悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
「どうぞ、お入りなさいな!」
「ありがとうございます、おじゃましますー!」
「おじゃましまーす」
レタリアに促され、ステシアとヘルタの二人が賑やかに部屋へと入ってきた。
「あ、イチノセ博士!」
リビングのソファに座っていたミレアの姿を見つけ、ステシアがパッと表情を明るくして声を上げる。
「あ、どうも~、イチノセ博士」
後ろに続くヘルタは気さくに挨拶する。
「あ……えーと、こんにちは」
ミレアは慌てて立ち上がり、少しぎこちなく挨拶を返した。先ほどレタリアが手元の端末で何か操作をしていたのは見ていたが、まさか自警団の二人をこの場に呼び出しているとは思わず、完全に面食らっていたのだった。
ステシアとヘルタが勧められるままにソファへ腰掛けたタイミングを見計らい、ミレアはすかさずレタリアににじり寄り、声を潜めて耳打ちした。
「ちょっと、二人が来るって事前に聞いていたら、私はお邪魔にならないように先に戻っていたのに……」
「何だか、事前に言ったらミレアが逃げて帰ってしまいそうな気がしたので、あえて言いませんでしたわ」
悪びれる様子もなく、ふふんと胸を張って言い放つレタリアに、ミレアは深いため息をついて呆れ顔になった。
「……そういう妙な駆け引きばかり一人前に覚えて、この子は」
「いいじゃありませんの、賑やかな方が楽しいですわ!」
レタリアは全く気にしていない様子で、楽しそうに笑っている。
「レタリアさん、お引越し祝い! 二人で急いで買ってきたものだけど、ここに置いとくねー」
ヘルタがそう言って、持ってきた綺麗な装飾箱を丁寧な手つきでローテーブルの上に置いた。
「まあ、ありがとうございます、ヘルタさん、ステシアさん! 今、温かいお飲み物を淹れますわね」
レタリアはそう言うと、ミレアの背中を軽く押すようにして一緒にキッチンのサーバーへと向かった。
新しく淹れたハーブティーをそれぞれの前に手際よく配り終え、二人の元へと戻る。
「そのお箱、さっそく開けさせていただきますわね」
レタリアがワクワクした様子で箱の結び紐を解き、そっと蓋を開けると、そこには鮮やかな赤と紫色の特製ベリーソースが贅沢にとろりと掛かった、純白の美しいホールケーキが現れた。
「じゃーん! フェターナの特製ベリーケーキです! 今日は本当に運よく焼き上がりのタイミングで買えました!」
ステシアが自分のことのように嬉しそうに、身を乗り出して話す。
「これ、セルディア内でも凄く人気で、整理券がないとなかなか買えないケーキよね……。ソラがよく『一度でいいからホールで食べ尽くしたい』ってボヤいていたわ」
スイーツにうるさいソラのお墨付きケーキにミレアも関心があるようだ。
「まあ、そうですの!? 本当に素敵な贈り物をありがとうございます! せっかくですから、皆様で楽しく分けて食べましょう!」
そう言ってレタリアが嬉々としてナイフを手に取り、自ら配ろうとしたが――
「あなたは今日の主役なんだから、大人しく座っていなさい。……ほら、こういうのは私がするわ」
ミレアがナイフを奪い取り、代わりに全員分のケーキを不均等にならないよう精密に……とはいかず、すこし不器用ながらに切り分けた。
その、あまりにも自然で息の合った二人のやり取りをじっと眺めていたヘルタが、ふと紅茶のカップを置いて口を開いた。
「なんだか、レタリアさんとイチノセ博士って、凄く仲が良いですよね」
その言葉に、フォークを手に持ったステシアが大きく何度も同意の首を振る。
「確かに! 前のテストフライトの時も思いましたけど、本当に仲良しですよね。なんだか、本当の姉妹みたいです!」
「姉妹」というあまりにも核心を突いたワードが飛び出したことで、ミレアは一瞬、びくっと身体を強張らせて視線を彷徨わせた。
しかし、レタリアは全く動じることなく、むしろ待っていましたと言わんばかりに満面の笑みを浮かべ、誇らしげに胸を張った。
「ええ、そうですわ! わたくし、ミレアの正式な『妹』になりましたから!」
――カラン、とステシアのフォークが皿に当たる小さな音が響くほど、一瞬の静寂がリビングを支配した。
あまりに直球すぎるレタリアの爆弾発言に、ミレアは完全に顔を真っ赤に染め上げ、なんて事をと言った表情でレタリアを見る。
「「えええええええーーーーーー!?」」
次の瞬間、ステシアとヘルタの声がきれいに重なり、ひっくり返った驚きの声が、新しい部屋の天井へと大きく響き渡った。
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