悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
「ふぅ……」
レタリアは深く息を吐き出し、乱れた呼吸を整えた。
コックピットのセンサーを確認するが、周囲に新たな敵機の気配はない。彼女自身の鋭い魔力も、脅威となる反応を完全に感知しなくなっていた。
『レタリアさん! 救援心から感謝する!』
通信ウィンドウが開き、民間輸送船シーライン号のキャプテンからの感謝の声が響いた。
「皆様がご無事のようで、何よりですわ」
レタリアは胸を撫でおろし、優しく微笑んだ。
その後、宙域に漂流していた護衛マキナの脱出ポッドを丁寧に回収。さらに、先ほどの戦闘で脱出したレイダーたちの脱出ポッドも速やかに確保し、武装解除を行った。
そうして事後処理を進めている間に、セルディアから緊急依頼を受けて駆けつけたフリーランサーたち、そして遅れて自警団の部隊が宙域へと到着した。
◆◆◆
『イチノセ博士から話は聞いていたが……ここまで手早いと、俺たちの仕事が完全になくなってしまうな』
アーデンの傍らへ静かに並走してきたのは、自警団副団長イーサンが駆るリバストだった。
「ふふ、遅かったですわね……と言いたいところですけれど、今回は『これ』のおかげですわね」
レタリアはそう言いながら、アーデンの両肩に装着された『増設巡航ブースター』へ視線を向けた。
『まったく、博士も無茶な試作品をいきなり実戦でつけさせたもんだ』
呆れつつも感心したように苦笑するイーサン。
彼はそのままアーデンから距離を取ると、部下たちへ周辺の警戒態勢の維持と、放置された敵機の回収作業の指揮を素早く指示し始めた。
そこへ、遅れて駆けつけた同業(フリーランサー)のマキナたちが数機、アーデンへと親しげに近づいてくる。中には、過去の依頼で共に戦ったことのある顔馴染みの機体もあった。
『自警団だけじゃなく、俺たちの仕事まで奪わないでくれよ、「暴走令嬢」さん! ……けど相変わらず、本当にとんでもない腕前だな』
「ふふふ、追いつきたいのでしたら、あなた方ももっと精進なさってくださいまし!」
誇らしげに胸を張り、軽口を交わすレタリア。周囲の緊張感が一気に和らいでいく。
『よし、一先ず一帯の安全は確認できた。集まってくれたフリーランサーの面々には、このまま引き継ぎで輸送船の護衛業務を依頼する!』
イーサンの全体通信での指示に従い、フリーランサーたちの機体がシーライン号の周囲へと展開し、足並みを揃えて護衛陣形を組んだ。
『――レタリア嬢、君はかなり疲労しているだろう。輸送船のドックに空きを用意してもらった。君は船内で身体を休めながら、セルディアへ戻るといい』
イーサンの労いの言葉に、レタリアは素直に頷いた。
いつもの意地っ張りなレタリアであれば、「これくらい何ともありませんわ!」と強がって自力で飛んで帰ると返事していたかもしれない。しかし、慣性を無視したあの限界突破の直角移動による激しいGの連続は、確実に彼女の身体へ疲労を蓄積させていた。
何より、周囲には信頼できる自警団と同業者の仲間たちが大勢いる。ここは素直に任せた方が良いと判断したのだった。
「そうですわね……少々疲れましたわ。では、お言葉に甘えさせていただきますわね」
「お気をつけて」というイーサンの声に見送られ、アーデンは輸送船の誘導シグナルに従って、開かれたドックへとゆっくり入港していった。
◆
ドックに収容された後、輸送船のラウンジに招かれたレタリア。
そこには、命を救われた乗客や乗組員たちが集まっており、彼女の姿が見えると割れんばかりの歓声と惜しみない称賛の拍手が巻き起こった。
「みなさまがご無事で何よりですわ!このレタリアが居る限り皆様のご安全は保証致しますわ!」
温かい飲み物を手に、少し照れくさそうにしながらも高らかに応えるレタリア。
安らぎと温かな感謝の熱気に包まれながら、輸送船シーライン号は、彼女の第二の故郷――セルディアへの帰路を静かに進んでいくのだった。
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