悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
セルディア一般居住区第3セクター――高層ビルの狭間に位置する、静かで落ち着いた小道に二人の少女の姿があった。
眩しい黄金色のショートヘアを揺らし、淡いイエローのフリルブラウスに小花柄のフレアスカートを合わせた可愛らしい私服姿のステシア。
そして、帽子を目深にかぶり、落ち着いたネイビーのフード付きパーカーにスマートなパンツルックと動きやすい服装で身を包んだレタリアだった。
「ここがそのお店ですよ、レタリアさん!」
ステシアにグイグイと手を引かれ、二人はとある店舗のドアをくぐった。
木目調のエントランスに掲げられた店の名前は――『ラヴ・ド・ポム』。
扉を開けると、そこにはカラフルでふわふわとした毛並みを持つ、両手サイズほどの小さな小動物たちの姿が一斉に目に飛び込んできた。ウサギやフェレットにも似た丸っこいシルエットで、くりくりとした瞳が愛くるしい、見るからに人懐っこそうな生き物たちだ。
「うわぁぁ、可愛い~っ!!」
ステシアが思わず歓声を上げる。
「まあ……こちらの世界の『幻獣』の類かしら? なんとも愛らしい姿をしていますわね……」
あまりの愛らしさに、レタリアも一瞬で表情を和らげ、頬を緩ませた。
「いらっしゃいませ! 『ラヴ・ド・ポム』へようこそ。おふたりとも、当店は初めてですか?」
ふんわりとした動物の耳カチューシャをつけた店員が、優しく声をかけてくる。
「はいっ! ずっと楽しみにしてたんです!」
ステシアが元気に返事をした。
◆◆◆
『ラヴ・ド・ポム』。
ここは、『ポム』と呼ばれる宇宙生命体と触れ合いながらお茶を楽しめる、今話題のペットカフェである。
ポムとは、元々は宇宙の小惑星帯で発見された原生生物の一種。宇宙の微細な塵を主食とする『スターダスト・ポム』、人間に対して完全に無害かつきわめて温厚な性格をしていたため、やがて人類の生活に溶け込み、ペットとして定着した経緯を持つ。現在では『スペーシア・ポム』などの多彩な亜種も親しまれていた。
真空の宇宙空間でも空気のある部屋でも平気で生きられ、無菌で体臭もなく、知能も高いため人間によく懐く。専用の栄養ゼリーさえ与えれば手軽に飼育できるため、各国の幾つものステーションの住民達にとっても最高の癒やし存在なのだった。
◆◆◆
テーブル席に通されたステシアとレタリアの元へ、待ってましたと言わんばかりに数匹のポムたちがテトテトと寄ってきた。
警戒心など微塵もなく、早くもステシアの膝の上にはピンク色のポムがちょこんと一匹座り込んでいる。
「ふあぁぁ……可愛い……メロメロになっちゃいます……!」
頬を緩ませ、ふやけた顔でナデナデするステシア。
一方のレタリアの周りにも、両脇に2匹ずつ、合計4匹のモコモコしたポムたちが寄り添うようにすり寄っていた。レタリアは指先で優しく毛並みを撫でてやる。
「とても……とても可愛いですわ……」
すっかり緩み切った表情で呟くレタリア。ステシアも深々と頷く。
「ずっと来てみたかったんですよ! セルディアって、ポムカフェがまだ珍しくてなかなか予約が取れなくて」
ステシアは購入した専用の栄養ゼリーをスプーンですくい、膝の上のポムへ少しずつ与えている。
「本当に……心が洗われますわね……。日々の疲れが一気に吹き飛んでいくようですわ……」
そうして二人でポムを可愛がり、美味しいハーブティーとケーキを堪能していた――その時だった。
カフェの入り口の扉が開く。
休日の店内には他にもちらほらと客がいるため、新しい客の来店自体は何の変哲もない光景である。
……だが。
(あ、あの方は……!?)
ふと視線を向けたレタリアの瞳が、驚きで大きく見開かれた。
カフェの入口に立っていたのは――私服姿の、自警団副団長『イーサン・ブロー』その人だったのだ。
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