自分用   作:raian sinra

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X20話

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】千年血戦篇:最終決戦・世界を繋ぐ海賊の錨

### 第五章:エピローグ・澄み渡る青空と、海賊の帰還

### 第一節:残骸の怨嗟、終わらぬ死闘の余波

見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の皇帝であり、全てを統べる神となったユーハバッハの肉体が、黒崎一護の放った真の斬月によって完全に両断され、黒い霊子の砂となって尸魂界(ソウル・ソサエティ)の空に消え去った。

覆い尽くしていた漆黒の影が晴れ、瀞霊廷の空に、久方ぶりの澄み切った青空が顔を覗かせる。

だが、戦争というものは、大将の首を落とした瞬間に全てが綺麗に終わるほど甘いものではなかった。

「……マリン!! マリン、どこだ!!」

一護は満身創痍の体を引きずり、崩壊した真世界城(ヴァールヴェルト)の瓦礫の山を必死に掻き分けていた。

最後の瞬間、ユーハバッハのシステムを止めるために己の命を削って『劇毒の錨』を打ち込み、神の影によって彼方へと吹き飛ばされた宝鐘マリンの姿を探して。

その時である。

「オオオオオオオオオオオオッ!!!!」

瓦礫の下から、異形の咆哮が上がった。

ユーハバッハの死によって力の供給を断たれ、制御を失った見えざる帝国の聖兵(ゾルダート)たちの生き残りや、霊王の力の残滓を取り込んで暴走した異形の泥の塊たちが、最後の足掻きとばかりに一護へと襲いかかってきたのだ。

「チィッ……!! 往生際が悪いんだよテメェら!!」

一護は、疲労の極致にありながらも、右手にある無骨な斬月を振りかぶった。

だが、足がもつれる。神との死闘で、彼の霊圧はとうの昔に底を突いていた。

迫り来る異形の鉤爪が、一護の首筋に迫る——。

「——『咆えろ、蛇尾丸(ざびまる)』!!」

「——『舞え、袖白雪(そでしのゆき)』!!」

ズガァアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!

一護の眼前で、巨大な蛇の骨の刃が暴走する聖兵たちを薙ぎ払い、続く絶対零度の冷気が異形の泥を完全に氷結・粉砕した。

「一護!! ボサッとしてんじゃねェ!!」

「無事か、一護!!」

土煙の中から姿を現したのは、ボロボロになりながらも立ち上がった阿散井恋次と、朽木ルキアの二人だった。

さらに、上空からは無数の光の矢が降り注ぎ、残党たちを的確に射抜いていく。

「黒崎! 君は君の探すべきものを探せ! ここは僕たちが引き受ける!」

銀の弓を構えた石田雨竜が、高台から声を張り上げた。続いて、チャドの巨大な拳が瓦礫を粉砕し、道を切り開く。

「……お前ら……!」

一護は、頼もしい仲間たちの背中を見て、小さく笑みをこぼした。

「ああ! 頼んだぞ!!」

一護は再び走り出す。

仲間たちが切り開いてくれた道を抜け、ユーハバッハの影の奔流が最も色濃く残る、崩落した天守閣の最深部——瓦礫と黒い血に塗れた、巨大なすり鉢状のクレーターへと飛び込んだ。

### 第二節:途切れた命の糸、拒絶の盾

「マリン……!!」

クレーターの底。

そこには、真紅の海賊コートを黒く焦がし、血の池の中に倒れ伏す少女の姿があった。

左腕はユーハバッハの未来攻撃によって肩から消失し、残された右腕もまた、最後の錨を打ち込んだ代償として骨が砕け、あらぬ方向へ曲がっている。

『真・紅海月』は彼女の傍らで折れ、その刃からは光が完全に失われていた。

一護はマリンの傍らに膝をつき、血だらけの彼女の体を抱き起こした。

「おい、マリン……! 起きろ! 終わったぞ、俺たちの勝ちだ……!!」

だが、マリンの体は氷のように冷たく、微弱な呼吸すらも感じられない。

彼女の顔の右半分には、力を制御しきれずに暴走しかけた『虚(ホロウ)の仮面』の残骸が、痛々しくへばりついていた。

「一護くんッ!!」

遅れて駆けつけた井上織姫が、マリンの惨状を見て悲鳴を上げた。

「退いて、一護くん! すぐに治療するから……! 『双天帰盾(そうてんきしゅん)』!! 私、拒絶!!」

織姫のヘアピンから放たれた黄金の光が、マリンの体を優しく包み込む。

事象を無かったことにする、神の領域の修復。

だが——。

ピキッ、パキパキパキッ!!

「え……っ!?」

マリンを包んだ黄金の盾が、内側から激しくひび割れ始めた。

「どうなってんだ、井上!」

「わ、分からない……私の力が、弾かれてる……! マリンちゃんの体の中で、神の力と、虚の毒が複雑に混ざり合って暴走してて……魂そのものが、修復を『拒絶』してるの……!!」

織姫が涙を流しながら、必死に霊圧を注ぎ込む。

だが、限界を超えて『劇毒の錨』となったマリンの魂は、ユーハバッハの霊圧の残滓と混ざり合い、崩壊のカウントダウンを始めていたのだ。

「くそッ……!! マリン、戻ってこい!! てめェは海賊船長だろうが!! こんなところで沈んで、許されると思ってんのか!!」

一護が、マリンの体を強く揺さぶりながら絶叫する。

現実世界で彼らが必死に命を繋ぎ止めようとしているその頃。

マリンの意識は、深く、暗い『己の精神世界』の底で、最後の死闘を繰り広げていた。

### 第三節:精神世界・崩壊と再生の深海戦

光一つ届かない、冷たい深海の底。

マリンは、失ったはずの左腕を抱えながら、暗闇の中をあてもなく漂っていた。

(……あぁ。終わったんだ……。全部……)

激痛はない。ただ、圧倒的な疲労感と、心地よい微睡みが彼女を包み込んでいた。

『——よく頑張ったわね、アタシの船長』

暗闇の底から、二つの影がマリンの前に現れた。

一つは、真紅のコートを着た『紅海月』の精霊。

もう一つは、白い骨の仮面を被った『虚(ホロウ)のマリン』。

だが、その二つの影は、今や完全に溶け合い、一つの『群青と漆黒の化身』としてマリンに優しく微笑みかけていた。

『神様相手に、最高の喧嘩だった。アタシたちの毒は、確かに世界を救ったわ』

虚のマリンが、マリンの頬をそっと撫でる。

『でも、器はもう限界よ。これ以上、この魂を繋ぎ止めることはできない。……もう、休んでいいの。アタシたちと一緒に、この静かな海の底で眠りましょう』

その声は、甘く、魅惑的だった。

全てを投げ出し、痛みも恐怖もない、永遠の静寂へと身を委ねる誘惑。

現実世界の織姫の盾が弾かれているのは、マリン自身の魂が、この「死の安らぎ」を受け入れようとしているからであった。

(……そう、だね。アタシ、もう……十分、やったよね。パパとママの仇の藍染にも一泡吹かせたし……一護たちも、無事だし……)

マリンの瞳がゆっくりと閉じられようとする。

魂が、深い海溝の底へと沈んでいく。

『おい、マリン……! 戻ってこい!! てめェは海賊船長だろうが!!』

——その時。

水面の上、遥か彼方の現実世界から、不器用で、やかましい男の絶叫が、深海の底まで届いた。

(……一護……)

マリンの閉じかけたオッドアイが、ピクリと動く。

さらに、別の声が響く。

『マリンちゃん……! お願い、いかないで……!!』

織姫の、泣きじゃくる声。

(……アタシたち、まだ……)

『ダメよ、マリン。水面を見てはいけない』

紅海月の精霊が、マリンの目を塞ごうと手を伸ばす。

『現世に未練を残せば、あなたの魂は砕け散るわ。さあ、深淵へ——』

「——触るなッ!!!」

バシャァアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

深海の静寂を切り裂き、マリンの全身から『真紅の光』が爆発的に噴き出した。

それは、死神の力でも虚の力でもない。

現世で培った人間の魂の力——完現術(フルブリング)の、生への絶対的な執着。

「……何、寝ぼけたこと言ってんだよ、アタシの影法師」

マリンは、自身の目を塞ごうとした精霊の腕を、力強く払い除けた。

『マリン……!? あなた、もう体が……』

「うるさいッ!! アタシは海賊だ!!」

マリンが、水のない深海で力強く立ち上がる。

「死んでから休むなんて、アタシの性に合わない! 欲しいものは全部奪い取る。仲間も、命も、この世界も! 全部アタシの船に積んで、どこまでも航海してやるんだよ!!」

マリンは、崩壊しようとする己の精神世界の中で、見えない『操舵輪(かじ)』を両手で握りしめる構えをとった。

「沈むもんか……。こんな暗い海の底で、終わってたまァアアアアアアアアアアッ!!!!」

マリンの強欲な生命力が、彼女の魂を侵食していたユーハバッハの霊圧の残滓と、虚の毒の暴走を、力ずくでねじ伏せ、再び一つの『完璧な船』として組み上げ直していく。

深海の底から、凄まじい勢いで水面(現実)へと向かって、マリンの魂が急浮上を開始した。

### 第四節:青空の下の目覚め、海賊の帰還

「一護くん……! 盾が……!」

現実世界。

ひび割れ、今にも弾け飛びそうだった織姫の『双天帰盾』に、突如として変化が起きた。

マリンの体内から、微弱だった群青の霊圧が、まるで力強い心臓の鼓動のように『ドクンッ、ドクンッ』と脈打ち始めたのだ。

それに呼応するように、暴走していた虚の力がスッと鎮まり、織姫の拒絶の力が、マリンの肉体の深層へとスムーズに浸透していく。

「……受け入れた。マリンちゃんが、生きようとしてる……!!」

織姫が、ありったけの霊圧をヘアピンに注ぎ込む。

失われていた左腕が、黄金の光の中で光の粒子を集め、肉と骨を再構築していく。

砕けていた右腕が繋がり、焼け焦げていた皮膚が元通りに修復されていく。

そして。

「——ゲホッ! ハァッ、ハァッ……!!」

マリンが、大きくむせるようにして息を吸い込み、目を見開いた。

「マリンッ!!」

一護が、思わずマリンの体を強く抱きしめた。

「いッ……!? 痛い痛い痛い! バカ一護、アタシはまだ重傷なんだワゾ!!」

「あ、わりぃ……!」

一護が慌てて離れるが、その目には大粒の涙が浮かんでいた。

織姫もまた、「マリンちゃぁああん!」と泣きながらマリンの首に抱きつく。

「……たく、やかましいヤツらだね……」

マリンは、文句を言いながらも、新しく修復された左手で、織姫の背中を優しく撫でた。

彼女は、織姫の肩越しに、上空を見上げた。

見えざる帝国の暗雲は完全に消え去り、尸魂界の空には、どこまでも高く、澄み渡るような青空が広がっている。

頬を撫でる風には、もはや血の匂いも、神の重圧もなかった。

「……最高の空じゃないか」

瓦礫の山を越えて、雨竜、チャド、恋次、ルキアたちが駆け寄ってくるのが見える。

誰もが傷だらけで、ボロボロだったが、その顔には確かな勝利の安堵と、生き残ったことへの歓喜が満ちていた。

「へへっ……」

マリンは、オッドアイを細め、自身を囲む仲間たちを見て笑った。

「アタシたちの海は……まだまだ、これからだワゾ」

### 第五節:大団円、次なる海(未来)へ

それから、数週間の時が流れた。

崩壊した瀞霊廷は、護廷十三隊の生き残りと、王属特務・零番隊の力によって、驚異的な速度で復興の道を歩み始めていた。

ユーハバッハの野望は潰え、霊王の代わりとなる『新たな楔』の処置も(裏の事情は多々あれど)一応の決着を見せ、世界は再び「生と死の境界」を取り戻した。

瀞霊廷の復興作業が進む一番隊隊舎の前に、一人の少女が立っていた。

「……おーい! マリン!」

声のする方へ振り返ると、死覇装姿の一護と、恋次、ルキアが手を振って歩いてくる。

「よぉ、一護。あんたたちも、そろそろ現世に帰る準備かい?」

マリンは、修復され、新調された真紅の海賊コートを羽織り、腰には刀神・王悦によって打ち直された『真・紅海月』を誇らしげに提げていた。

片目に装着した眼帯型の霊圧バイザーが、日差しを受けてキラリと光る。

「ああ。尸魂界のほうは、京楽総隊長や白哉たちが上手くやってくれるだろうからな。……お前は、どうするんだ?」

一護が尋ねる。

「アタシ? アタシは……」

マリンが空を見上げた時、背後から声がかかった。

「……宝鐘マリン」

振り返ると、六番隊隊長・朽木白哉と、十番隊隊長・日番谷冬獅郎が立っていた。

「隊長さんたち。見送りに来てくれたのかい?」マリンがニヤリと笑う。

「勘違いするな。パトロールのついでだ」日番谷がフイッと顔を背けるが、その表情はどこか柔らかい。

白哉は、静かにマリンを見据え、そして、小さく頷いた。

「霊王宮での戦い、そしてユーハバッハへの最後の一撃。お前がいなければ、尸魂界は沈んでいた。……護廷十三隊を代表し、改めて礼を言う。お前の魂は、確かに世界を繋ぐ『錨』であった」

死神の誇り高き隊長からの、最大限の賛辞。

「……よしてよ。アタシはただ、自分の縄張りを荒らされたくなかっただけの、強欲な海賊船長だワゾ」

マリンは照れ隠しに帽子を深く被り直した。

「じゃあな、隊長さんたち! 復興、頑張りなよ!」

マリンは背を向け、一護たちと共に、現世へと繋がる穿界門(せんかいもん)へと歩き出した。

「帰ろうぜ、マリン。俺たちの街に」

一護が笑いかける。

「ああ。……パパとママの墓参りにも行かなきゃならないし、現世の海も、そろそろ恋しくなってきたところだ」

失敗作と呼ばれ、己の魂の中に眠る『毒(ホロウ)』に怯え続けていた少女。

だが彼女は、数多の戦いを経て、神をも欺き、世界を繋ぎ止める最高の海賊船長へと成長を遂げた。

彼女の魂は、もう二度と迷うことはない。

穿界門の光が、彼らを包み込む。

その光の向こう側には、平和という名の、新たな、そして果てしない『航海』が待っているのだ。

「宝鐘海賊団、現世に向けて……全速前進、出航だァアアアアアッ!!!」

澄み渡る青空に、海賊船長の元気な号令が、いつまでも高らかに響き渡っていた。

(千年血戦篇:エピローグ・完)

 

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