悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
無残に繋ぎ合わされたデブリの隙間を縫い、薄暗いレイダーの隠れ家へと突入した三機のマキナ。張り詰めた緊張感が漂うコックピットの通信回線に、グレインの落ち着いた声が響いた。
『レタリア、もし平然とこちらに向かってくる機体があったら、容赦なくぶっとばしていいぞ』
「? ……よく分かりませんけれど、分かりましたわ」
グレインの言葉の真意までは読めなかったが、レタリアは怪訝に思いつつも素直に返事をした。
『さて……』
リーズのシートでグレインは一息つくと、周辺一帯の全共有チャンネルへと向けて、淡々と通告の通信を乗せた。
『ここを根城にしている犯罪者達に告ぐ。こちらはセルディア宇宙自治区管理局の自警団だ。お前たちが「ニスタリオ」自治区での略奪行為を経て、ここへ逃げ込んできたことは既に全て割れている。大人しく投降するならば身の安全は保証しよう』
威圧感のある声が、静まり返った廃墟のようなアジトの宙域に拡散していく。
……しばしの間、何の実効的な反応も無かった。
だが、数十秒が経過した頃、諦めたような濁った男の声が通信に混ざった。
『……チッ、ここまで追い詰められたか。なら諦めるしかねえ、投降するよ』
その通信と同時に、アーデンのセンサーが物陰からゆっくりと動く機影を一つ捉えた。その機体は両手を上げるような素振りを見せながら、レタリア、グレイン、ステシアの三機のすぐ近くへと無防備に移動してくる。
しかし、その距離が極端に縮まった瞬間――レタリアにはその感覚が伝わった。
(……害意を感じますわ)
近づいてきた機体が、死角から隠し持っている実体ブレードを抜き放ち、不意打ちでこちらを両断しようとしている。アーデンシステムによって鋭くなったレタリアの魔力は、その目論見を決定的に捉えていた。
「だまし討ちは通じませんわよっ!」
レタリアは叫ぶと同時に、アーデンの爆発的な機動でその機影の懐へと一瞬で飛び込んだ。そして、抜刀よりも早く、機体の全質量を乗せた強烈な蹴りを見舞った。
『レタリアさんっ!?』
ステシアの驚愕の悲鳴。
『うわわあああぁぁぁーーっ!?』
投降を装っていた機体は無様な悲鳴を上げながら後方へと凄まじい勢いで吹き飛び、建造物の壁へと激しく叩きつけられてそのまま沈黙した。火花を散らすその手元からは、レタリアの予知通り、鈍く光る実体ブレードが宇宙空間へと虚しくこぼれ落ちていく。
それと同時に、周囲のレーダーアラートが一斉に鳴り響き、センサーが隠れていた複数の動く機影を捉えた。最初から投降などする気はなく、一機を囮にして奇襲を仕掛けるつもりだったのだ。
『やはりな。小細工を好む連中だ』
最初から敵の嘘を見抜いていたグレインが、想定通りだとばかりに低く呟いた。
「グレイン!後8つありますわ!」
レタリアは端的に述べた。
そしてはコックピットで魔力を噴出させ、黄金の輝きを瞳に宿す。
待ち伏せしていた敵機のうち、素早く動き出した塊――3機の場所へと、アーデンは迷うことなく真っ先に飛び出した。
『よし、俺はこっちの3機を受け持つ。ステシアは後ろから回ってくる2機をやれ!』
グレインは的確に指示を出しながら、試作型フォトンライフル「アルシアン」を構えた。一瞬のブレもない流れるような動作から放たれた鋭い光条が、暗がりに紛れて接近しようとしていた敵機の一角、その頭部を正確に撃ち抜いて文字通り一撃で粉砕した。
『わ、わかりましたっ! やります!』
ステシアも遅れじとラスタの出力を上げ、後方から回り込んできた残りの2機へと向かい合っていく。
『な、なんだコイツらは……っ!? ただの地方の警備兵の動きじゃねえぞ、おい!』
一瞬にして形勢を逆転され、待ち伏せていたレイダーたちの通信に明確な恐慌が広がっていくのが分かった。
光り輝く紫紺の愛機を駆り、怯む敵陣のド真ん中へと斬り込んだレタリアは、不敵な笑みをその唇に浮かべた。
「さあ、お覚悟なさいませ!」
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