そして何より「話の分かる大人の男たち」であることを強烈に察知していた。

### 第四章:話の分かるオジサマ達と、最強の老将

「Ahoy〜! そこのイケてるオジサマ達!」

緊張感が張り詰める双殛の丘で、全く空気を読まない明るい声が響き渡った。

「ん?」

「おや?」

京楽と浮竹が振り返ると、そこには抜身の海賊刀(紅海月)を肩に担ぎ、ウインクを飛ばしながら駆け寄ってくる赤髪の少女――宝鐘マリンの姿があった。

「オジサマ達、ルキアちゃんを助けるためにあのデカい鳥壊したんだよね? すっごいファインプレーだったよ! 私もルキアちゃんのダチの海賊船長なんだけど、よかったら協力しない?」

マリンは二人の間に堂々と割って入り、満面の笑みで親指を立てた。

「かいぞく……せんちょう?」

浮竹が目をパチクリとさせる。

「いや、君は一護くんの仲間の旅禍だね。怪我はないのかい? ここは危険だから、早く君も逃げたほうが……」

「あははっ、元気なお嬢ちゃんやねぇ」

京楽が笠を少し上げ、苦笑いしながらマリンを見た。

「嬉しい申し出やけど、僕らもこれからちょっと『厄介な身内喧嘩』をせなあかんのよ。お嬢ちゃんを巻き込むわけにはいかないねぇ」

「厄介な喧嘩? 船長も加勢するよ! オジサマ達となら、背中預けてもいいし!」

マリンが胸を張った、その瞬間だった。

ドドォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!

大気が、爆発した。

いや、大気だけではない。双殛の丘そのものが、目に見えない巨大な「質量」によって押し潰されたような、絶望的な圧迫感。

「な……っ!?」

マリンの顔から、一瞬で血の気が引いた。

呼吸ができない。膝が勝手に笑い、地面にへたり込みそうになる。

大虚(メノスグランデ)の霊圧? 市丸ギンの冷気? 朽木白哉の殺気?

違う。そんな生易しいものではない。これは、世界そのものが燃え尽きる前兆のような、純然たる『力』の具現。

「……逃げろと言うたはずじゃぞ、春水、十四郎。そして、そこの旅禍の小娘もな」

炎の奥から、ゆっくりと歩み出てくる一つの影。

筋骨隆々の肉体をさらし、手にした杖を深い皺の刻まれた顔の前に構える老爺。

護廷十三隊総隊長――山本元柳斎重國。

「山じい……」

京楽の表情から、いつもの飄々とした笑みが完全に消え去っていた。

「……え、お爺、ちゃん……?」

マリンは圧倒的な霊圧の前に動けず、ただその老将を見上げることしかできなかった。

「大罪人である朽木ルキアの処刑を妨害し、あまつさえ双殛を破壊するとは。……もはや申し開きはできまい。春水、十四郎。お主らを、我が手で灰にする」

元柳斎が手にした杖の封印が解かれ、一本の古い太刀が姿を現す。

「万象一切灰燼と為せ(ばんしょういっさいかいじんとナーせ)――『流刃若火(りゅうじんじゃっか)』」

ボワァアアアアアアアアアアアアッ!!!

元柳斎の刀から、太陽の表面温度にも匹敵するような灼熱の炎が噴き上がった。

双殛の丘の空気が一瞬にして乾燥し、立っているだけで髪や服が焦げ始める。

「くっ……! お嬢ちゃん、下がってなさい!」

浮竹がマリンを庇うように前に出る。京楽もまた、双剣である『花天狂骨』を抜き放った。

尸魂界最強の死神と、彼が最も手塩にかけて育てた二人の愛弟子による、天地がひっくり返るような死闘。

宝鐘マリンは、自身の理解を遥かに超えた神々の戦いの中心に、否応なしに巻き込まれてしまったのである。

 

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