自分用   作:raian sinra

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X6話

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】千年血戦篇:霊王宮の試練と、魂の真実

### 第一章:臥豚殿(がとんでん)の異常なる饗宴

麒麟寺天示郎の『白骨地獄』と『血の池地獄』によって、ユーハバッハと星十字騎士団によって肉体に刻まれた致命的な損傷を癒した黒崎一護と宝鐘マリン。

彼らが次に案内されたのは、零番隊・第一官にして『穀王』の異名を持つ曳舟桐生(ひきふね・きりお)が治める宮殿——『臥豚殿(がとんでん)』であった。

「さァさァ! よく来たねえ、一護ちゃんにマリンちゃん! お腹空いてるやろ? たんと食べなさいな!」

豪快な笑い声と共に二人を出迎えたのは、恰幅の良すぎる、割烹着姿のふくよかな女性だった。

彼女の背後には、巨大な宴会テーブルが用意されており、そこには見たこともないような豪華絢爛な料理が山のように積まれていた。

巨大な肉の丸焼き、色鮮やかな果実、湯気を立てる極上のスープ。どれもが強烈なまでの食欲をそそる匂いを放ち、空腹など感じていなかったはずのマリンの腹を、信じられないほどの音で鳴らさせた。

「……なんだ、このメシ。匂いだけで、頭がおかしくなりそうだワゾ……」

マリンは無意識に生唾を飲み込みながら、ふらふらとテーブルに引き寄せられていく。

一護もまた、「遠慮しねェぜ!」とばかりに、目の前の骨付き肉に豪快にかぶりついた。

「う……んまァアアアアアアッ!! なんだこれ!! 今まで食った何よりも美味い!!」

一護が叫びながら次々と料理を腹に詰め込んでいく。

マリンも、出された琥珀色のスープを一口飲んだ瞬間、雷に打たれたような衝撃を受けた。

「美味しい……! なにこれ、ただのスープじゃない! 喉を通った瞬間から、体の内側から信じられないくらい熱い力が湧き上がってくる……!!」

一心不乱に料理を貪る二人を見つめながら、曳舟桐生は満足げに目を細めた。

「そりゃあそうさ。あたしの料理はね、ただの飯じゃない。『義魂(ぎこん)』の概念そのものを応用して、あたし自身の霊圧を食材の中にこれでもかってくらい練り込んであるんだからね」

「義魂……?」

肉を頬張りながら、一護が首を傾げる。

「そう。あたしは『義魂丸』の概念の創造者。あたしの料理を食べるってことはね、他の魂魄が持つ膨大な霊圧を、自分自身の『新しい血肉』として直接取り込むってことさ。……ユーハバッハっていうとんでもない化け物を相手にするんだ。今のあんたたちの『魂の器』じゃ、底が浅すぎる。だから……限界まで腹を膨らませて、魂の器そのものをでかくしなきゃならないんだよ」

曳舟の言葉は、母のような優しさに満ちていたが、その奥には零番隊としての底知れぬ凄みが隠されていた。

「さァ、どんどん食べな! ……あんたたちが、自分の内側から破裂(パンク)しない限りはね!」

### 第二章:暴食の虚(ホロウ)、器の悲鳴

「……っ!!」

食事を始めてから数十分後。

突如として、マリンの手からスープの器が滑り落ち、床でガシャンと砕け散った。

「マリン!?」

異変に気づいた一護が振り返る。

マリンは自身の喉を掻きむしり、テーブルに手をついて激しく嘔吐しそうになっていた。だが、口からは何も出ない。代わりに、彼女の全身の毛穴から、どす黒く、禍々しい『群青色の霊圧』が、蒸気のように噴き出し始めていた。

「がはッ……! あ、あぁアアアアアアッ!!」

マリンが床に転げ回り、凄まじい苦痛の叫びを上げる。

「マリン! どうした! 曳舟さん、マリンが!!」

一護が駆け寄ろうとするが、曳舟はスッと手を出して一護を制止した。

「……触るんじゃないよ、一護ちゃん。これは、彼女自身が乗り越えなきゃならない『試練』さ」

曳舟は、苦しむマリンを冷徹な目で見下ろした。

「彼女の魂は、死神と人間の魂、そして『虚(ホロウ)』の力が混じり合った、極めて不安定な混成体(ハイブリッド)だ。あたしの料理で急激に霊圧の絶対量が増えたことで、彼女の魂の奥底で飢えに飢えていた『虚の力』が、新しい霊圧を食い破ろうと暴走し始めたんだよ」

「虚が……暴走!?」

一護は息を呑んだ。かつて自分自身も経験した、内なる虚に魂を乗っ取られそうになるあの絶対的な恐怖。

「……滅却師(クインシー)の檻に閉じ込められて、虚の力を無理やり封じ込まれたストレスもあったんだろうね。今の彼女の内側では、飢餓状態の猛獣が、彼女自身の魂の主導権を奪おうと暴れ狂ってる。……ここで彼女が『自分』を見失えば、彼女はただのバケモノになって破裂する。……耐えなさい、宝鐘マリン。あんたの器は、そんなちっぽけな海じゃないだろ!」

現実世界でマリンが血を吐いて苦しむ中。

彼女の意識は、既に己の魂の最も深く、暗い場所——『内なる精神世界』へと引きずり込まれていた。

### 第三章:内なる深海、野性の反乱

——ゴオォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!

マリンが精神世界で目を開けると、そこはかつて藍染と戦う前に到達した、美しく穏やかな『凪の海』ではなかった。

空はどす黒い暗雲に覆われ、巨大な竜巻が何本も海面を荒らし回り、見上げるほどの高波が荒れ狂う、正真正銘の『嵐の海』。

「……嘘だろ。アタシの心の中が、こんなに荒れてるなんて……」

嵐の海の上で、マリンは紅海月の柄を握りしめながら、吹き飛ばされそうになる体を必死に保っていた。

その時、巨大な渦潮の中心から、けたたましい咆哮と共に「それ」が姿を現した。

『——アハハハハハハハハッ!! 弱い! 弱い! 弱いなぁ、マリン!!』

海を割って現れたのは、巨大な海竜(リヴァイアサン)のような下半身を持ち、上半身はマリンと瓜二つの姿をした『虚のマリン』であった。

その顔には白い骨の仮面が張り付き、瞳は白目と黒目が反転した禍々しい色に染まっている。

『藍染の時にお前を認めて、おとなしくしてやってたっていうのに! お前はあの星十字騎士団(シュテルンリッター)のヒョロガリの檻に閉じ込められて、ただ震えてただけじゃないか!!』

虚のマリンが、嘲笑うように巨大な水流をマリンに向けて放つ。

「くっ……!!」

マリンは斬魄刀でそれを防ぐが、凄まじい衝撃に腕の骨が軋む。

外の世界(臥豚殿)で取り込んだ曳舟桐生の膨大な霊圧を、この『内なる虚』が全て吸収してしまっているのだ。

『滅却師の力が怖いか!? 奴らがお前を泥水だって呼んだから、お前はビビって私(ホロウ)の力に蓋をした!! そのせいで、総隊長は死に、尸魂界はめちゃくちゃになった!! お前が弱気になったせいでなァ!!』

「違う!! アタシは……アタシは……!!」

『違わないね! お前は結局、失敗作の偽物なんだよ! 海賊船長なんて名乗っておきながら、世界を飲み込む覚悟もない!』

虚のマリンが咆哮すると、精神世界の海が真っ黒な『毒の海』へと変貌した。

それは、滅却師を殺すための純度100%の虚の霊子。

『中途半端な死神の真似事なんてやめちまえ! 私がお前の魂を全部食い尽くして、あのユーハバッハも、滅却師も、世界ごと全部この毒の海に引きずり込んでやるよォオオオオオッ!!』

巨大な虚の尾が、マリンの体を打ち据える。

「がはァッ!!」

マリンは真っ暗な海に叩き落とされ、深く、深く沈んでいく。

肺に黒い毒水が入り込み、息ができない。

(このまま……食われる……。アタシの魂が、このバケモノの飢えに……塗り潰される……)

滅却師への恐怖。己の無力さ。そして、全てを破壊したいという本能的な衝動。

それらが濁流となってマリンの自我を溶かそうとしていた。

### 第四章:海賊の強欲、そして全てを喰らう者

暗い海の底へ沈んでいくマリンの脳裏に、曳舟桐生の声が響いた。

『……限界まで腹を膨らませて、魂の器そのものをでかくしなきゃならないんだよ』

(魂の器を、でかくする……?)

マリンは、暗闇の中でハッと目を開いた。

アタシは今まで、自分の中の虚の力を「仲間を護るための錨(道具)」として、綺麗に制御しようとしすぎていた。

滅却師に「毒」だ「汚物」だと否定されたから、それを隠そうとしてしまった。

でも、違う。

海賊(アタシ)は、そんなお行儀のいい生き物じゃない。

(バケモノで上等だ。失敗作で上等だ。……猛毒だってんなら、世界を腐らせるくらい致死量まで溜め込んでやるって、あの雨の中で誓ったじゃないか!!)

マリンのオッドアイに、強烈な野心の炎が点灯した。

彼女は、自身の首を絞めようと巻きついてきた虚の触手を、両手でガシリと掴んだ。

『……なっ!?』

虚のマリンが驚愕する。沈んでいくはずだったマリンの体から、虚の黒い海を真っ二つに割るような、圧倒的に純度の高い『群青色の霊圧』が爆発したのだ。

「……ギャーギャーうるさいんだよ、アタシの影法師が」

マリンは暗い海の底から、虚の体を強引に引き寄せ、水面へと一気に浮上した。

「プハァッ!!」

嵐の海の上。マリンは虚のマリンの胸ぐらを掴み、その禍々しい瞳を真っ向から睨みつけた。

『き、貴様……! まだ抗う気か! お前の器じゃ、私の力とこの新しい霊圧の膨張には耐えきれない! 破裂するぞ!!』

「耐えきれないなら、無理やり広げるまでだ!!」

マリンは、口元を獰猛に歪めて笑った。それは、聖人君子のような死神の顔ではない。欲しいものは全て奪い取る、真の海賊の顔だった。

「アンタはアタシに『覚悟がない』って言ったね。……ああ、その通りだ。アタシは護るばかりで、奪う覚悟が足りてなかった」

マリンは紅海月を投げ捨て、素手で虚のマリンの骨の仮面に指を突き立てた。

「護廷十三隊の仇も、ユーハバッハの命も、そしてアンタっていうバケモノの力も! 全部アタシの海賊船の積荷だ!! アタシのモンだ!! 誰にも渡さないワゾ!!」

バキィイイイイイインッ!!!!

マリンが、虚のマリンの仮面を素手で強引に引き剥がし、粉砕した。

『ギャアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

「アタシの魂を食い尽くす? 笑わせるな。……アタシが、アンタを全部『食って』やるんだよ!!」

マリンは、崩壊していく虚の霊圧の塊——彼女自身の魂の最も暗く、恐ろしい部分——を、一切の拒絶も恐怖もなく、自身の胸の中に力強く抱きしめた。

毒も、泥も、殺意も、全てを自分自身の血肉として受け入れる。

それが、海賊船長・宝鐘マリンの出した『魂の器の広げ方』だった。

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!

精神世界を満たしていた真っ黒な毒の海と荒れ狂う嵐が、巨大な渦となってマリンの体内へと一気に吸い込まれていく。

制御するのではない。完全に同化し、喰らい尽くす。

嵐が収まった後、そこには底が見えないほど深く、静かで、しかし途方もない水圧(プレッシャー)を秘めた、どこまでも広がる『真の群青の海』だけが残されていた。

### 第五章:満ちる霊圧、次なる航路への帆

「——ぷはァッ!!!」

現実世界の臥豚殿。

床で痙攣していたマリンが、突如として大きく息を吸い込み、跳ね起きた。

「マリン!!」

一護が駆け寄る。

マリンの全身から噴き出していた黒い瘴気は綺麗に消え去り、彼女の体は、先ほどとは比べ物にならないほどに澄み切った、しかし圧倒的な質量の霊圧を纏っていた。

それは、尸魂界のいかなる隊長格とも異なる、特異な霊圧。

清浄な死神の霊力の中に、触れれば滅却師の魂を確実に腐敗させる「劇毒の虚」の霊子性が、完璧なバランスで細胞の隅々にまで溶け込んでいるのだ。

「……信じられない。霊圧の底が……見えねェ」

一護が、マリンから放たれる気迫に圧倒されて後ずさる。

マリンはゆっくりと立ち上がり、自身の両手を握りしめ、開いた。

体の中で、爆発的な力が完璧な制御下にあるのを感じる。魂の器が、限界を超えて巨大な深海へと拡張されていた。

「……ごちそうさま。最高に美味いスープだったよ、桐生のおばちゃん」

マリンは、口元の血を拭いながら、不敵な笑みを浮かべて曳舟を振り返った。

するとそこには、先ほどまでのふくよかな面影など微塵もない、スレンダーでグラマラスな美女の姿があった。

「へ……? 誰?」

マリンが目を白黒させる。

「誰って、あたしだよ。曳舟桐生さ」

美女となった曳舟が、ニヤリと笑う。

「あたしの料理は、あたし自身の霊圧を極限まで消費して作るからね。作り終えると、こうしてゲッソリ痩せちまうのさ。……それにしても」

曳舟は、マリンの全身を包む群青の霊圧を見つめ、満足そうに頷いた。

「見事な食べっぷりだったよ、海賊の嬢ちゃん。あんた、自分の中の毒を恐れるどころか、全部自分の血肉として飲み込んじまったね。……今のあんたの魂の器なら、ユーハバッハの首を盛る皿として、十分すぎるほどデカいよ」

「……ああ。どんなデカいバケモノだろうが、残さず平らげてやる」

マリンは、腰の紅海月の柄を力強く叩いた。

曳舟桐生の試練を越え、『海賊の糧』を完全に消化した宝鐘マリン。

失敗作と呼ばれた少女は、自らの内に潜む悪魔すらも船員として屈服させ、尸魂界を救うための「最大の猛毒」を完全に身に宿した。

「さあ、行くよ一護! 次はいよいよ、この折れたアタシたちの魂(カタナ)を、最高の刃に打ち直す時間だ!!」

マリンの声は、鳳凰殿へと向かう霊王宮の空に、高らかに響き渡った。

ユーハバッハを討ち、世界の崩壊を止めるための最終決戦へ向けて。

海賊船長の新たな航路は、決して揺らぐことのない極太の錨を下ろし、真っ直ぐに未来を見据えていたのである。

 

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