自分用   作:raian sinra

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7話

## 【BLEACH × 宝鐘マリン】第七部:白亜の迷宮と、孤軍奮闘の海賊

### 第一章:花鶴大砲、空を裂く

「……行くぞ、てめぇら!!」

志波空鶴の勇ましい号令と共に、巨大な花鶴大砲が火を噴いた。

砲身の中で霊子を集束させた球体――黒崎一護、石田雨竜、茶渡泰虎、井上織姫、四楓院夜一、そして宝鐘マリンを乗せた『砲弾』は、凄まじい推進力を伴って尸魂界(ソウル・ソサエティ)の空へと打ち上げられた。

「ぎゃあああああああ!!?」

「ちょ、ちょっとこれGがヤバすぎない!? 船長の可憐な内臓が口から飛び出そうなんだけど!」

砲弾の中は、遊園地の絶叫マシンなど比較にならないほどの凄まじい衝撃と遠心力に支配されていた。

マリンは一護の袖を必死に掴みながら、目を回しそうになるのを堪える。彼らが目指すのは、死神たちが住まう中枢機関『瀞霊廷(せいれいてい)』。だが、その周囲には霊子を完全に遮断する巨大な球状の結界『遮魂膜(しゃこんまく)』が張られている。

「来るぞ! お前ら、霊力を一点に集中させろ!」

夜一の叫びと同時に、砲弾が遮魂膜に激突した。

バリバリバリッ!! という耳をつんざくような轟音と、目を開けていられないほどの閃光。六人の霊力で形成された砲弾の先端が、絶対防御の結界を少しずつ、だが確実に削り取っていく。

「いけぇええええええ!!」

一護の咆哮と共に、砲弾が遂に遮魂膜を突破した。

「やった! 突破したよ!」

マリンが歓喜の声を上げた、まさにその瞬間だった。

絶対的な防御を破られた結界の凄まじい反発エネルギーが、砲弾の内部に逆流してきたのだ。

「な、なんだ!? 球が……崩れていく!」

一護が焦燥の声を上げる。

六人の霊力で維持されていた球体が、限界を超えてメシミシとひび割れていく。

「マズい! このままでは空中で四散するぞ!」

夜一が叫んだ直後、パァンッ! という破裂音と共に、彼らを包んでいた霊子の球体が空中で完全に崩壊した。

「嘘ぉっ!?」

マリンの体は、他の仲間たちとは全く違う方向へと放り出された。

強風が全身を打ち据える。ぐるぐると回る視界の中で、一護や織姫たちが遠ざかっていくのが見えた。

「一護! みんな……!」

叫びながら手を伸ばすが、届かない。

マリンはただ一人、眼下に広がる広大な白亜の迷路――瀞霊廷の市街地へと、猛スピードで落下していった。

### 第二章:海賊船長の単独ステルスミッション

(このまま落ちたら、間違いなくトマトケチャップになる……!)

猛烈な風圧に目を細めながら、マリンは空中で必死に体勢を立て直した。

恐怖を力ずくでねじ伏せ、浦原喜助との過酷な修行を思い出す。己の魂の深淵に手を伸ばし、刀の柄を強く握りしめた。

「出航せよ——『紅海月(くれないくらげ)』!」

空中で抜刀すると同時に、美しい白銀の刃から大量の蒼い水流が噴き出した。

マリンはその水流を自身の真下へと展開し、分厚い「水のクッション」を作り出す。

ズザァアアアアアンッ!!

激しい水飛沫を上げて、マリンは瀞霊廷の入り組んだ路地裏へと着地した。

強烈な衝撃で膝をついたが、骨折ひとつしていない。水流が落下のエネルギーを見事に相殺してくれたのだ。

「……っ、はぁ、はぁ……。生きてる……」

マリンは刀を杖代わりにして立ち上がり、周囲を見回した。

白い土塀。入り組んだ石畳の路地。死神たちの住処である瀞霊廷は、まるで時代劇のセットのような古風な造りをしていた。

「みんな、どこに行っちゃったんだろう……」

不安が胸をよぎるが、立ち止まっている暇はない。

突如、瀞霊廷の空に甲高い警報音が鳴り響き始めた。

『侵入者(旅禍)発見! 全隊、直ちに迎撃態勢に移行せよ!』

「あーあ。そりゃバレるよね、あんな派手な花火打ち上げたら」

マリンは深くため息をつくと、紅海月を構え直した。

「仕方ない。ルキアちゃんがいる場所(懺罪宮)を目指しつつ、みんなと合流しないと。ここからは、海賊船長の華麗なステルスミッションの始まりだよ」

マリンは足音を殺し、路地裏を駆け抜けていった。

だが、現実は甘くなかった。

数分も走らないうちに、前方の曲がり角から荒々しい霊圧を持った死神の集団が姿を現したのだ。彼らの羽裏色は浅葱色。戦闘狂の集まりである十一番隊の隊士たちだった。

「おい! あそこに旅禍が一人いるぞ!」

「女だ! しかも死神の格好をしてやがる!」

十人近い死神たちが、一斉に刀を抜いてマリンを取り囲む。

(ステルスミッション、開始三分で終了……!?)

「はぁ……。あのね、私、無駄な殺生は嫌いなの。道を開けてくれたら、おとなしく立ち去ってあげるんだけど?」

マリンが苦笑いしながら言うと、死神たちは下品な笑い声を上げた。

「ハッ! 命乞いなら後でたっぷりと聞いてやるよ!」

一人の隊士が、上段から刀を振り下ろしてくる。

「交渉決裂、っと」

マリンの眼差しが鋭く変化した。

彼女は『紅海月』を軽く振るい、刀身から高圧の水流を放った。

「シィッ!」

水流は鞭のようにしなり、隊士の顔面を強打する。

「ぐはっ!?」

「斬るだけが剣じゃないんだよ」

マリンは水流を地面に撒き散らし、それを紅海月の力で凍る寸前の「極めて滑りやすい水膜」へと変化させた。

一斉に飛びかかってきた死神たちは、つるりと足を滑らせて次々と盛大に転倒していく。

「うおっ!?」

「なんだこの水! 滑る……!」

「隙だらけ!」

マリンは水膜の上をスケートのように滑り抜けながら、峰打ちと水流による打撃で死神たちを次々と気絶させていく。

『紅海月』の真骨頂は、その圧倒的な機動力と、水を利用したトリッキーな戦法にある。浦原の元で極限まで鍛え抜かれた彼女の動きは、一般の隊士や下位席官クラスでは全く目で追えない速度に達していた。

「よしっ、全員おねんね完了! 船長の圧勝だね!」

最後に残った死神の鳩尾に肘打ちを叩き込み、マリンは軽く息をついた。

怪我をさせることなく、無力化に成功。この調子なら、案外すんなりとルキアの元へ辿り着けるかもしれない。

そんな甘い希望を抱いた瞬間だった。

「……随分と、器用な戦い方をするんだね」

路地の奥から、ひんやりとした、まるで背筋に氷を這わされるような冷たく重い声が響いた。

### 第三章:三番隊副隊長・吉良イヅル

マリンは弾かれたように振り返り、紅海月を構えた。

そこに立っていたのは、金髪の左半分で顔を隠し、どこか陰鬱な表情を浮かべた死神だった。

腕には「三」の文字が刻まれた副隊長章が巻かれている。

「……あなたが、旅禍の一人。宝鐘マリンだね。僕は三番隊副隊長、吉良イヅル」

吉良の放つ霊圧は、先ほどの一般隊士たちとは次元が違った。静かでありながら、底知れぬ重さと冷酷さを秘めている。

(副隊長……。恋次と同じクラスの相手。ここで当たっちゃうかぁ)

マリンは内心の焦りを悟られないよう、不敵な笑みを浮かべた。

「自己紹介どうも、吉良くん。できれば見逃してほしいんだけど……ダメだよね?」

「当然だ。君たち旅禍は、瀞霊廷の秩序を乱す大罪人だ。僕の誇りにかけて、ここで君を斬る」

吉良は腰の刀に手をかけ、ゆっくりと引き抜いた。

その刀身は、まだ始解の形すらとっていないただの浅打の状態だったが、それでも放たれるプレッシャーは尋常ではない。

「……行くよ」

吉良が地面を蹴った。

その速度は、先ほどの隊士たちとは比べ物にならない。瞬きする間にマリンの目の前に迫り、袈裟懸けに刃を振り下ろす。

「くっ……!」

マリンは紅海月でそれを受け止めた。

ガァンッ! という重い金属音が路地裏に響き渡る。

「ほう。副隊長である僕の太刀筋を、その細腕で受け止めるとはね。霊圧のコントロールも完璧だ。……だが」

吉良の目が、髪の隙間から冷たく光った。

「面を上げろ――『侘助(わびすけ)』」

吉良が解号を唱えた瞬間。

彼の手にある斬魄刀が、奇妙な形へと変化した。刀身が直角に曲がり、さらにそこから刃の先が内側へと曲がった、まるで四角い鉤のような形状。

(なんだ、あの形……? 斬るための刀じゃないみたい)

マリンがいぶかしんだ次の瞬間。

「……え?」

ガクンッ。

マリンの手首が、見えない鎖で引っ張られたように強烈に下へと沈み込んだ。

彼女の愛刀『紅海月』が、まるで鉄塊にでもなったかのように、急激に重みを増したのだ。

「な、なにこれ……! 刀が、重い……!」

両手で必死に支えようとするが、刀の切っ先が地面にガリガリと擦れる。

「気づいたようだね。僕の侘助の能力は、斬ったものの重さを『倍』にすることだ」

吉良は淡々と説明しながら、再び侘助を振り下ろした。

マリンは重くなった紅海月をなんとか持ち上げて防御するが、刃が交差した瞬間、さらに絶望的な重みが両腕にのしかかった。

「っああああ!!」

耐えきれず、マリンは片膝を突いてしまう。

「二回斬った。これで君の刀の重さは、元の四倍だ。その腕力では、もうまともに振るうことすらできないだろう」

吉良は冷酷に見下ろし、ゆっくりと歩み寄ってくる。

「……刀が重くなり、頭を下げ、まるで詫びているかのような姿になる。故に『侘助』。……さぁ、終わりにしよう」

侘助の鉤状の刃が、マリンの首を刈り取ろうと死角から迫る。

圧倒的な絶望。

刀を振れない剣士に、勝機などない。

だが。

「……舐めないでよ」

マリンの瞳に宿る光は、決して消えてはいなかった。

### 第四章:水の反撃、海賊の機転

「刀が重くて振れないなら……私が振らなきゃいいだけの話でしょ!!」

マリンは、地面に押し付けられた『紅海月』の柄を両手で強く握りしめ、自身の霊圧を一気に刀へと流し込んだ。

「吹き飛べ!!」

ドバァアアアアアアアッ!!!

紅海月の刀身そのものから、かつてないほどの超高圧の水流が爆発的に噴き出した。

刃を振るのではなく、刀身から直接「放水」することで、巨大な間欠泉のような水柱を作り出したのだ。

「なっ……!?」

予想外の全方位からの水撃に、吉良は思わず腕で顔を覆い、後方へと飛び退いた。

「今だ!」

マリンはその瞬間を見逃さなかった。

刀そのものが重いなら、持ち上げなければいい。彼女は『紅海月』から噴出する水流の反動と水圧を直接地面に叩きつけ、その勢いを利用して、重い刀ごと自身の体を「サーフボード」のように滑らせたのだ。

「ハァッ!!」

強烈な水飛沫を上げながら、マリンは吉良の死角へと高速で滑り込む。

「ちょこまかと……!」

吉良が態勢を立て直し、侘助を振るおうとする。

しかし、マリンは既に次の手を打っていた。

彼女は紅海月を自身の足元の水たまりに突き刺し、霊圧を爆発させる。

「水竜巻(みずたつまき)!!」

足元から螺旋状の激しい水流が巻き起こり、吉良の視界を完全に奪った。

さらに、マリンはその渦の中から、高圧の水で形成された「水の刃」を複数生み出し、吉良に向けて射出した。

「くっ、縛道(ばくどう)の三十九『円閘扇(えんこうせん)』!」

吉良が円形の盾を展開して水の刃を防ぐ。

だが、その盾が水飛沫で曇ったほんの一瞬の隙。

「もらった!!」

マリンは紅海月の柄から手を離し、生身の体で吉良の懐へと潜り込んでいた。

そして、水流を纏わせた強烈な飛び蹴りを、吉良の胸板にクリーンヒットさせる。

「がはっ……!!」

防御が間に合わず、吉良の体が宙を舞い、石壁に激突して大きな土煙を上げた。

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

着地したマリンは、肩で息をしながら、地面に刺さったままの紅海月を引き抜こうとする。しかし、四倍の重さになった刀は、やはり重い。

(倒せた……? いや、副隊長がこの程度で沈むわけない)

マリンの直感通り、土煙の中から吉良がゆっくりと立ち上がってくるのが見えた。口元から一筋の血を流しているが、その眼光は先ほどよりも遥かに鋭く、冷え切っている。

「……驚いたよ。よもや、侘助の重さを逆に利用して推進力に変えるとはね。君のその機転、そして生存本能……確かに、ただの旅禍ではないようだ」

吉良が再び侘助を構える。彼の霊圧が、さらに一段階跳ね上がった。

(ヤバい、次は本気で殺しに来る。今の私じゃ、これ以上は……!)

マリンが覚悟を決めた、その時だった。

『ウオオオオオオオオオオオオッ!!!』

突如として、瀞霊廷中を震わせるほどの凄まじい霊圧の衝突音が、遠く離れた方角から響き渡った。

それは、更木剣八の狂気に満ちた霊圧と、それに呼応して爆発的に高まった黒崎一護の霊圧だった。

「な……んだ、この霊圧は……!? 十一番隊の方角……まさか、隊長が……?」

吉良がその異様な気配に気を取られ、一瞬だけマリンから視線を外した。

「一護……!」

マリンもまた、その霊圧の主が自分の幼なじみであることを確信していた。

(今しかない!)

マリンは渾身の力を振り絞り、紅海月を水流で浮き上がらせて強引に鞘に納めた。始解を解いたことで、刀の重さがリセットされるわけではないが、水流の推進力を足に纏わせることはできる。

「ごめんね吉良くん、続きはまた今度!」

吉良が振り返った時には、マリンは既に巨大な水柱の目くらましを残し、建物の屋根を飛び越えて遥か彼方へと逃走していた。

「……逃げられたか。だが、あの方向は……」

吉良はマリンが消えた方角を見つめ、不吉な予感に眉をひそめた。

彼女が逃げ込んだ先。そこは、さらに底知れぬ恐怖が口を開けて待つ、白亜の迷宮の最深部へと繋がっていたのである。

 

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