悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
「グレイン、敗れてしまいましたのね……ですがわたくしにお任せなさい!」
レタリアの高らかな宣言が通信に乗って響き渡る。
『あと一歩だったんだがな。 頼んだぞ、レタリア』
グレインからの応じた連絡を受け、レタリアは意気込みを新たにする。
「お互い、少々ダメージがありますわね……わたくしが選ぶのはこれだけですっ!」
レタリアの叫びとともに、アーデンはメインスラスターを爆発的に吹かし、直線的な超高速でプリシラ機へ向かって突撃を開始した。
『速い……! 確かにアデリナさんのマキナにも劣らない速度です!』
正面から迫る紫紺の影を迎え撃つため、プリシラは右腕の銃剣式フォトンセイバーを構え、迎撃態勢を取る。
――レタリアはプリシラ機の微細な行動も見落とさないよう魔力だけではなく、目を見張る。
アーデンは寸前のところでプリシラ機の懐へ飛び込み、フォトンセイバーの間合いギリギリをすれすれで掠めるようにすり抜けていく。
『フェイント……』
プリシラは即座にアーデンを視界に捉え直そうと、背部スラスターを全力で噴射して機体を急旋回させた。
――しかし。
『居ないっ……!?』
背後へ回ったはずのアーデンの姿が、肉眼の視界から綺麗に消え去っていた。プリシラは混乱を抑え、一瞬だけコックピットのセンサー画面へ視線を走らせる。
『下……!! 今の一瞬で!?』
「これで仕留めますわっ!」
直角機動を連続してこなしたアーデンによる、とどめの上昇突撃。
プリシラ機のラデュールが姿勢を立て直す間すら与えず、下空から繰り出されたフォトンセイバーがラデュールの機影を一閃した。
空間を鮮やかな爆炎が染め上げる。
……だが、爆発を起こして破砕されたのはラデュールの本体ではなかった。
『ふぅ……今のは本当にギリギリでした……』
レタリアが一閃した刃が捉えていたのは、プリシラ機が咄嗟に掲げた銃剣式フォトンセイバー、そして切り離された背部大型スラスターだった。
「これを……今の動きを避けられるとは思いませんでしたわ……!」
荒い息を吐き出し、レタリアの額から一筋の汗が頬を伝い落ちる。
プリシラ機は間一髪で壊れた背部スラスターをパージし、武装もほぼ使い切った状態となっていた。ラデュールは腰部のウェポンラックから予備のフォトンセイバーを引き抜き、右手に固く握り直す。
『……決着といたしましょう』
◆
プリシラが静かに告げ、残された推力を振り絞ってアーデンへと迫る。
大型スラスターを失ったラデュールには、先ほどまでの圧倒的な加速力はない。しかし、機体本来の基本スペックだけでも十分に脅威的な速度が出ている。
「望むところですわ、参ります!」
レタリアもまた、アーデンを躍動させてラデュールへ向けて突き進む。
レタリアは迫り来るプリシラ機を凝視し、全感覚を空間へと集中させていく。
相手の動作の「起こり」を魔力で瞬時に捉え、自身の肉体を反応させ、それをトレースモードを介してダイレクトにアーデンへと伝達する。
プリシラ機は一瞬、横に薙ぎ払うかのような予備動作を見せてから、鋭くフォトンセイバーを突き出してきた。狙いはアーデンの胸部コックピットブロック。
レタリアは機体を斜めに傾け、同様にフォトンセイバーを正面へ突き出した。
アーデンはプリシラ機の光刃に装甲表面を焼かれながらも構わず突き進み、対するプリシラ機は刺突を回避すべく咄嗟に姿勢を変える。
――その瞬間
レタリアは思い切り機体を背後へ倒し込みながら強烈に捻り、その回転運動の勢いをそのまま乗せたダイナミックな蹴りを叩きつけた。
『きゃあああッ!?』
予想外の機動に、思わずプリシラの悲鳴が上がる。
完全に体制を崩し、無防備となったプリシラ機の元へ、アーデンが踏み込む。
「これで――終わりですわっ!!」
アーデンの右拳が、ラデュールの腹部装甲へ向けて強烈に叩き込まれた。
凄まじい衝撃を受けたプリシラ機はそのまま弾き飛ばされ、背後の巨大なデブリへと猛烈な勢いで激突。高エネルギーの粒子を吹き出しながら、その動きを完全に止めたのだった。
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