自分用   作:raian sinra

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11話

原作キャラクターの口調や独特の間、そして『BLEACH』特有の張り詰めた空気感と霊圧の重圧を意識し、会話と心理描写を大幅に肉付けしてプロットの続きを執筆しました。

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】第十一部:天に立つ悪逆と、試作品の海

### 第一章:天挺空羅(てんていくうら)と、血塗られた双殛

「……あ……」

宝鐘マリンが重い瞼を開けると、そこは山本元柳斎の巨大な腕の中だった。

全身を縛道の光に包まれ、内なる虚の暴走は完全に鳴りを潜めている。彼女を見下ろす老将の顔には、先ほどの烈火のような怒気は消え、ただ静かな威厳だけが残されていた。

「目が覚めたか、小娘」

「お爺、ちゃん……私……」

「案ずるな。お主の内に巣食う禍々しき力は、ワシが完全に押さえ込んだ。……だが、今はそれどころではないようじゃな」

元柳斎が鋭い視線を空に向ける。

その直後だった。マリンの脳内に、直接何者かの声が響き渡った。

『……各隊隊長・副隊長、並びに各副官代行・旅禍の皆様に……緊急伝令……!』

涙声で、しかし必死に震えを抑えながら響くその声は、四番隊副隊長・虎徹勇音の『天挺空羅』によるものだった。

『私は四番隊副隊長・虎徹勇音……! 全て、今から私が伝えることが真実です……! 殺害されたと思われていた五番隊隊長・藍染惣右介は生きています……! そして彼と、市丸ギン、東仙要の三名が……首謀者として、この尸魂界を裏切りました……!!』

「……なん、だと……?」

京楽春水が、笠の奥の目を限界まで見開く。

浮竹十四郎も言葉を失い、ただ呆然と空を見上げていた。

「藍染……? 嘘でしょ……?」

マリンもまた、その名に聞き覚えがあった。ルキアを救うための旅の中で、死神たちが度々口にしていた、心優しき五番隊隊長の名前。彼が黒幕だと言うのか。

「……行くぞ、春水、十四郎。事の真偽、ワシ自身の目で確かめねばならん」

元柳斎はマリンを小脇に抱えたまま、凄まじい瞬歩で双殛の丘の中心部へと跳躍した。

そして彼らが辿り着いた先で目にしたのは、あまりにも残酷で、凄惨な地獄だった。

「一護……! 恋次……ッ!!」

マリンは元柳斎の腕の中で絶叫した。

双殛の丘の地面は、血の海と化していた。

日番谷冬獅郎、狛村左陣、阿散井恋次……数々の隊長格が、見るも無残な姿で地に伏している。

そしてその中央。折れた巨大な斬月と共に、全身を斬り裂かれ、ピクリとも動かなくなった黒崎一護の姿があった。

「一護!! いやだ、一護ッ!!」

拘束を解かれたマリンが、よろめきながら一護の元へ駆け寄る。その体はまだ温かいが、霊圧は消え入りそうに弱々しい。

「……やれやれ。随分と賑やかになってきたね」

静かで、どこまでも穏やかな、底知れぬ悪意を孕んだ声。

マリンが弾かれたように顔を上げると、そこには朽木ルキアの胸から『崩玉(ほうぎょく)』と呼ばれる小さな玉を抜き取り、それを掲げて微笑む一人の男が立っていた。

五番隊隊長、藍染惣右介。

そしてその後ろには、マリンを絶望の淵に叩き落とした三番隊隊長・市丸ギンと、九番隊隊長・東仙要が静かに控えている。

「あんたが……藍染……!」

マリンが紅海月の柄を握りしめ、憎悪に満ちた目で睨みつける。

藍染は、足元で血を流す一護を一瞥した後、ゆっくりとマリンの方へと視線を移した。その瞳には、路傍の石を見るような、冷酷な光が宿っていた。

### 第二章:悪逆なる真実

「君が黒崎一護の背中を追いかけてここまで来たことには、心から感服するよ。……だが、それと同時に驚きも隠せない」

藍染は、まるで優秀な生徒を褒める教師のように、柔らかく微笑んだ。

「その魂の崩壊を免れ、よくぞここまで生き延びたものだね。……宝鐘マリン。いや、私の記録上では『検体番号・零式(プロトタイプ)』と呼ぶべきかな」

「……は?」

マリンの顔から、スッと血の気が引いた。

「てめえ……藍染ェ……!」

倒れ伏していた一護が、血を吐きながらも藍染を睨みつける。

「マリンに……何言ってやがる……!」

「黒崎一護、君の誕生はまさに私の計画の集大成だった。だが、完璧な『死神と虚の融合』を成し遂げるためには、当然ながらいくつもの『失敗作』が必要になる。……彼女の両親も、その一つだ」

藍染の言葉が、双殛の丘の空気を完全に凍りつかせた。

「な、にを……言ってるの……? 私の、お父さんとお母さんは……事故で……」

「滑稽だね。不自然な事故死、残された特異体質の孤児。少し調べれば、そこに作為があることなどすぐに分かるはずだ。……彼らは、素晴らしいデータを提供してくれたよ」

藍染は眼鏡を外し、オールバックにしていた髪をゆっくりとかき上げた。その瞬間、彼の纏う空気が、温厚な隊長から『天に立つ絶対者』へと変貌する。

「君の両親に虚の魂魄を植え付け、そこから産まれた子供がどのような霊圧の揺らぎを見せるか。……結果は、見ての通り『失敗』だった。死神の力よりも虚の力に依存しすぎた歪な魂魄。いずれ自壊するだけの出来損ないだ。……だが、その失敗のデータがあったからこそ、黒崎一護という『完成形』を生み出すことができた。君の存在には、大いに感謝しているよ」

「……っ、ああ……あぁ……」

マリンの喉から、声にならない乾いた音が漏れた。

自分のルーツ。家族との温かい思い出。両親の死。

それら全てが、目の前に立つこの男の、ただの『実験の過程』に過ぎなかったと言うのか。自分がこれまで抱えてきた恐怖も、内なるバケモノの暴走も、全てはこいつが仕組んだことだった。

「……許さ、ない……」

マリンの右目が、再び金色に濁り始める。

「やめろ、マリン……! そいつに……近づくんじゃねぇ……!」

一護が必死に手を伸ばすが、マリンはそれを振り切り、ゆっくりと立ち上がった。

「許さない……許さない許さない許さないッ!!」

「出航せよ『紅海月』ッ!!」

マリンの全身から、先ほど暴走しかけたものと同じ、黒く濁った水流が間欠泉のように噴き上がった。

右の顔に、不完全な骸骨の仮面が張り付く。死神の力と虚の力が混ざり合った、制御不能な怒りの一撃。

「死ねェエエエエエエエッ!!!」

爆発的な水流を背に受け、マリンは藍染の眉間めがけて、紅海月を全力で突き出した。

空間そのものを削り取るような、彼女の出せる最大最強の刺突。

だが。

「……君の海は、私には浅すぎる」

カキンッ。

澄んだ、小さな音が響いた。

藍染は、一歩も動いていない。ただ、彼がスッと持ち上げた右手の人差し指の『指先一つ』に、マリンの全力の一撃がピタリと止められていたのだ。

「え……?」

マリンの時が止まる。

「怒りに任せた不完全な力。そんなもので私に届くと思ったのか? ……やはり君は、最後まで失敗作の域を出なかったようだ」

藍染が指先を僅かに弾く。

それだけで、紅海月の刃が粉々に砕け散り、マリンの体に見えない巨大な鉄槌が振り下ろされた。

「がはァアアアアッ!?」

霊圧の暴力。

マリンの体は地面に激突し、バウンドしながら数十メートルも吹き飛ばされ、石壁に叩きつけられて完全に沈黙した。

仮面は砕け、彼女の意識は深い絶望の底へと完全に叩き落とされた。

### 第三章:天に立つ者

「……そこまでじゃ、痴れ者が」

藍染が止めを刺そうと一歩踏み出した瞬間、その背後に山本元柳斎重國が立っていた。

さらに、四楓院夜一と砕蜂が藍染の刃を封じ、他の隊長たちも続々と双殛の丘へと集結してくる。

「完全に包囲されたね、藍染隊長」

「……おや。これは随分と壮観だ」

もはや逃げ場はない。誰もがそう思った時だった。

空が、裂けた。

空間を引き裂いて現れた巨大な黒い亀裂から、無数の大虚(メノスグランデ)がその悍ましい顔を覗かせた。

「なっ……! 大虚の群れじゃと!?」

大虚の口から、眩いばかりの黄色い光の柱――『反膜(ネガシオン)』が降り注ぎ、藍染、市丸、東仙の三人を包み込んだ。

この光は、虚が同胞を助ける際に使う絶対不可侵の光の壁。この光の外側と内側は完全に別次元となり、いかなる死神の攻撃も届かない。

「……残念だよ。もう少し君たちと話したかったのだが」

反膜に包まれ、ゆっくりと天へと昇っていく藍染。

「待てェエエエエッ!!」

血まみれの一護が、地面を這いながら絶叫する。

崩れ落ちた壁の瓦礫の中で、マリンもまた、薄れゆく意識の中でその光景を自らの目に焼き付けていた。

「……最初から誰も、天に立ってなどいない。君も、私も、神すらも。だが、その耐え難い天の座の空白も今日で終わる」

藍染は、天を衝くような黒い亀裂の奥で、見下ろすように言い放った。

「これからは、私が天に立つ」

その言葉を最後に、裂けた空はゆっくりと閉じ、藍染たちの姿は完全に消え去った。

残されたのは、血と瓦礫に塗れた双殛の丘と、抗いようのない圧倒的な敗北感だけだった。

### 第四章:老将の懐と、次なる航海へ

それから数日後。

尸魂界は、藍染の反逆という未曾有の事態の事後処理に追われていた。

四番隊の総合救護所では、一護たち旅禍一行も手厚い治療を受け、命の危機を脱していた。

「……いてててて」

全身を包帯でぐるぐる巻きにされたマリンが、ベッドから身を起こす。

治療を施してくれた四番隊隊長・卯ノ花烈や井上織姫のおかげで、折れた骨も塞がったが、藍染に砕かれた『紅海月』の傷は、彼女の心に深く残っていた。

(藍染惣右介……)

自分の両親を弄び、自分の中にバケモノを植え付けた男。

許せない。絶対に、いつかあの余裕ぶった顔をぶん殴ってやる。

「おいマリン、起きて大丈夫なのかよ」

隣のベッドから、同じくミイラ状態の一護が声をかけてきた。

「一護。……うん、もう大丈夫。船長はこれくらいじゃ沈まないワゾ」

マリンは無理に明るく振る舞い、ふふんと胸を張った。

そこへ、襖が開いて、一番隊副隊長の雀部長次郎が厳格な顔つきで入ってきた。

「旅禍ども。総隊長殿が、お前たちに直接お言葉があるとのことだ。心して聞け」

ズシン、と重い足音と共に、山本元柳斎重國が病室へと姿を現す。

その圧倒的な威圧感に、一護も織姫も思わず息を呑み、居住まいを正した。

「……此度の騒動。藍染の目論見を暴き、ルキアの命を救ったこと、瀞霊廷を代表して礼を言う。……そして、宝鐘マリンよ」

元柳斎の鋭い眼光が、マリンを捉える。

「お主の魂の事情、四番隊の調査で概ね把握した。本来ならば尸魂界の理において消去すべき存在じゃが……此度の功績に免じ、不問に処す。現世へ帰るがよい」

「総隊長……」

一護がホッと安堵の息を吐く。

だが、マリンの行動は、全員の予想を遥かに超えていた。

彼女はベッドから飛び降りると、トテトテと小走りで元柳斎の前に歩み寄り、

「ありがとっ! お爺ちゃん!!」

ガバッ!! と、尸魂界最強の老将の胸元に、満面の笑みで力いっぱい抱きついたのだ。

「「「はぁあああああ!!?」」」

雀部長次郎が白目を剥いて卒倒しかけ、一護の目玉が飛び出る。

「て、てめぇマリン! 何してんだバカ野郎! 殺されるぞ!!」

「えー? だって、お爺ちゃん、あの時私を殺さずに助けてくれたでしょ? 感謝のハグは海賊の基本だよ!」

マリンが元柳斎の長い髭を無邪気に撫でると、周囲の死神たちは「終わった……この空間ごと灰にされる……」と絶望の表情を浮かべた。

しかし。

「……痴れ者が。総隊長であるワシを捕まえてお爺ちゃんとは、無礼千万な小娘じゃ」

元柳斎は厳しい声で叱責しながらも、その杖の封印を解くことはなく、ただ「ふん」と鼻を鳴らしてマリンの頭をポンと軽く叩いた。

「……二度と、我を失うでないぞ」

「うん! 約束する!」

その様子を見て、一護はポカンと口を開け、京楽や浮竹が後から話を聞いて「あの山じいが!?」と大爆笑することになるのは、また別の話である。

### 第五章:穿界門、出航の時

そして、現世への帰還の時。

開かれた穿界門の前に、一護、雨竜、チャド、織姫、そしてマリンが立っていた。

見送りに来たルキア、恋次、そして護廷十三隊の死神たち。

「ルキアちゃん。本当に、こっちに残るの?」

マリンが寂しそうに尋ねると、ルキアは穏やかな笑顔で頷いた。

「ああ。私はここで、やらねばならぬことがある。……お前たちには、本当に感謝している。現世のことは、頼んだぞ」

「……任せといて! またいつでも、私たちの船(黒崎家)に遊びにおいでよ」

マリンは、腰に差した浅打の状態に戻った刀をそっと撫でた。

藍染に折られた『紅海月』だが、彼女の魂の奥底で、その海賊船長は再び立ち上がる準備を始めているのが分かった。自分の魂にバケモノがいようと、ルーツが何であろうと関係ない。

(あのグラサン野郎……。いつか絶対に、この船長が海の底に沈めてやる)

「行くぞ、マリン」

一護が振り返り、右手を差し出してくる。

「うん!」

マリンは満面の笑みで、一護の拳に自身の拳を力強く打ち付けた。

次なる戦いの舞台は、現世。そして虚圏。

内なる虚との対話、そして破面(アランカル)という新たな恐怖が彼らを待ち受けている。

しかし、どんな嵐が来ようとも、彼らは決して前を向くことをやめない。

「出航だァアアア!!」

宝鐘マリンの高らかな号令と共に、彼らは穿界門の光の中へと、新たな航海に向けて堂々と歩みを進めていった。

 

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