自分用   作:raian sinra

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X18話

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】千年血戦篇:最終決戦・世界を繋ぐ海賊の錨

### 第三章:絶望の再来と、静止の銀

### 第一節:未来の書き換え、神の影が覆う世界

「——私が死ぬという未来。それすらも、私はこの『全知全能(ジ・オールマイティ)』で書き換える!!」

黒崎一護の放った渾身の『月牙十字衝』によって、完璧に両断されたはずのユーハバッハの肉体。

しかし、尸魂界(ソウル・ソサエティ)の石畳に崩れ落ちたその骸から、突如として宇宙の深淵を煮詰めたような『真っ黒な影の奔流』が爆発的に噴き上がった。

それは、死という不可逆の事象すらも己の都合の良い形にねじ曲げる、神の暴挙。

真っ二つに分かたれた肉体が、どす黒い影を接着剤のようにして強引に結合し、ユーハバッハは再びその異形の姿を立ち上がらせたのだ。

「そんな……バカな……!!」

一護が、疲労と絶望で歪んだ顔を上げる。

「自分が死んだ後の未来を……書き換えたって言うのか……!?」

「神にはそれが可能なのだ、黒崎一護」

ユーハバッハの全身から溢れ出す影は、もはや留まることを知らず、津波のように四方八方へと膨張していく。

「幻術で私の眼を欺き、猛毒で私の視界を塞いだ。……確かに見事な連携だった。だが、どれほど小賢しい手を打とうと、お前たちは『私を殺したという過去』の枠組みから逃れることはできない」

ユーハバッハが右手を高く掲げる。

「そして私は、その枠組みごと未来を改変する。……終わりだ、死神ども。全ては私の影の中に飲み込まれ、一つになる!!」

ゴバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

ユーハバッハを中心に、瀞霊廷の跡地を埋め尽くすほどの漆黒の影が全方位へ向けて放たれた。

「チッ……!」

藍染惣右介が『鏡花水月』を構え、自身の前に強固な鬼道の盾を展開する。

「破道の九十九——『五龍転滅(ごりゅうてんめつ)』!!」

大地を割り、巨大な霊子の龍が影の津波を食い止めようと顕現する。だが、ユーハバッハの影は、その規格外の破壊の龍すらも、触れた端から黒い泥濘(ぬかるみ)へと変えて飲み込んでしまった。

「……私の幻術も、物理的な力で押し潰すか。全く、無粋な神だ」

藍染の姿が、影の奔流に完全に飲み込まれ、視界から消失する。

「藍染!! ……くそォオオオオオッ!!」

一護が跳躍し、迫り来る影の津波に向かって天鎖斬月を振り下ろそうとした。

だが、その瞬間。

——バキィイイイイイイイイインッ!!!!!

一護が刀を振るうよりも早く。

ユーハバッハの『未来改変』の力が再び発動し、月島秀九郎の力で過去を書き換えて修復したはずの真の天鎖斬月が、またしても無残に、真っ二つに粉砕された。

「あ……」

一護の手から、力が抜ける。

その一瞬の絶望の隙を突くように、巨大な影の塊が彼を強打した。

「がはァッ!?」

一護の体が宙を舞い、瓦礫の山へと激しく叩きつけられる。

刀は折れ、反撃の手段を完全に失い、黒崎一護の瞳から再び立ち上がるための光が急速に失われていった。

### 第二節:沈みゆく海賊船、神の箱庭の完成

「一護……ッ!!」

瓦礫の陰で、自らの血の池に倒れ伏していた宝鐘マリンが、掠れた声を上げた。

ユーハバッハの未来攻撃によって左腕を失い、さらに己の命を削って極限の『虚の毒』を放出した彼女の肉体は、とうに限界を超えていた。

指一本動かすことすらままならない。

右目に宿る虚の力も、ユーハバッハの絶対的な神の重圧(プレッシャー)の前に萎縮し、沈黙してしまっている。

(ダメだ……一護の刀が、また……。藍染も、やられた……)

マリンの視界が、失血によって暗く明滅する。

彼女のすぐ目の前まで、ユーハバッハの放った黒い影の沼が迫ってきていた。

かつてマリン自身が誇りとした『群青の海』を、真っ黒な絶望で塗り潰していく神の影。

「……この世界は、長きにわたり生と死の境界によって分かたれてきた。だが、それも今日で終わる」

影の中心で、ユーハバッハが静かに語り始める。

彼の声は、もはや怒りも憎しみも帯びていない。ただ、一つの絶対的な法則を世界に押し付ける、冷酷な宣告だった。

「死への恐怖。それが人間を、死神を、虚を狂わせてきた。……私はその恐怖を無くす。尸魂界も、現世も、虚圏も、全てをこの影で一つに還し、生と死の区別すらない『永遠の停滞』を創り上げる」

影が、マリンの足首に触れた。

その瞬間、全身の体温が急激に奪われ、己の魂(アイデンティティ)がドロドロに溶かされていくような悍ましい感覚が襲う。

(……ふざけんな……。生と死の区別がない世界……? 恐怖がない世界……?)

マリンは、残された右手の指を血まみれの地面に突き立て、泥を掴んだ。

海賊(アタシたち)は、死ぬのが怖いからこそ、今日を全力で笑って生きるんだ。

失うのが怖いからこそ、仲間(クルー)の手を絶対に離さないように強く握りしめるんだ。

「……そんな……何も変わらない、風も吹かない海なんて……アタシは、まっぴらごめんだワゾ……!!」

マリンは、折れかけた気力を無理やり振り絞り、自身の傍らに落ちている『真・紅海月』の柄を掴もうと右手を伸ばした。

だが、指先が刀に触れる寸前。

ユーハバッハの影が、無慈悲にマリンの右腕を飲み込み、そして彼女の全身を黒い沼の中へと引きずり込んだ。

「ァ……アアッ……!!」

声すらも影に奪われ、マリンの意識は、光一つない絶対の暗闇の底へと沈んでいく。

世界が終わる。

ユーハバッハの影が、瀞霊廷の空を完全に覆い尽くそうとしていた。

全てを諦めるしかない。誰もがそう確信した、まさにその絶対絶命の瞬間だった。

### 第三節:天涯よりの一矢、静止の銀

——ヒュンッ。

風の音すらかき消す影の濁流の中で、たった一つ。

極めて静かな、しかし空間そのものを切り裂くような『鋭い飛翔音』が鳴り響いた。

それは、天蓋の遥か彼方、崩壊する瀞霊廷の高台から放たれた、一筋の銀色の光だった。

「……何だ?」

全知全能の眼を持ち、全ての未来を把握しているはずのユーハバッハが、その一瞬、ほんの僅かに怪訝な表情を浮かべた。

彼の視る無数の未来の砂粒。その中に、この『銀の光』に関する情報が抜け落ちていたのだ。

光の正体。

それは、一本の『銀の矢』であった。

放ったのは、滅却師の生き残りであり、一護の戦友——石田雨竜。

そして、その矢尻に仕込まれていたのは、ただの金属ではない。

かつてユーハバッハが発動した『聖別(アウスヴェーレン)』によって、光と命を奪われた滅却師たち。

その犠牲者たちの心臓に、ただ一つ残される特異な血栓。

石田雨竜の父・竜弦が、亡き妻・片桐叶絵の心臓から取り出し、長い年月をかけて鍛え上げた執念の結晶——『静止の銀』。

「……黒崎ィイイイイイイイイイッ!!!!」

雨竜の魂を削るような叫び声と共に放たれたその銀の矢は、ユーハバッハの影の奔流を真っ向から貫き、一直線に神の胸元へと到達した。

ドスゥウウウウウウウウウウウウッ!!!!!

鈍い音と共に、静止の銀がユーハバッハの胸の奥深くに突き刺さった。

「……な、に……!?」

ユーハバッハの複数の瞳が、驚愕に見開かれた。

その瞬間。

瀞霊廷を覆い尽くそうとしていた、世界を飲み込むほどの巨大な影の奔流が、ピタリと、文字通り『完全に停止』した。

「が、あァッ……!? 私の……力が……!!」

ユーハバッハの口から、どす黒い血が溢れ出す。

胸に刺さった銀の矢尻から、凄まじい速度で『銀色の脈絡』がユーハバッハの全身へと広がり始めた。

聖別を発動した者の血に混じることで、その能力を一時的に完全に停止させるという『静止の銀』の特性。

それは、未来を視る眼(ジ・オールマイティ)すらも、霊王の絶対的な力すらも、問答無用で数秒間だけ『シャットダウン』させる、人間たちの執念の劇毒であった。

「力が……消える!? この私から……神の力が……!!」

ユーハバッハの体を覆っていた影が剥がれ落ち、複数の瞳が元の人間の一つの瞳へと戻っていく。

絶対的な神が、ただの「無防備な滅却師の男」へと引きずり降ろされた瞬間だった。

### 第四節:暗闇の底からの帰還

「……一護ォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

高台からの雨竜の叫びが、時が止まったかのような戦場に響き渡った。

その声は、影の沼に沈み、意識を手放しかけていたマリンの耳にも届いていた。

(……声が……聞こえる……)

マリンは、自身を包んでいた黒い影が、急激に圧力を失い、サラサラとしたただの霊子の砂へと変わっていくのを感じた。

(影が……消えた……? 神様の力が、止まってる……!?)

マリンのオッドアイが、暗闇の中で再びカッと見開かれた。

左腕はない。血も足りない。霊圧も底をついている。

だが、そんなことは関係なかった。

今、この瞬間。ユーハバッハの『未来改変』という反則の盾が、外れている。

神様に刃を通すことができる、千年に一度の、たった一瞬の絶対的な隙。

「……行けェ、一護ォオオオオオオオオオオッ!!!!」

マリンは、影の沼から強引に右腕を引き抜き、自身の残された最後の力を振り絞って、瓦礫の向こうで倒れる一護に向けて叫んだ。

一護は、雨竜の叫びと、マリンの声に弾かれたように顔を上げた。

ユーハバッハの全身を覆っていた影が消え、彼が胸に銀の矢を突き立てられて硬直している姿が、一護の瞳に映る。

(……今だ……!!)

一護は、地面に転がっていた『折れた天鎖斬月』を右手で力強く握りしめた。

彼の肉体もまた限界を超えている。だが、足腰に宿る死神の意志が、彼を前へと弾き出した。

「うおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!」

一護が、瓦礫を蹴り飛び出し、ユーハバッハに向けて一直線に突進する。

神のシステムが停止しているこの数秒間だけが、世界を救う唯一の希望。

折れた刃を後方に振り被り、一護はユーハバッハの懐へと飛び込んだ。

だが。

ユーハバッハは、ただの滅却師に戻りながらも、その瞳にはまだ戦士としての執念を燃やしていた。

「……こんなもので……私を止められると……!!」

静止の銀の効果が、早くも薄れ始めていた。

ユーハバッハの体から再び影が溢れ出し、彼の瞳孔が再び分裂しようと震える。

未来視の再起動。それが数コンマでも早く完了すれば、一護の刃は再び「未来で折られる」ことになる。

神の抵抗と、死神の執念。

その極限の鍔迫り合いの結末を左右する、名も無き海賊の『最後の一手』が、今まさに放たれようとしていた。

 

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