悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
セルディア管理局・重警備区画。
重厚な強化ガラスと電磁バリアで隔てられた取調室兼身柄引渡室にて、厳戒態勢のもとで手続が進められていた。
特殊な拘束具で完全に自由を奪われたブラングとその手下たちが、重い足取りでウィステルム本国軍の護送兵たちに引き渡されていく。荒々しかったかつての面影はなく、ブラングは苦々しい表情で沈黙を守ったまま、静かに提示された身元確認用の生体認証スキャンを受けていた。
端末が認証完了の電子音を鳴らし、ホログラム上に『移送承認完了』の文字が浮かび上がる。
本国軍の護送兵たちが手際よく書類と暗号化された記録データを照合し、すべての身柄引き渡しの行政手続きがつつがなく完了した。
無機質で張り詰めた空気が一段落したところで、ヘイラス大尉が短く息を吐き、隣に立つプリシラへと向き直って口を開いた。
「よし、これでブラング達の身柄移送に関する本手続きは一通り終わったな。……プリシラ中尉、折角の機会だ。セルディアの自警団の施設を見学させてもらってはどうだ? 俺は護送の細かい調整と本国への連絡を行おうと思う」
思わぬ提案に、プリシラは目を見開き、少し引け気味の様子で隣のグレインへ視線を向けた。
「ですが……自警団の施設や運用は、セルディアにとっても重要な機密に触れる部分があるのではないでしょうか。……グレイン団長、私のような他軍の人間がお邪魔しても問題ありませんでしょうか?」
慎み深く気遣いを見せるプリシラの問いかけに、グレインは「えー……そうですね……」とあごに手を当て、少し困ったように苦笑しながら、側に控えていたルエリオの顔を見た。
「ルエリオさん、どうですか?」
問われたルエリオは温和な笑みをたたえ、答えた。
「構いませんよ、グレイン君。ウィステルム本国との良好な関係を築く意味でも良い機会です。プリシラ中尉を案内してあげてください」
「承知しました。……ではプリシラ中尉、こちらへどうぞ。案内いたしましょう」
ルエリオの快諾を受け、グレインが促すように歩き出す。
「ありがとうございます、勉強させていただきます」
プリシラは丁寧にお辞儀をすると、凛とした佇まいでグレインの後に続いて歩き出した。
◆◆◆
重警備区画を抜け、自警団のメインハンガーや訓練施設へと続く広い連絡通路。
吹き抜けのキャットウォークからは、整備中の汎用マキナや整然と並ぶ隊員たちの訓練風景が見渡せる。
「ここが自警団の第1ハンガーです。さほどの規模ではありませんが、セルディアの治安維持と近郊宙域の警戒を担うため、整備体制には特に力を入れています」
グレインの丁寧な説明に、プリシラは感心したように頷きながら広大な施設を見渡していた。
「素晴らしいですね。機体のメンテナンス状態も極めて良好に見えます。単なる自治区の自衛組織という枠に収まらない、高い志と規律を感じます」
「そう言っていただけると光栄です。……っと、あそこにいるのは」
グレインの視線の先――こちらをじっと見つめている二人の女性の姿があった。
様子を見に来ていたミレア、そしてプリシラを視線で追っていたレタリアである。
「あ……!」
プリシラが足を止め、レタリアとしっかり目が合った。
「レタリア、ほら。クラネアでお世話になったのでしょう? ちゃんとご挨拶してきなさい」
背中をミレアに軽く押され、レタリアは一歩前へ出ると、ドレスの裾をつまむような優雅なしぐさ(今の服装は私服だが)で綺麗な一礼をした。
「あの……お久しぶりでございますわ、プリシラさん! ステーション・クラネアでは、不躾な方に絡まれていたわたくしをお助けいただき、本当にありがとうございました!」
突然のレタリアからの挨拶に、プリシラは一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐに記憶が繋がったように破顔し、穏やかな微笑みを浮かべた。
「あら……! レタリアさんですね! ふふ、あの時お話した方がセルディアの英雄『暴走令嬢』であると思いませんでしたわ」
プリシラの言葉にレタリアは頬を染める。
「もうっ、そのお名前が既に知れ渡ってしまっているなんてお恥ずかしいですわ……!」
その言葉にプリシラは更に微笑むのだった。
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