自分用   作:raian sinra

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X2話

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】千年血戦篇・序曲:瀞霊廷、炎の如き蹂躙

### 第一章:影からの急襲、崩れゆく青空

尸魂界(ソウル・ソサエティ)の中枢であり、死神たちの誇り高き本拠地である『瀞霊廷』。

その日の空は、皮肉なほどに澄み切った青色をしていた。

見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)による宣戦布告と、一番隊副隊長・雀部長次郎の凄惨な死から数日。護廷十三隊は厳戒態勢を敷き、来るべき敵の「侵攻」に備えて瀞霊廷の全方位に結界を張り巡らせていた。

「——敵襲に備えよ! 門の防衛を固めろ!」

隊士たちの怒号が飛び交う中、誰もが「外」からの攻撃を警戒していた。

だが、彼らがどれほど空を睨もうとも、結界を強化しようとも、それは全くの無意味であった。なぜなら、敵は「外」から来るのではなかったからだ。

——ポタリ。

太陽の光を遮るように、瀞霊廷内の至る所の「影」が、墨汁を落としたように不自然に広がり始めた。

「な……なんだ、この影は!?」

建物の影、壁の影、そして死神たち自身の足元の影。

それらが唐突に繋がり合い、異次元の扉を開く。

千年の長きにわたり、瀞霊廷の「影の中」に身を潜め、霊子を蓄え続けてきた『影の領域(シャッテン・ベライヒ)』。そこから、純白の軍装を纏った滅却師(クインシー)の精鋭たち——『星十字騎士団(シュテルンリッター)』が、静かに、そして無慈悲に歩み出てきたのである。

「侵入者だァアアッ!!」

叫び声を上げた死神の頭が、次の瞬間には神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)によって跡形もなく吹き飛ばされていた。

「……五月蝿いですね。神聖なる陛下の進軍の邪魔です」

「アハッ! 死神どもが虫ケラみたいに慌ててるぜ!」

瀞霊廷の全域で、同時に、そして一方的な大虐殺が始まった。

それは「戦闘」などと呼べる代物ではなかった。数千人の一般隊士たちが、斬魄刀を抜く暇すら与えられず、霊子の矢と光の刃によって次々と肉塊へと変えられていく。

青かった尸魂界の空が、瞬く間に黒煙と血しぶきで赤黒く塗り潰されていった。

### 第二章:絶望のメダリオン、奪われた誇り

「恐れるな!! 隊を立て直せ!!」

蹂躙される隊士たちの前に、護廷十三隊の隊長格たちが続々と立ち塞がる。

六番隊隊長・朽木白哉。七番隊隊長・狛村左陣。十番隊隊長・日番谷冬獅郎。二番隊隊長・砕蜂。

彼らは、相対する星十字騎士団の異様な強さにすぐさま直感した。

始解では押し切れない。敵は、副隊長クラスを赤子のようにあしらう化け物の集団であると。

「……出し惜しみをしている場合ではないな。卍解で一気に片を付ける」

白哉が自身の斬魄刀を前に構え、他の隊長たちもまた、同時に卍解への解放状態に入った。

瀞霊廷の各所で、凄まじい霊圧の柱が立ち昇る。

「『卍解』——」

「『千本桜景厳(せんぼんざくらかげよし)』!」

「『黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)』!」

「『大紅蓮氷輪丸(だいぐれんひょうりんまる)』!」

「『雀蜂雷公鞭(じゃくほうらいこうべん)』!」

死神の最終奥義が顕現し、反撃の狼煙が上がった——かに見えた。

だが、白き騎士たちは誰一人として恐れる素振りを見せなかった。それどころか、彼らは胸元から円盤状の奇妙な『星十字のメダリオン』を取り出し、嗤ったのだ。

「……いただきます」

騎士たちがメダリオンを掲げた瞬間。

発動したはずの卍解が、巨大な桜の刃が、氷の龍が、明王の巨体が、ズズズズズッという異音と共に霊子へと分解され、メダリオンの中へと吸い込まれていった。

「な……!?」

白哉の目が驚愕に見開かれる。

封じられたのではない。斬魄刀との繋がりが、魂から強制的に引き剥がされ、完全に『奪われた』のだ。

「隊長たちの卍解が……消えた……!?」

絶望的な報告が、天挺空羅(てんていくうら)を通じて瀞霊廷全域に放送される。

死神にとって、最大の武器であり、自らの魂の半身である卍解を奪われること。それは、手足を捥がれ、丸腰にされることと同義だった。

絶対的な劣勢。護廷十三隊の誇りは、純白の蹂躙者たちによって完膚なきまでに叩き折られた。

### 第三章:檻の中の海賊、届かぬ叫び

その頃、尸魂界とは次元を隔てた虚圏(ウェコムンド)。

キルゲ・オピーの展開した霊子の絶対檻『監獄(ザ・ジェイル)』の中に囚われた宝鐘マリンは、自身の体を縛り付ける純白の鎖の中で、ギリッと奥歯を噛み締めていた。

「クソッ……! 破れろ! 破れろォオオオオッ!!」

マリンは残された死神の力で、右手の『紅海月』から超高圧の水流を放ち、檻の格子を叩き切り続けようとする。だが、虚の力を封じられた彼女の霊圧は、監獄の強固な壁を傷つけることすらできない。

その時、一護の持つ通信機から、技術開発局の阿近の切羽詰まった声が響いた。

『黒崎……宝鐘……聞こえるか……! 瀞霊廷が……見えざる帝国の奇襲を受けた……!』

「阿近さん!? どういうことだ!」一護がキルゲと交戦しながら叫ぶ。

『敵の正体は滅却師だ……。被害は甚大……既に隊士の死者は千を超え、隊長たちの卍解が複数、奪われた……! このままでは、護廷十三隊は全滅する……ッ!! お願いだ、お前たちしかいない! 早く、瀞霊廷を助けに来てくれェエエエエッ!!』

通信越しに聞こえる、爆音と隊士たちの断末魔。

それは、かつてマリンが藍染惣右介に敗北した際、空座町の偽りの空で感じた絶望と全く同じ「死の気配」だった。

「……みんなが……ルキアちゃんが、恋次が、殺されてる……?」

マリンのオッドアイが、絶望に震える。

(アタシは、何のために強くなった? 失敗作という呪いを乗り越えて、卍解まで修得して、やっと『仲間を護れる船長』になれたはずなのに!)

だが現実は、どうだ。

虚の力を「滅却師の毒」としてピンポイントで封殺されたことで、彼女はただの無力な少女に成り下がっている。檻の中で膝を抱え、仲間が死んでいく通信を聞くことしかできない。

「アァアアアアアアッ! 出せ!! ここから出せェエエエエ!!」

マリンは血塗れの両手で、格子を掴み、力任せに揺さぶる。指が裂け、血が流れ落ちても構わなかった。

「アタシは海賊船長(キャプテン)だ!! アタシの船員(クルー)たちが、今沈みかけてるんだ! こんなところで立ち止まってる暇なんて……一秒もないんだよォオオオオオオッ!!」

マリンの魂の底から、群青の海が荒れ狂う。

封じられたはずの「虚の力」が、彼女の絶望と怒りに呼応し、檻の内部で再び脈動し始めていた。キルゲの監獄でさえ完全に消し去ることはできない、深く、暗く、そして底知れぬほどに強靭な『海賊の執念』。

だが、檻はまだ破れない。一護もまた、キルゲの完聖体の前で足止めを食らっていた。

尸魂界の命運は、もはや風前の灯火かに見えた。

### 第四章:老将の怒り、焦熱の空

——その時だった。

絶望に染まる瀞霊廷の、一番隊隊舎の前に、一つの強大な「影」が降り立った。

見えざる帝国の皇帝であり、全ての滅却師の始祖——ユーハバッハ。

「……無残なものだな。千年前の貴様らが創り上げた殺戮集団の面影など、どこにもない」

ユーハバッハが静かに冷笑したその先。

そこには、愛する部下である雀部長次郎を奪われ、瀞霊廷を灰燼に帰された、護廷十三隊総隊長・山本元柳斎重國が、燃え盛る怒りを静かに湛えて立っていた。

「……永かった」

元柳斎の白髭が、風圧で揺れる。その双眸には、もはや理性という名の枷は一切存在しなかった。あるのは、千年の憎悪と、全てを灰にするという純粋な殺意のみ。

「この時を、どれほど待ちわびたことか。……ユーハバッハ!!」

ゴゴゴゴゴゴォオオオオオオオオオオオッ!!!!

次の瞬間。

瀞霊廷はおろか、尸魂界の全土が『異常乾燥』に見舞われた。

空の雲が瞬時に消滅し、大地はひび割れ、隊士たちの唇から水分が失われていく。

それは、死神の長がその真の力を解放した証。

「『卍解』——」

元柳斎の手に握られた、古びた一本の黒焦げの刀。

「——『残火の太刀(ざんかのたち)』」

その炎は、巨大な火柱を上げるわけではない。全ての炎を極小の刃の切っ先に封じ込めた、太陽の核にも等しい「摂氏一千五百万度」の熱の塊。

元柳斎が一歩踏み出しただけで、周囲の石畳が跡形もなく消滅(蒸発)する。

「貴様ら残党、一人残らずこの手で焼き尽くしてくれる!!」

元柳斎の咆哮と共に、尸魂界の反撃が始まった。

その圧倒的で、絶対的な炎の熱量は、次元の壁を越えて、遠く離れた虚圏にまで届くほどの凄まじい「霊圧の重圧」となって波及した。

虚圏の檻の中にいたマリンは、突如として肌を焼くような熱気を感じ、ハッと顔を上げた。

(この霊圧……総隊長(おじいちゃん)……!?)

それは、絶望の淵に突き落とされた死神たちにとっての、唯一にして最大の「希望の炎」だった。

あの最強の男が動いた。ならば、負けるはずがない。誰もがそう確信した。

だが、次元を越えて伝わってくるその焦熱の炎を肌で感じながらも、マリンのオッドアイに宿る「海賊の直感」だけは、名伏しがたい悪寒を感じ取っていた。

(……なんでだ? こんなに熱いのに……アタシの中の海が、底知れぬ恐怖で震えてる……)

圧倒的な炎の如き蹂躙を見せる老将。

しかし、その先に待っているのは、勝利という名の朝焼けではない。

神の力を持ったユーハバッハによる、「希望の完全なる折檻」——。

尸魂界の終わりを告げる最悪の瞬間が、刻一刻と迫っていた。

 

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