悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~!   作:エスカド

115 / 115
114話:まったくマナーがなっておりませんわね!

 漆黒の宇宙空間――輝く星々が広がる海へと飛び出したアーデン。

 レタリアはコックピットの中で、普段と明らかに異なる両肩の大型装備に視線を落とし、少し気になった様子で尋ねた。

 

「ミレア、これは一体なんですの?」

 

『レタリア、現在のアーデンのメインエネルギー残量を見てみなさい』

 

 ミレアに促され、レタリアがアーデンのグラフィック・インターフェイスを確認する。すると、最高速度で巡航しているにもかかわらず本体のメインエネルギーがほとんど減少しておらず、代わりに『エクステンション』と表示された拡張項目のゲージが滑らかに減っていた。

 

「……一体どういうことですの……!?」

 

『それはね、新開発の「増設巡航ブースター」よ。これがあれば長距離の超高速移動が可能になるわ。ただ、圧倒的な推進力が出る代わりに搭乗者への負荷が強すぎるから、パイロットを乗せての最終実証テストはこれから行う予定だったの。無人での安全確認は既に終えていて……本当はきちんと手順を踏んでから実戦投入したかったのだけどね』

 

 通信の向こうで、ミレアが少し申し訳なさそうに吐露する。

 

「そうでしたの。言われてみれば最初だけ少しガクンと急加速した気がいたしますけれど、今は特に何ともありませんわ」

 

 実質的に自分自身が実験台になっていたことについて、レタリアは全く意に介していなかった。

 

『……あなただからこそ、肉体・精神ともに問題がないと判断して装着させてもらったわ。あの急激な初期加速、普通のパイロットなら確実に気絶しているレベルなのだから』

 

「そういうことでしたのね! ふふん、このアーデンを完全に乗りこなせるわたくしならば、この程度の負荷、何の問題もありませんわよ!」

 

 急遽とはいえ、実質的には安全性を担保するための実験体に近い導入ではあったが、ミレアの言葉を最高の「賞賛」と受け取ったレタリアは、鼻を高くして得意げに微笑んだ。

 

『ふふ、頼もしいわね。トレースモードへの連動対応も完了しているわ。あなたの操縦でさらに速度を上げて、一刻も早く輸送船へ向かって』

 

「分かりましたわ、急ぎますわよ!」

 

 アーデンは両肩のブースターから凄まじい尾条を噴き上げ、さらなる超加速を見せて宇宙空間を爆進していった。

 

 ◆◆◆

 

 アーデンのレーダーが敵機を捉えるより、遥かに早く。

 

「居ますわ……!」

 

 レタリアの魔力が、遠方の異物を鮮明に捉えた。

 

 巨大な存在がひとつ。これが救援を求めている輸送船だろう。

 そして、そのすぐ近くに位置する、二つの不穏な反応。

 

 レタリアが思案している間に、遅れてアーデンのレーダーが対象を感知した。

 画面には輸送船と思われる反応と、レイダーと思われる反応――大型の機体がひとつ、中型の機体がひとつ。

 

 間もなく、レタリアの肉眼の視界にも民間輸送船の姿が映り込んだ。

 その反対側には、凶悪な威容を誇る『赤い大型マキナ』と、機動力に長けそうな『緑色の中型マキナ』が滞空していた。大型のマキナは、通常の汎用機の倍以上の異質な巨体を有している。

 

「聞こえますか!? 救援に参りましたわ!」

 

 レタリアは即座に輸送船の通信チャンネルを開き、声を張り上げた。

 

『助かった……! だが気を付けてくれ、うちの護衛機は既に全員やられてしまった! あいつらに照準を合わされていて、こちらも下手に動けなかったんだ!』

 

 見れば、輸送船の周囲には半壊した護衛マキナの残骸が複数漂っていた。命懸けの戦闘が行われた後であることが伺える。輸送船自体もすでに完全に捕捉されており、下手に逃走すれば即座に撃沈される積の残された状況だったのだ。

 

「……あちらが不逞の輩ですわね」

 

 レタリアの視線が、不気味に佇む2機のレイダーマキナへと向けられる。

 対峙する2機は、突如現れた紫紺の機体に対し、すぐには仕掛けてこずにこちらを様子見するように牽制していた。

 

『リーダー、これ以上手間取るとセルディアから本格的な救援が来ちまうぜ』

 

 緑色の中型マキナのパイロットが、焦れたように通信で声をかける。

 

『焦るな。……ですが、この独特なカラーリングと機動。噂の「暴走令嬢」ですか。手加減は不要です、一気に畳みかけましょう』

 

 赤い大型マキナに乗るリーダー格の男が、返答する。

 

 直後――レタリアの研ぎ澄まされた魔力が、空間の歪みを察知した。

 二機のマキナからの同時砲撃の予兆。

 

「っ! 見えていますわよ!」

 

 レタリアはアーデンを急速回避させ、射線から一瞬で離脱した。

 直後、先ほどまでアーデンがいた空間を極太の光条が通り抜けていく。

 

「挨拶もなしにいきなり攻撃してくるなんて、まったくマナーがなっておりませんわね!」

 

 レタリアが怒りの声を上げる間もなく、追撃を掛けようと緑色の中型マキナが怒涛の勢いで接近してきた。

 敵機が放ってくるフォトンライフルの連射を、いつも通り大きく跳ねて回避しようとした――その瞬間、レタリアの感覚が周囲の異変を捉えた。

 

(……これは、大きく動けば巻き込んでしまいますわ!)

 

 先ほど撃破されてしまった護衛マキナの『脱出ポッド』が、数機周辺の宙域を静かに漂っていたのだ。いつものように豪快かつ大きく機体を回避させれば、その推進波や余波で脆弱な脱出ポッドを巻き込み兼ねない。

 

「……やってみせますわ……!」

 

 レタリアは歯を食いしばると、最小限の機動を選択した。

 横や後ろへと逃げるのではなく、向かってくる敵機の猛射の合間を縫い、自ら相手の懐へと最短距離で超至近距離に滑り込む。

 

『なにっ!?』

 

 回避ではなく、まさか射線をくぐり抜けて突進してくるとは思わなかった中型マキナのパイロットが、一瞬の隙を見せる。慌ててフォトンセイバーを抜き放とうとするが――

 

「遅いですわよっ!」

 

 アーデンは抜刀されるより早く、フォトンセイバーを握ろうとした敵機の右腕へ向けて強烈な正拳突きを叩き込んだ。

 激しい衝撃が響き、勢いそのままにもう片方の拳で左腕の関節部も破壊。瞬く間に敵の戦闘能力を完全に奪い去った。

 

「お下がりなさい!」

 

 レタリアはそのまま無力化した敵機の頭部をマニピュレーターで掴むと、全身の質量を乗せて遠くの虚空へと豪快に投げ飛ばした。

 

『うわあああああっ!?』

 

 投げ飛ばされた勢いのまま、ぐるぐると回転しながら遠ざかっていく中型マキナ。もはや体勢を直すこともできず、脱出ポッドのない方向へと遠く飛んで行った。

 

「さて……次は貴方の番ですわよ」

 

 レタリアはフッと息を整えると、残された赤く巨大なマキナへと視線を向けた。

 

『……ふむ。思った以上にやりますね、お嬢さん』

 

 敵リーダーは不敵に呟くと、両肩に装備された巨大なキャノン砲と大型フォトンライフルの照準を、同時にアーデンへとピタリと向けたのだった。

どういうお話が好きですか?

  • キャラクターの日常
  • 戦闘
  • 政治的な駆け引き
  • 技術系
  • 主人公の活躍
  • レタリアがかわいい!
  • いや、ミレアがかわいい!
  • 他のキャラが良い!
  • その他(自由記入欄欲しい)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ロボゲー世界でロボに乗りたいので色々と画策してみる。(作者:裁縫セット)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼ 全然ロボットに乗せてくれないし乗る機会のないファンタジーロボゲー世界に転生した少年『アキ』▼これは、彼がですわですわ煩い悪役令嬢を利用してロボット作ったり。▼ パイロット技術化け物の主人公と決闘したり。▼「こんな事もあろうかと」でわけわからんアイテム取り出したり。▼ 物のついでにラスボスの計画狂わせたりしてロボットに狂うお話。


総合評価:245/評価:8/連載:3話/更新日時:2026年07月18日(土) 17:06 小説情報

廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜(作者:織雪ジッタ)(オリジナルSF/冒険・バトル)

そこは未来都市。▼何年も放置していたVRMMORPGに久しぶりにログインしてみた青年、ショウ。▼すっかり人のいなくなったそのゲームの世界に、懐かしさと哀愁を覚えながら、特にすることもなくログアウトする――はずだった。▼しかしショウは、ゲーム内のアバターであるおぞましくも禍々しい「魔族」の姿のまま、現実世界に出てきてしまう。▼魔族の見た目のせいで自分の意志とは…


総合評価:107/評価:6/連載:146話/更新日時:2026年06月19日(金) 09:17 小説情報

産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった(作者:ぷに凝)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 スキルが一人につき一つしかない世界で、小林大翔が引き当てたのは『性転換』。▼ 性別を変えるだけの戦闘向きではない産廃スキル――のはずだった。▼ だが、女性専用装備『魔法少女のドレス』との組み合わせにより、その常識は覆る。▼ ドレスの力で圧倒的な戦闘能力を手に入れた大翔は、正体を隠したまま謎の魔法少女『プリムノヴァ』として活動を開始。▼ 少女の体と魔法少女の…


総合評価:947/評価:7/連載:71話/更新日時:2026年08月11日(火) 18:49 小説情報

極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して(作者:kohet(旧名コヘヘ))(原作:ガンダムSEED)

詰め込み教育の賜物で見事ブルコス系思想家の家から三行半を突きつけられた私。▼可哀想な私は月のコペルニクスに追放された。▼極めて可愛そうな私はほんの少しだけ優秀なせいで幼年学校でコーディネイターのクラスに分類されてしまった。▼キラキラした名前の少女とアスなんたら君と出会い楽しい楽しい学校生活を送る健気な私は極めて善良な少年であったと言えよう。▼〜コズミック・イ…


総合評価:7226/評価:7.97/連載:171話/更新日時:2026年08月10日(月) 16:00 小説情報

【TS】兄だった人は姉になりました。(作者:R884)(オリジナル現代/文芸)

私の兄だった人が、ある日突然姉になった。別にトルコに旅行に行ったわけでもないし、そんな素振りもなかったし本当にいきなりの事だった。▼姉になった兄は、お世辞抜きで美人さんで私の彼氏も親友も、ついでに兄の会社の上司もメロメロだ、おい彼氏よそれで良いのか?▼これはこの前代未聞の出来事に立ち向かう、私と兄だった者の物語である。▼兄だった人が姉になっていた。TS病なん…


総合評価:1121/評価:8.59/連載:86話/更新日時:2026年08月21日(金) 12:11 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>