自分用   作:raian sinra

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X1話

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】千年血戦篇・序曲:白砂の惨劇と、封じられた群青

### 第一章:引き裂かれた青空と、砂漠からの悲鳴

死神代行消失篇での激闘から月日が流れ、空座町には再び「平穏」と呼ぶにふさわしい日常が戻っていた。

黒崎一護は死神の力を完全に取り戻し、宝鐘マリンもまた、自身の内に眠る『虚(ホロウ)』の力を統べる海賊船長として、確固たる己の魂の形(アイデンティティ)を確立していた。

だが、その平穏は、あまりにも唐突に、そして理不尽に引き裂かれることとなる。

「——一護ォオオオッ!! マリンお姉ちゃァアアアンッ!!」

ある日の放課後。空座町の上空を突如として引き裂いた黒腔(ガルガンタ)から、ボロボロになって血を流す小さな破面(アランカル)——ネル・トゥが転がり落ちてきた。

「ネル!? どうしたんだその怪我は!」

「虚圏(ウェコムンド)が……虚圏が、見知らぬ白い服の奴らに襲われてるっス!! ティアハリベル様もやられて……みんな、殺されちゃうっス!!」

ネルの号泣に、一護とマリンは顔を見合わせた。

虚圏。それはかつて藍染惣右介が支配し、彼らが命を懸けて戦い抜いた死地。だが同時に、今のマリンにとっては、自分の中にある『虚の力』のルーツが眠る場所でもある。

「……行くよ、一護」

マリンは、いつもの制服姿から一瞬にして死覇装へと着替え、右目に海賊の眼帯型をした霊圧のバイザーを装着した。そのオッドアイには、不条理な暴力に対する明確な怒りが燃えていた。

「ウチの縄張りを荒らした挙句、降伏した連中までいたぶるような外道……海賊船長が、黙って見過ごすわけにはいかないワゾ!」

「ああ。当然だ」

浦原喜助の協力により、一護、マリン、茶渡泰虎、井上織姫の四人は、ネルを抱えて即座に虚圏へと出撃する。

だが、暗い霊子の気流を抜けて辿り着いた白砂の砂漠で彼らを待っていたのは、かつての虚圏の面影すらない、凄惨な地獄絵図だった。

### 第二章:星十字騎士団(シュテルンリッター)、白き処刑人

「……なんだよ、これ……」

一護が絶句する。

果てしなく続く白砂の砂漠は、破面たちの赤い血で無残に染まっていた。

あちこちに累々と転がる死体の山。そして、生き残った破面たちを一列に並ばせ、軍隊のような統率で無慈悲な処刑を行っている「純白の軍服」を着た男たちの姿があった。

見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)・虚圏狩猟部隊(ヤークトアルメー)。

そしてその部隊を率いるのは、丸いサングラスをかけ、軍帽を目深に被った不気味な男——星十字騎士団「J」の聖文字(シュリフト)を持つ、キルゲ・オピーであった。

「さァ! さァさァさァ! 醜き虚の残党ども! 貴様らに与えられた選択肢はただ一つ! 陛下の前にひれ伏し、我ら滅却師(クインシー)の奴隷となるか、ここで浄化されるかです!」

キルゲが指揮棒を振るうと、滅却師の放つ神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)が、命乞いをする破面の頭を容赦なく吹き飛ばした。

「やめろォオオオオオッ!!」

一護が月牙を放ちながら砂丘を蹴り下る。

同時に、マリンは腰の斬魄刀を抜き放ち、キルゲの部下たちが放とうとしていた無数の矢の射線を、間近に迫る水壁で一挙に弾き飛ばした。

「出航せよ『紅海月(くれないくらげ)』!!」

マリンの始解から放たれた極太の蒼い水流が、白砂を大きくえぐりながら滅却師の陣形を真っ二つに割る。

突如として現れた死神の介入に、狩猟部隊の兵士たちがどよめいた。

「……おや」

キルゲ・オピーは、爆風を片手で払い除け、サングラスの奥の目を細めた。

「報告にあった特記戦力、黒崎一護……。それに、貴女は?」

キルゲの視線が、一護の隣で海賊刀を構えるマリンに向けられる。その瞬間、キルゲの口角が、あからさまな嫌悪と軽蔑の形に歪んだ。

「死神の分際で……なんという悍ましく、穢らわしい霊圧だ。貴女の魂の奥底から、我々滅却師が最も忌み嫌う『泥(ホロウ)』の臭いがプンプンと漂ってくる」

キルゲは吐き捨てるように言った。

「あァ……反吐が出る。死神の力に虚の汚物を混ぜ合わせた、卑しき混成体(ハイブリッド)ですか。陛下が創り上げようとしている純白の世界に、貴女のようなドブ泥は一滴たりとも必要ありません」

「……ドブ泥、ね」

マリンは、ピキッとこめかみに青筋を立てながら、逆に不敵な笑みを深くした。

「藍染にも同じようなこと言われたけど……アタシを失敗作だの泥水だのって見下した連中が、最後どうなったか教えてやろうか?」

マリンの右目が怪しく光る。

「……全員、この海賊船長が、海の底に沈めてやったんだよ!!」

### 第三章:激突、海賊船長と滅却師(クインシー)の誇り

「一護! コイツらはアタシが引き受ける! あんたはネルちゃんたちを安全な場所へ!!」

「マリン、無茶すんなよ! 相手は只の虚じゃねぇ、滅却師だ!!」

「分かってる! 船長を舐めるなァ!!」

マリンの足元から、凄まじい水圧が爆発する。彼女は『響転(ソニード)』に酷似した高速歩法で、一瞬にしてキルゲの懐へと潜り込んだ。

「大波(おおなみ)ッ!!」

紅海月から放たれる、鉄をも両断する超高圧の水刃。

だがキルゲは、慌てることなく腰から軍刀(霊子兵装)を抜き放ち、マリンの刃を真正面から受け止めた。

ガギィイイイイイインッ!!!

水と霊子が激しく衝突し、周囲の白砂が円形に吹き飛ぶ。

「……遅い、そして軽いですね。死神の浅知恵に虚の獣性を足したところで、我々滅却師の『絶対の規律』には遠く及ばない!」

キルゲの刀から、高濃度の霊子爆発が放たれる。

「チッ!」

マリンは即座に水流を盾にして後方へ飛び退くが、キルゲは既にその先を読んでいた。

「飛廉脚(ひれんきゃく)!」

マリンの背後に転移したキルゲが、零距離から神聖滅矢を放つ。

「させないワゾ! 海神の盾(わだつみのたて)!」

群青色の霊圧を帯びた分厚い水壁が展開され、光の矢を食い止める。

滅却師の攻撃は全て、大気中の霊子を集束して作られる。虚圏という霊子の宝庫において、彼らの力は際限なく引き上げられていた。

(こいつ、石田くんよりずっと厄介だ……! 霊子の集束速度が桁違い!)

マリンは息を吐き、紅海月を両手で構え直した。

「なら……霊子がどうとか理屈をこねる前に、アタシの海で押し潰してやる!」

マリンの全身から、重く、禍々しい『虚』の霊圧が噴き上がり始める。彼女の魂のルーツであり、最大の武器である虚化。

「——『卍解』!!」

マリンがその言葉を口にしようとした、まさにその瞬間だった。

「……させませんよ、薄汚い泥水が」

キルゲ・オピーが、自身の首元にある星十字のメダリオンを高く掲げた。

「滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)——『神の正義(ピスキエル)』!!」

カァアアアアアアアアンッ!!!

虚圏の黒い空を、目を焼くような純白の光の柱が貫いた。

光の中から現れたキルゲの姿は、天使そのものだった。頭上には星型の光輪(ハイリゲンシャイン)が輝き、背中には霊子で構成された巨大な純白の翼が羽ばたいている。

「な、なんだアイツ……! 滅却師の最終形態……!?」

少し離れた場所で見ていた一護が驚愕の声を上げる。石田雨竜の使った『滅却師最終形態(レッツト・シュティール)』とは根本的に異なる、神々しくも圧倒的な威圧感。

「……私の聖文字は『J』。その意味は、『監獄(ザ・ジェイル)』です」

天使の姿となったキルゲは、見下すような冷たい瞳でマリンを見据えた。

「我々滅却師にとって、虚の霊圧は魂を腐食させる『猛毒』。ならば、貴女のように魂の奥底に毒を隠し持ったイレギュラーに対する処方箋はただ一つ」

キルゲが手をかざすと、マリンの足元の砂漠から、純白の霊子の檻が唐突に現れ、彼女の四肢を縛り上げた。

「なっ!? ぐあっ……!!」

「……隔離(クアランティン)し、完全に封殺することです」

### 第四章:拒絶される魂、封じられた群青

「こんな檻……ブチ壊してやる!!」

マリンは腕を振りほどこうと、虚化の仮面を呼び出そうとする。

顔の右半分に、海賊のバンダナと眼帯を模した骨の仮面が形成されかける——が。

バキィイイイイインッ!!!

「……え?」

マリンの顔を覆いかけていた仮面が、キルゲの霊子の檻に触れた瞬間、パリンと乾いた音を立てて砕け散った。

「な……仮面が……出ない……?」

マリンは自身の顔に触れ、愕然とした。何度内なる虚の力を引き出そうとしても、霊圧が体の表面に出た瞬間に、純白の檻の力によって完全に「相殺」され、無効化されてしまうのだ。

「無駄です。私の『監獄(ザ・ジェイル)』は、あらゆる霊子を完全に遮断し、拘束する絶対の檻。特に、貴女のような虚の毒を持った存在に対しては、その『毒性』のみをピンポイントで抽出し、完全に封じ込めるように術式を書き換えてあります」

キルゲは残酷な笑みを浮かべ、ゆっくりとマリンに近づいていく。

「貴女は、自分が虚の力を飼い慣らし、海賊船長などというふざけた自己同一性(アイデンティティ)を確立したつもりだったのでしょう? だが、それは大きな間違いだ」

キルゲの言葉が、鋭いナイフのようにマリンの心を抉る。

「我々から見れば、貴女はただの『エラー』だ。死神の力に、我々の毒である虚を混ぜ合わせただけの、生きる価値もない失敗作。……今、その汚らわしい虚の力を封じられた貴女に、一体何が残っているというのです?」

「黙れ……ッ!! アタシは、失敗作なんかじゃない!!」

マリンは残された純粋な死神の力だけで水流を生み出し、キルゲに向けて放つ。

だが、虚の重圧(プレッシャー)を失ったただの蒼い水流は、完聖体となったキルゲの霊子防御の前に、霧のように弾け飛ぶだけだった。

(嘘だろ……! アタシの力が、まったく通用しない……!?)

マリンの全身を、かつてないほどの『無力感』と『恐怖』が支配し始めていた。

藍染との戦いで、両親の愛という真実を知り、自分自身の全てを受け入れたはずだった。

虚の力は、彼女にとって「バケモノの呪い」から、「大切な船員(クルー)を護るための錨(いかり)」へと変わっていたのだ。

それを今、この真っ白な侵略者たちは、ただの「毒」であり「汚物」であると全否定し、強制的に封じ込めてしまった。

力を奪われたのではない。自身の『魂の根源(ルーツ)』そのものを、存在してはならないものとして隔離されたのだ。

「あァアアアアアッ!!」

キルゲの軍刀が一閃し、マリンの肩を深く切り裂く。

血しぶきが白砂を舞い、マリンは檻の中で力なく膝をついた。

「マリンッ!!!」

一護が絶叫し、キルゲに向けて漆黒の月牙天衝を放つ。

「……邪魔ですね。貴方の相手もして差し上げましょう、黒崎一護」

キルゲが軍刀で月牙を弾き返し、一護との凄まじい空中戦が始まった。

砂漠に倒れ伏したマリンの視界が、自身の流す血で赤く染まっていく。

(……ごめん、一護。アタシ……何も、できなかった……)

紅海月の柄を握る力が、少しずつ抜けていく。

自分の最大の武器を奪われ、アイデンティティを否定された海賊船長。

だが、彼女のこの「封じられた無力感」こそが、後に尸魂界の命運を左右する、滅却師のシステムに対する決定的な『猛毒(カウンター)』へと至る、過酷な試練の始まりであることに、この時のマリンはまだ気づいていなかった。

見えざる帝国による宣戦布告。

それは、死神の誇りも、海賊の意志も、全てを等しく蹂躙する、絶望の千年の幕開けであった。

 

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