自分用   作:raian sinra

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21話

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】現世決戦篇:本物の空座町、市丸ギンの死

### 第一章:絶望の足音、本物の空座町

尸魂界(ソウル・ソサエティ)へと強制転送された「本物の空座町」。

住民たちが深い眠りにつかされている中、有沢たつき、浅野啓吾、小島水色ら、黒崎一護の級友たちだけが目を覚まし、迫り来る「死の化身」から必死に逃げ惑っていた。

「……ハァッ……ハァッ……!!」

たつきは、息を荒らげながらアスファルトの道を駆け抜ける。

振り返れば、そこには純白の装束を纏い、蛹のような異形の姿へと『進化』を遂げた藍染惣右介と、常に薄ら笑いを浮かべる市丸ギンが、まるで散歩でもするかのように悠然と歩を歩めていた。

走っても、走っても、藍染との距離が開かない。

霊圧という概念を超越した藍染の存在は、ただそこにいるだけで、たつき達の魂を押し潰し、呼吸すら困難にさせていた。

「……面白いものだ。君たちは私から逃げ切れると、本気で思っているのかい?」

藍染の冷酷で平坦な声が、背後から直接脳内に響く。

「……たつきちゃん、啓吾! 逃げて!」

水色が手製の爆弾を投げつけるが、藍染は指一本動かさず、爆炎を霊圧だけで完全にかき消してしまった。

「……ここまでか」

たつきが絶望に膝をつきそうになった、その時だった。

「——逃げな、子供たちッ!!」

上空から、群青色の高水圧の刃が、藍染とたつき達の間を切り裂くようにして地面に叩き込まれた。

アスファルトが爆発し、巨大な水柱が立ち昇る。

「……ほう」

藍染が、歩みを止めて上空を見上げる。

そこに舞い降りたのは、真紅の海賊コートを羽織り、右目に眼帯型の霊圧バイザーを装着した少女——宝鐘マリンであった。

彼女の息は乱れ、肩から流れる血がコートを赤黒く染めている。断界での修業を終えた一護と共に駆けつけるはずが、彼女は先行して空間を破り、この絶体絶命の場に単機で乱入したのだ。

「マリンさん……!」たつきが驚愕の声を上げる。

「アタシが時間を稼ぐ! アンタたちは一秒でも早く遠くへ行きな!!」

マリンは、腰の海賊刀『紅海月(くれないくらげ)』を抜き放ち、自身の「創造主」である藍染を真っ向から睨み据えた。

「……宝鐘マリン。失敗作の君が、この私を足止めできるとでも?」

藍染が、憐れむような目でマリンを見る。

その背後で、市丸ギンが、いつものように狐のように目を細めて笑った。

「アカンよぉ、マリンちゃん。今の藍染隊長はな、死神も虚も超えた、別の生き物になってしもたんや。君みたいなツギハギの泥水じゃ、触れることすらでけへんよ」

「……黙れよ、狐野郎。アタシは泥水でも失敗作でもない。……宝鐘海賊団の船長だ!!」

マリンが、紅海月に群青と漆黒の霊圧を纏わせて藍染へと斬りかかる。

だが。

ズンッ!!!

藍染がただ視線を向けただけで、マリンの体は見えない巨大な山に激突したかのように弾き飛ばされた。

「がはァッ!?」

アスファルトを削りながら数十メートル吹き飛ばされ、マリンは血を吐いて倒れ伏した。次元が違いすぎる。物理的な刃が届く以前の問題だった。

「……君の処分は後回しだ。まずは、あの子供たちを……」

藍染がたつき達へ向けて歩みを進めようとした、まさにその時。

「藍染隊長」

ギンが、スッと藍染の前に進み出た。

「こんなゴミ屑ども、隊長がわざわざ手を下すまでもあらへん。……僕が、殺しときます」

ギンは、自身の斬魄刀『神鎗』の柄に手をかけ、藍染に背を向けてたつき達へと歩き出した。

藍染は、静かにその後ろ姿を見つめ、「……そうか。ならば任せよう」と立ち止まった。

だが、それは。

百年の長きにわたり、市丸ギンが待ち望み、そして仕組んだ『完全なる死角』の完成であった。

### 第二章:神殺鎗、百年の裏切り

ギンは、たつき達に向けて刀を構えながら、ゆっくりと藍染から距離を取っていく。

藍染の鏡花水月の『完全催眠』から逃れる唯一の手段。それは、「鏡花水月が発動する前に、その刀身に触れること」。

ギンは、藍染の部下として百年もの間、そのたった一つの真実を聞き出すために、彼に付き従い、自らの本心を殺し続けてきた。

そして今、藍染は崩玉と融合し、鏡花水月の警戒を解いている。

(……ここや)

ギンは、たつき達を斬るふりをして、突如として振り返り、目にも留まらぬ速さで藍染の右腕——鏡花水月を握るその腕の「刀身」を、素手でガシリと掴んだ。

「……ギン?」

藍染の目に、初めて微かな疑問の色が浮かぶ。

その瞬間。ギンの狐のような細められた目が、極限まで見開かれ、氷のように冷たく、そして激しい殺意に満ちた「真の眼光」を放った。

「『殺せ』——」

ギンが、左手に握った自身の斬魄刀の柄を、藍染の胸元にピタリと密着させる。

「『神殺鎗(かみしにのやり)』」

ズバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!

音速の五百倍。

伸縮する際に刀身が一度「塵(ちり)」となる、最速にして最長の刃。

その真なる刃が、藍染の胸を——崩玉が埋め込まれた心臓の真上を、一切の抵抗を許さずに貫通した。

「が……はッ……!?」

藍染の口から、鮮血が噴き出す。

彼の無敵の肉体に、ぽっかりと巨大な風穴が開いたのだ。

「な……ギン……お前……!?」

吹き飛ばされて倒れていたマリンも、逃げようとしていたたつき達も、その光景に信じられないというように目を見張った。

「……何故だ、ギン……」

藍染が、胸の穴から血を流しながら、ギンを睨みつける。

ギンは、刀を元の長さに戻し、冷酷に笑った。

「何故って? 決まっとるやろ。僕がずっと、アンタの命を狙ってたからや」

ギンは、自身の刀身をトントンと指で叩いた。

「僕の卍解の能力、アンタに言うたことあったやろか? 『音速の五百倍で、13km伸びる』って」

「……ああ、聞いている」

「アレ、嘘や」

ギンは、まるで子供に悪戯の種明かしをするように、残酷な真実を口にする。

「そんなに長う伸びへんし、そんなに速うも動かへん。……僕の神殺鎗の本当の能力はな、伸びる瞬間、刀身が一瞬だけ『塵』になることや。そして……その塵の中には、細胞をドロドロに溶かして崩壊させる『猛毒』が仕込まれとる」

ギンの言葉と同時に。

藍染の胸の穴の内側が、ジュウウウウウッというおぞましい音を立てて、黒く腐り、溶け始めた。

「さっき、アンタの胸を貫いた時……刀身の欠片(塵)を、アンタの心臓の中に一つ、置いてきた。……細胞を溶かす猛毒の欠片をな」

藍染の顔が、驚愕と苦痛に歪む。

「……貴様……!!」

ギンは、藍染の胸から『崩玉』を強引に奪い取ると、後方へと跳躍した。

「……死にや、藍染隊長。アンタの胸に、僕の神殺鎗(どく)が回って、ドロドロに溶けて無くなるんや」

ギンは、胸を抱えて苦しむ藍染を見下ろしながら、自身の記憶の奥底にある「あの日の光景」を思い出していた。

まだ幼かった日。

乱菊が泣いていた。藍染の部下たちに、魂を削り取られ、倒れていた乱菊。

あの時、ギンは誓ったのだ。

『乱菊が泣かんでもええようにしたる』と。

たったそれだけのため。

たった一人の幼馴染の涙を拭うために、彼は百年間、死神を裏切り、世界を敵に回し、蛇のように地を這って、この一瞬の「殺意」だけを研ぎ澄ませてきた。

「……これで、終わりや。乱菊」

ギンが、小さく息を吐いた。

——だが。

「……素晴らしい……」

胸を溶かされ、死に絶えるはずだった藍染惣右介の口から、およそ絶望とは程遠い、歓喜の笑い声が漏れた。

「……え?」

ギンが目を見開く。

「素晴らしいぞ、ギン……! 私の胸を貫き、崩玉を奪い取ったその瞬間……私の中で、ついに崩玉が私を『主』として完全に理解し、私という存在を次の次元へと昇華させた……!!」

ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

藍染の体から、凄まじい光の柱が立ち昇った。

溶けかけていた胸の穴が瞬時に修復され、彼の背中から三対の蝶のような巨大な羽が展開される。

手元から離れたはずの崩玉は、空間を無視して瞬時に藍染の胸の中央へと転移し、再びその輝きを取り戻した。

「そんな……バカな……! 崩玉は僕が……!」

ギンが、初めて焦りの表情を浮かべる。

「崩玉は、もはや私自身の内にある。……よくやってくれた、ギン。君の裏切りと殺意が、私を『神』へと羽化させたのだ。……その褒美に、君に死を与えよう」

藍染の姿が、掻き消える。

「……ッ!!」

ギンが神殺鎗を構えるよりも早く。

ズバァアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

藍染の白き刃が、ギンの右腕を肩から完全に切り落とし、さらにその刃が、ギンの胸を斜めに深々と切り裂いた。

「が、はァッ……!!?」

鮮血が空に舞う。

ギンの体が、空中でくの字に折れ曲がり、石畳へと激しく墜落した。

「……これで、終わりだ。市丸ギン」

藍染が、血に濡れた刃を構え、ギンのトドメを刺そうとゆっくりと歩み寄る。

ギンの瞳から、絶望の影が落ちる。

(……アカンかった……。僕の毒じゃ、届かへんかった……)

乱菊の顔がよぎる。

結局、自分は彼女のために、何も残してやれなかった。

藍染が、無慈悲に刃を振り下ろす。

ギンが目を閉じた、その時だった。

### 第三章:猛毒と猛毒、海賊の加勢

ガキィイイイイイイイイイイイイイイインッ!!!!

「……何のつもりだ、宝鐘マリン」

藍染の振り下ろした刃を、凄まじい水圧を伴う漆黒と群青の刃が、下からカチ上げて防いでいた。

満身創痍の体を引きずり、死力を尽くして藍染とギンの間に割って入ったのは、宝鐘マリンだった。

「ハァッ……ハァッ……」

マリンのオッドアイが、虚の黄金色に輝き、顔の半分には白い骨の仮面が形成されている。

「……逃げろって……言っただろ、キツネ野郎……!」

マリンは、歯を食いしばりながら、背後に倒れるギンに向かって吐き捨てた。

「マリン、ちゃん……なんで……」

ギンは、痛みに喘ぎながら驚愕の目を向ける。自分は彼女にとって、藍染の右腕であり、敵だったはずだ。

「……アンタの毒、最高にクールだったよ」

マリンは、血を吐きながらも不敵に笑った。

「細胞を溶かす猛毒の刃……百年間も、たった一つの執念のためにそれを隠し持ってたなんてさ。……アタシの中の『虚の毒』とお揃いじゃないか」

マリンは、藍染の重圧に骨を軋ませながらも、一歩も退かない。

「アタシは……アンタのその執念に、海賊船長として敬意を払う。……だから、こんなグラサン野郎に、ここで無駄死にさせたりはしないワゾ!!」

「……愚かな。自身の命を投げ出してまで、この男を庇う義理がどこにある」

藍染が、刃を軽く押し込むだけで、マリンの膝が地面に沈む。

「義理? 海賊が義理で動くかよ! アタシはただ……アンタの思い通りになるのが、死ぬほど気に食わないだけだッ!!」

ゴバァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

マリンの全身から、限界を超えた『虚の劇毒の海』が爆発的に噴き出す。

「沈めェエエエエエエッ!!! 藍染ェエエエエエエッ!!!!」

マリンは紅海月を振り抜き、藍染に向けて至近距離から超高圧の『毒海流(ホロウ・ストリーム)』を放った。

触れれば霊子を腐敗させる猛毒の水刃。

だが。

「……言ったはずだ。君の毒は、もはや私には届かない」

藍染は、向かってくる猛毒の海を、ただ左手で「払った」だけだった。

パァンッ!!!

それだけで、マリンの放った劇毒の海が、完全に相殺され、霧散してしまった。

「な……!?」

「次元が違うのだよ、マリン。君の虚の毒は、死神と虚の境界線上の力。だが、今の私はその境界すらも超越した」

藍染の刃が、マリンの腹部を容赦なく切り裂く。

「がはァッ!!!」

血を噴き出し、マリンがギンの横へと崩れ落ちる。

圧倒的な絶望。

神の領域へと至った藍染惣右介の前では、いかなる執念の猛毒も、海賊の覇気も、意味を成さなかった。

「……無駄な足掻きを。君のその不完全な命も、ここで終わらせてあげよう」

藍染が、マリンとギンをまとめて切り捨てようと、刀を高く振り上げた。

ギンは、血の海の中で自身の無力を呪った。

(……すまん、マリンちゃん。君まで巻き込んでしもた……。乱菊……すまん……)

だが、その時。

——ドスゥウウウウウウウウウウウウウウウンッ!!!!

藍染の背後の空間が、凄まじい音を立てて『割れた』。

それは、断界(だんがい)と現世を繋ぐ穿界門が、内側からの異常な霊圧によって破壊され、こじ開けられた音だった。

「……何?」

藍染が振り返る。

土煙の中から姿を現したのは、一人の青年。

長く伸びた髪。右腕には鎖が巻き付き、右手そのものと融合した漆黒の斬魄刀。

そして何より異常なのは、彼から『一切の霊圧が感じられない』ことだった。

「……一、護……?」

マリンが、薄れゆく意識の中で、その青年の名を呼んだ。

黒崎一護。

断界での修行を経て、『最後の月牙天衝』という究極の力をその身に宿した、次元の違う姿。

### 第四章:託された意志、明日を拓く刃

「……黒崎、一護か。なるほど、断界で随分と面白い進化を遂げたようだね」

藍染が、一護へと向き直る。

一護は、倒れるマリンとギンの姿を一瞥し、そして、静かに藍染を見据えた。

「……場所を変えるぞ、藍染」

一護が藍染の顔面を鷲掴みにし、そのまま一瞬にして、はるか遠方の岩山へと飛び去っていった。

凄まじい衝撃音が、遠くから連続して響き渡る。

残されたのは、血溜まりの中に倒れるマリンと、息も絶え絶えのギン。

「……ギン!! ギンッ!!」

そこへ、空座町へ駆けつけていた松本乱菊が、涙を流しながら飛び込んできた。

「乱、菊……」

ギンは、微かに目を開け、自身を抱きしめて泣き崩れる乱菊の顔を見た。

(……ああ。やっぱり、泣かせてしもたな……)

ギンの瞳に、深い後悔と、そして一抹の安堵がよぎる。

彼は、薄れゆく視界の中で、遠くの岩山で藍染と互角以上に打ち合う、黒崎一護の姿を見ていた。

そして、自分の隣で、血塗れになりながらも、決してオッドアイの光を失わずに一護の背中を見つめている、宝鐘マリンの姿を。

(……黒崎一護。君の眼は……強い眼になったな。前とは違う。……これなら……)

ギンは、自身の残された最後の力で、乱菊の頬にそっと触れた。

「……すまんかったな、乱菊。……君が泣かんでもええように、世界を変えたかったんやけど……」

「ギン……喋らないで! お願い、死なないで!!」

ギンは、微かに笑った。

「……大丈夫や。……僕の毒は、届かへんかったけど……」

ギンは、傍らで膝をつくマリンの方へ、視線を向けた。

「マリンちゃん。……あとは、君のその強欲な毒と……あの黒崎一護の刃に……任せてええか……?」

マリンは、涙を堪えながら、強く、深く頷いた。

「……ああ。任せな、市丸ギン。……アンタの百年の意地は、アタシたちが絶対に無駄にはしない。……藍染は、アタシたちが必ず沈める!!」

マリンの言葉を聞いて。

市丸ギンは、最期に、彼本来の、狐のような、けれどどこか優しげな笑みを浮かべた。

(……よかった。……これで、ホンマに……君に任せて、逝ける……)

その思いを最後に、市丸ギンの手から力が抜け、乱菊の腕の中で、彼の命の灯火は静かに消え去った。

「ギィイイイイイイイイインッ!!!!」

乱菊の悲痛な叫び声が、本物の空座町の空に響き渡る。

マリンは、ギンの遺体に深く頭を下げ、そして、折れた紅海月の柄を杖にして、ゆっくりと立ち上がった。

右目に宿る虚の力が、かつてないほどに静かに、そして鋭く研ぎ澄まされているのを感じる。

市丸ギンという男が残した『猛毒のバトン』。

それを確かに受け取った海賊船長は、涙を拭い、黒崎一護と藍染惣右介が死闘を繰り広げる、最終決戦の地へと向けて、力強い一歩を踏み出したのである。

 

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