悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
鍔迫り合う両者のフォトンセイバー。
眩い光刃同士が激しく激突し、周囲の暗闇に青白い高エネルギー粒子を撒き散らす。しかし、その激しい拮抗は徐々に崩れ始めていた。
リーズのフォトンセイバーが徐々に押されている。
力負けして押し切られる直前、グレインは瞬時に判断を下した。リーズの体勢を滑らかに捻って刃の圧力を受け流すと、間合いを詰めてきたプリシラのラデュールへ向けて鋭い前蹴りを叩きつける。
プリシラ機は即座にバックスラスターを吹かして後退し、蹴りを難なく回避。その退避運動の動作のまま、左手からフォトンの粒子で形成された小型の投擲刃を暗闇の中へ放った。
『っ……!?』
ノーモーションの不意打ち。投擲刃はグレインのリーズの右腕関節部へ見事に突き刺さった。右腕の挙動に激しいノイズとエラーが奔る。
『くっ……流石に手厳しいな……!』
右腕の自由を失いかけたグレインは、迷わず右手に握っていた主兵装アルシアンを手放し、素早い手さばきで左手へと持ち替えた。そして間髪入れず、プリシラ機の旋回軌道へ先回りをかけるように、滑らかな横薙ぎの三連射を叩きつける。
プリシラ機は咄嗟に1射目を回避したものの、2射目、3射目はまさに逃げた先を完璧に予測された弾道だった。高出力のフォトン光条がラデュールの右脚と左肩を正確に穿つ。
火花とともに、画面上に『右脚・左肩 小破』の警告が表示された。
『見事なカウンターです……!』
体制を立て直しながら、プリシラが感嘆の声を漏らす。
『これくらい食らいついておかないと、自警団長の面目が立ちませんからね……』
実際かなり手厳しい相手だとグレインは感じていた。
(……出力では明らかに現在のリーズが劣っている、どうしたものか……)
グレインは即座に覚悟を決めると、リーズの残存ジェネレーターエネルギーを、左手に保持したアルシアンへと限界まで重点配分した。
コンソールを素早く操作し、アルシアンの機能を『アサルトモード』へと緊急移行させる。
コンバート完了の電子音とともに、アルシアンがフルオートマシンガンの如き超高サイクルでフォトンの光弾の雨を撃ち出し始めた。
『まだ……そんな機能が!?』
プリシラ機は背部スラスターを限界まで全開にし、空間を埋め尽くす光弾の雨をかいくぐるように超高速の回避機動を取る。だが、グレインは自機を微細に旋回させながら、その変則的な回避軌道へ少しずつ、着実に射線をすり合わせていった。
光条の群れがついにプリシラ機を捉え、残されていた左肩を腕ごと派手に吹き飛ばした。
『くっ……!』
左腕の完全喪失判定に伴い、プリシラのシミュレーターポッドに強烈な衝撃と警告音が駆け巡る。
『……っ、かなりの損傷を受けてしまいました……。ですが、「それだけの価値」はありました』
激しい衝撃に耐えながら、プリシラが静かに呟いた。
『どういう意味で――』
グレインがその言葉の真意を問おうとした、まさにその瞬間。
リーズのメインセンサーが甲高い緊急警告アラームを鳴らし響かせた。
視界の上方――そこから降り注いできたのは、ミサイルの群れだった。
リーズの頭上から、デブリの死角を突いて無数のミサイルが雨のように降り注ぐ。
『しまった……!』
グレインの顔から余裕が消え去る。
先ほどからのプリシラとの戦闘において、最初に上空へ放たれたあのミサイルの存在に気を払うだけの余裕などなかった。
回避運動も間に合わず、無防備なリーズの背部と関節部へ連続して着弾の爆炎が巻き起こる。警報音が鳴り響き、機体各所の損傷メーターが一瞬で真っ赤に染まった。
ほどなくして、メインモニターに『戦闘能力喪失』の文字が赤く点滅し、リーズは静かに沈黙した。
『ふぅ……本当に危ういところでした。感服致しました、グレインさん』
通信越しに、プリシラからの称賛の言葉が届く。
『悔しいですが、見事な挟撃でした。……あとは、彼女に託すとしましょう』
グレインが苦笑交じりに言った、直後。
漆黒の宇宙空間を切り裂き、プリシラのラデュールの正面へ、一機のマキナが疾風のごとき速度で滑り込んできた。
傷つきながらも力強さを持つ、紫紺の装甲のマキナ――レタリアの『アーデン』が、その姿を見せたのだった。
「お待たせいたしましたわね!」
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