自分用   作:raian sinra

22 / 47
19話

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】現世決戦篇 第一部:神の羽化と、背中を追う者たち

### 第一章:護る者たちの帰還と、最強の布陣

瓦礫と化し、血の匂いが立ち込める偽りの空座町。

圧倒的な力を持つ藍染惣右介の前に為す術もなく敗れ、絶望の底に叩き落とされた黒崎一護と宝鐘マリン。薄れゆく彼らの意識を繋ぎ止めたのは、突如として降り立った「大人たち」の頼もしい背中だった。

「一護。マリン。……よく頑張ったな。後はおじさんたち大人に任せて、少し休んでろ」

黒崎一心の豪快な声。

そして、緑の帽子を目深に被った浦原喜助と、黒装束に身を包んだ四楓院夜一が、藍染を完全に包囲する形で虚空に立ち塞がった。

「……親父、それに浦原さん、夜一さん……」

一護が瓦礫の中で身を起こす。

マリンもまた、斬魄刀を杖にしてふらつく体を支えながら、その光景を見上げていた。

「おやおや。かつての十三番隊隊長、それに隠密機動総司令官、さらには元技術開発局局長まで。……私の前に立つには、いささか古びた顔ぶれだね」

藍染が、余裕の笑みを崩さずに三人を見回す。

「言うじゃねェか、藍染。お前がそのツラでどこまで偉ぶれるか、試してやろうぜ」

一心がニヤリと笑い、自身の斬魄刀『剡月(えんげつ)』の柄に手をかけた。

「行くッスよ、夜一サン、黒崎サン!」

浦原の合図と共に、空気が弾けた。

ドゴォオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

三人の元隊長格が、同時に超高速の瞬歩で藍染へと殺到した。

先陣を切ったのは夜一。彼女の体から、凄まじい高圧の雷撃が迸る。白打と鬼道を融合させた最高戦闘術『瞬閧(しゅんこう)』。

「瞬閧・雷獣戦形(らいじゅうせんけい)!」

夜一の放つ雷の連撃が、藍染の死角を正確に打ち据えようとする。

藍染は片手でそれを捌こうとするが、その背後から既に浦原が数重の鬼道を詠唱破棄で叩き込んでいた。

「縛道(ばくどう)の六十一『六杖光牢』! 六十三『鎖条鎖縛』! 七十九『九曜縛』!」

幾重にも重なる光の鎖と杭が、藍染の四肢を空中で完全に縫い止める。

「隙だらけだぜ、藍染ェ!!」

拘束された藍染の真正面から、黒崎一心が剡月に爆発的な霊圧を込め、渾身の上段振り下ろしを放つ。

「月牙(げつが)……天衝ォオオオオオオッ!!!」

一護のものと同質でありながら、より洗練され、重く凝縮された巨大な斬撃が、藍染の体を真正面から完全に飲み込んだ。

偽りの空座町の空が、光と轟音によって白く塗り潰される。

「すごい……」

地上で見上げているマリンは、息を呑んだ。

自分たちが手も足も出なかった藍染に対して、三人は一切の無駄な動きなく、完璧な連携で追い詰めている。

これが、長年尸魂界(ソウル・ソサエティ)のトップに君臨していた本物の「大人たち」の戦い。

自分の使う水流や虚化の力が荒れ狂う『暴風雨』だとするなら、彼らの戦いは、深海のように静かで、圧倒的な水圧を持った『海流』そのものだった。

「……さすがだ。君たちの連携は、百年経っても美しい」

だが。

煙が晴れた上空から響いたのは、一切のダメージを感じさせない、藍染の冷酷な声だった。

### 第二章:神の羽化(進化)、次元の壁

「な……!?」

一護が絶望に目を見開く。

煙の奥から現れた藍染惣右介の姿は、異様だった。

彼の胸の中心に埋め込まれた『崩玉(ほうぎょく)』が不気味な光を放ち、その光が藍染の全身を白い物質で覆い尽くそうとしていた。

死覇装は同化し、頭部は目鼻を持たない白い仮面のようなドーム状の物質で覆われている。

まるで、羽化を待つ昆虫の『蛹(さなぎ)』のような、不気味で悍ましい姿。

「藍染……てめェ、その姿は……」

一心が油断なく剡月を構える。

「理解できないかな? 崩玉が、私の心(のぞみ)を読み取り、私を次なる次元へと引き上げているのだ。死神でもなく、虚でもない……神の領域へとね」

蛹の姿となった藍染から放たれる霊圧は、もはや「重い」や「鋭い」といった次元を超越していた。

マリンの特異な感知能力をもってしても、藍染から霊圧を感じ取ることができない。

それは彼が弱くなったからではない。二次元の住人が三次元の立体を認識できないように、藍染の霊圧が、死神や虚という枠組みを完全に超えた『別の高み』へと移行してしまったからだ。

「……マズいッスね」

浦原が帽子を押さえ、冷や汗を流す。

藍染の姿が「消えた」。

瞬歩ではない。圧倒的な身体能力の向上による、純粋な速度。

「ぐはァッ!?」

次の瞬間、空中にいた夜一と浦原の体が、見えない打撃によって同時に吹き飛ばされ、地上のビルを何棟もへし折りながら墜落した。

「夜一さん! 浦原さん!!」

一心が振り返った直後、藍染の手刀が一心の肩を深く切り裂いた。

「がっ……!」

「終わりだ、黒崎一心」

たったの一撃。

先ほどまで藍染を圧倒していたはずの三人の猛者たちが、蛹と化した藍染の前に、文字通り赤子のようにあしらわれてしまった。

「おじさんッ!!」

マリンが叫び、紅海月を構えて飛び出そうとする。

しかし、彼女の足は震えて動かなかった。次元が違いすぎる。今の藍染の前に出れば、一秒も経たずに肉体を消し飛ばされるという本能的な恐怖が、彼女の体を石のように縛り付けていた。

「……無駄だ。君たちに私を止めることは、もはや不可能だ」

藍染は、地上で血を流す一心たちを見下ろし、静かに告げた。

その傍らに、三番隊隊長・市丸ギンがふらりと姿を現す。

「藍染隊長。そろそろ、よろしいんちゃいます?」

「ああ。邪魔者も片付いたことだし、行こうか。……本物の空座町がある、尸魂界へ」

藍染が空間を引き裂き、黒腔(ガルガンタ)を開く。

彼の目的は、王鍵(おうけん)の創生。そのために、尸魂界に転送されている「本物の空座町」と、そこに住む十万の魂魄を全て消滅させる気なのだ。

「待て……! 藍染ェエエエエ!!」

一護が叫ぶが、藍染と市丸の姿は、冷酷な笑みと共に黒腔の奥へと消え去っていった。

圧倒的な静寂と、瓦礫の山。

残されたのは、絶対的な敗北感だけだった。

「……クソッ……! クソォオオオオオオオオッ!!」

一護が、血まみれの拳で地面を何度も殴りつける。

勝てない。あんなバケモノに、どうやって勝てばいいんだ。

「……一護」

マリンは、折れかけた紅海月を杖にして立ち上がり、自身の不甲斐なさに唇を強く噛んだ。

(まただ。……私はまた、大人の背中に隠れて、護られるだけだった)

海賊船長を名乗りながら、自分の船員(クルー)である一護を助けることも、家族である一心たちを護ることもできなかった。

失敗作という呪縛を越えたつもりでいたが、結局のところ、自分はまだ「ただの小娘」でしかないのだと思い知らされた。

「……下を向いてる暇はねェぞ、お前ら」

瓦礫の中から、血塗れになった黒崎一心がゆっくりと立ち上がった。

「おじさん……! 動いちゃダメだ、傷が……!」

マリンが駆け寄ろうとするが、一心は手でそれを制止した。

「藍染は本物の空座町へ向かった。あいつが空座町の住人を皆殺しにする前に、俺たちが追いついてぶっ飛ばす。……それしかねェだろうが」

一心の目は、全く死んでいなかった。

「無理だよ親父……! あんなバケモノ、今の俺たちじゃ束になったって……!」

「今の俺たちじゃあな。だが、お前たちが『最後の力』を手に入れりゃあ話は別だ」

一心は、一護とマリンを真っ直ぐに見据えた。

「行くぞ。黒腔の中にある時間の狭間……『断界(だんがい)』へ。そこで俺が、お前たちに極限の力を叩き込んでやる」

### 第三章:断界の静寂と、最期の修行

現世と尸魂界を繋ぐ、霊子気流が吹き荒れるトンネルの周囲に存在する、時間と空間が外界から切り離された特殊な次元――『断界』。

本来ならば、周囲の壁に触れるだけで時間を奪われ、拘突(こうとつ)と呼ばれる理を排除する怪物が徘徊する危険地帯だ。

「……藍染の野郎、自分が通る時に邪魔な『拘突』を破壊していきやがった。おかげで、ここはただの『時間の止まった修行場』になったぜ」

一心は断界の壁に霊圧を注ぎ込み、空間を安定させながら一護とマリンに告げた。

「ここでの時間は、外界の二千倍の遅さで流れる。ここで二千時間……およそ三ヶ月間修行しても、外ではたったの一時間しか経たねェ」

「三ヶ月……」

一護が息を呑む。

「俺はここで空間を固定するために霊圧を使い切る。だから、お前たちに直接手合わせしてやることはできねェ」

一心は、地面に腰を下ろし、深い覚悟を持った瞳で二人を見上げた。

「一護。お前は精神世界に潜り、斬月と対話して『最後の月牙天衝』の極意を引き出せ」

「最後の……月牙天衝」

「そして、マリン」

一心の視線が、マリンのオッドアイを捉える。

「お前は、己の魂の全てを受け入れ……『卍解』を修得しろ」

「え……?」

マリンは驚きに目を丸くした。

卍解。死神の戦闘能力の最終到達点。護廷十三隊の隊長クラスしか至ることのできない、始解の五倍から十倍の戦闘力をもたらす神の領域。

「私に……卍解なんて、できるの?」

「バカ野郎。お前がその魂の中に飼ってる虚の力を完全にねじ伏せた時点で、お前の霊圧の絶対量はとうに隊長格を超えてる。……足りねェのは、お前自身が己のルーツの『一番深い場所』から、まだ目を逸らしてるってことだけだ」

一心は、優しく、しかし父親としての厳しさを持ってマリンを諭した。

「藍染がなんと言おうと、お前はお前の両親から産まれた『宝鐘マリン』だ。……その真実に、自分から会いに行け」

一心の言葉に、マリンは胸の奥が熱くなるのを感じた。

(私の一番深い場所……。私の、本当のルーツ)

「……わかった。やってやるワゾ」

マリンは、一護と顔を見合わせ、深く頷いた。

「頼むぜ、お前ら。俺たちの街を、護ってくれ」

一護とマリンは、断界の冷たい地面に胡座をかき、それぞれの斬魄刀を膝に置いた。

目を閉じ、己の精神を極限まで研ぎ澄まし、魂の最も深い場所へと潜っていく。

外界の時間が止まった絶対の静寂の中で。

宝鐘マリンは、己の過去と、そして『失敗作』という呪いを完全に断ち切るための、最後の対話へと向かっていた。

### 第四章:凪の海と、出会えなかった温もり

マリンが目を開けると、そこは果てしなく広がる美しい『群青色の海』だった。

波一つない、鏡のように澄み切った水面。

空は淡い夜明けの色に染まり、かつて彼女の精神世界を覆っていた暴風雨も、暗黒の波も、微塵も存在していなかった。

虚の力を完全に屈服させ、己の海の一部として統べた結果、彼女の精神は絶対的な『凪』へと到達していたのだ。

「……綺麗。これが、今の私の魂の形……」

マリンが水面を歩くと、チャプ、と優しい音が響く。

やがて、群青の海の中央に、一隻の優美な海賊船が停泊しているのが見えた。

そしてその甲板には、三つの人影が立っていた。

「……Ahoy。よく来たね、私たちの船長(キャプテン)」

一人目は、真紅の海賊コートを羽織った、美しいマリン自身の姿。彼女の真の斬魄刀の化身である『紅海月』。

その後ろには、かつてマリンを苦しめ、今は静かに目を閉じている『虚のマリン』の姿もあった。

だが、マリンの視線は、その二人のさらに後ろで優しく微笑んでいる『見知らぬ男女』に釘付けになった。

赤髪の、精悍で優しげな顔立ちをした男性。

そして、マリンと同じオッドアイを持ち、温かい微笑みを浮かべる美しい女性。

「……え……?」

マリンの足が、止まる。

心臓が、早鐘のように打ち始めた。

記憶のずっと奥底、霞がかかって思い出すことすらできなかった、けれど、魂が絶対に忘れるはずのない温もり。

「大きくなったね、マリン」

女性が、涙ぐみながら両手を広げた。

「お……お母さん……? お父さん……?」

マリンの声が震える。

彼女は無我夢中で駆け出し、そのまま二人の胸の中へ飛び込んだ。

温かい。霊子の残滓でしかないはずなのに、その抱擁は確かに、親が子を愛する絶対的な温もりに満ちていた。

「ごめんね、マリン。私たち、ずっとあなたの傍にいてあげられなくて……こんなに重い呪いを、背負わせてしまって」

母親が、マリンの背中を優しく撫でながら涙を流す。

「藍染は、私たちに虚の魂魄を植え付け、そしてあなたを産ませた。……ヤツは、あなたを『いずれ自壊するだけの失敗作』だと笑ったよ」

父親が、悔しそうに拳を握りしめる。

「だが、私たちは絶対にあなたをバケモノになんかさせたくなかった。だから、死の淵で最後の霊圧を振り絞って、あなたの魂の奥底に、あの虚の力を『封じ込めた』んだ」

その真実に、マリンはハッと息を呑んだ。

藍染は、マリンの魂が不安定で自壊する失敗作だと言った。

だが違ったのだ。

彼女の魂がギリギリのバランスで保たれ、完全に虚に飲み込まれることなく生きてこられたのは。

あの黒崎一心のもとに辿り着き、温かい家族の愛を知ることができたのは。

全て、両親が最期の瞬間に命を懸けて、彼女の魂を護ってくれていたからだった。

「失敗作なんかじゃない……。あなたは、私たちが命を懸けて愛し、護り抜いた、自慢の娘だよ」

母親の言葉に、マリンの目から大粒の涙が溢れ出した。

(ああ……そうか。私は、捨てられたゴミなんかじゃなかった。実験のモルモットなんかじゃなかった)

愛されていた。

ずっとずっと昔から、この魂の一番深い場所で、二人の愛情がマリンという『船』を支える碇(いかり)になってくれていたのだ。

「……泣くな、マリン」

紅海月が、静かに歩み寄り、マリンの肩に手を置いた。

「過去の呪縛は解けた。あなたは己の力で嵐(虚)を乗りこなし、そして今、魂の根底にある愛を知った。……もはや、あなたの海を濁らせるものは何もない」

紅海月は、自身の手に握られた群青色の海賊刀を、マリンに向かって差し出した。

その後ろで、両親が誇らしげに微笑んで頷いている。

「さぁ、受け取りなさい。そして、その名(真実)を呼べ。……あなたが、この魂の海を統べる、真の大将(キャプテン)なのだと!!」

マリンは、涙を拭い、強く、力強く頷いた。

そして、両手でしっかりと紅海月の柄を握りしめる。

その瞬間。

群青色の凪の海が、黄金色の眩い光に包まれ、空間そのものが新たな次元へと昇華していく。

現実世界(断界)。

胡座をかいて瞑想していたマリンの全身から、これまでの限界を遥かに超える、底知れぬほどに深く、重く、そして圧倒的に美しい『群青の霊圧』が、天を衝くように爆発的に噴き上がった。

それを見守っていた一心の口角が、ニヤリと上がる。

「……やりやがったな。さすがは、俺たちの自慢の娘だ」

宝鐘マリンは、ついに死神の頂点にして魂の最終形態――『卍解』へと至った。

全ての迷いを断ち切り、真の海賊船長として覚醒した彼女は、神の領域へと足を踏み入れた藍染惣右介を沈めるため、決戦の地である本物の空座町へと出航する。

絶望の空を撃ち落とす、怒涛の反撃の幕が、今ここに上がろうとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。