悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
降り注ぐフォトンの雨を、アーデンは最小限の動きでかいくぐっていく。暗闇の視界の中に、続々と複数の敵マキナの影が浮かび上がった。
手にフォトンライフルを携えた、無骨でシンプルな機体群。一部異なる兵装を懸架した個体も交ざっているが、基本骨格は同型の量産機のようだ。その数、およそ十数機。
「互いにご挨拶も交わさずにいきなり射撃だなんて、無礼ですわよ!」
レタリアは叫ぶと同時に、手近な位置にいた敵機へ向けてフォトンライフルを放った。
光条は敵機が咄嗟に掲げたシールドによって防がれる。――だが、弾丸の着弾とほぼ同時に超加速で肉薄していたアーデンが、相手の右腕を力任せに鷲掴みにした。
「そこですわっ!」
そのまま機体の出力を爆発させ、隣に位置していた別の敵機に向かって投げ飛ばす。
豪快に衝突した2機のマキナは絡み合ったまま激しい火花を散らし、背後の巨大建造物の外壁へ叩きつけられてそのまま静かに沈黙した。
だが、その敵機を撃破したまさにその瞬間。
「……なんですの? 何かが……居ますわ……」
レタリアの魔力が捉えた強烈な違和感。
巨大建造物の裏手、その奥深くから立ち上る気配は、目の前に群がる有象無象のマキナたちとは明らかに異質な存在感を放っていた。
「グレイン! 建物の奥に何かが居ますわ! わたくしは先に向かいます!」
直感的に判断を下したレタリアは、周囲の量産機から放たれる牽制の牽制砲火を意に介さず、一目散に建造物の裏手へと一気に姿を消した。
◆◆◆
「おい、待てレタリア! ……まったく、あのお嬢様は……!」
即座に飛び出していったアーデンの残光を見送りながら、グレインは思わず大きなため息をついた。
「あー、こちらセルディア自治区の自警団である。所属不明の機体群へ告ぐ。ここは中立宙域ではあるが、我がセルディアの領域を侵す危険性がある。直ちに所属と意図を明らかにせよ」
形式上の建前として、広域オープンチャンネルで通信を打つグレイン。
しかし、返答の代わりに返ってきたのは、容赦ないフォトンライフルと誘導ミサイルの大斉射だった。
「……まあ、分かってはいたがな!」
グレインは滑らかな旋回で射線をすり抜けると、手にしたアルシアンを連続して撃ち出した。
放たれた光条が、立ち塞がる2機の頭部と右腕を寸分違わず穿ち抜き、一瞬で戦闘不能へと追い込む。
「各機、自由攻撃開始! 各自、被弾に気をつけろよ!」
群がってくる連中の操縦技術はそれほど高くはない。自警団のメンバーならば問題なく対処できるレベルだ。
――だが、レタリアが感じ取ったという「何か」の存在が引っかかる。目の前の雑魚とは比べ物にならない脅威が潜んでいるとすれば、彼女一人に任せる訳にはいかない。
「アランド、レッタ! ここは任せるぞ! 俺もレタリアの援護に回る!」
指示を出し、リーズのスラスターを吹かして建造物の裏手へ向け急発進しようとした――その瞬間
空間を鋭く穿つ、凄まじい密度の三本の光条がリーズの進行ルートを正確に塞いだ。
「っ……!?」
間一髪の超反射で機体を捻り、直撃を回避するグレイン。冷や汗が頬を伝う。
(この攻撃は……これが新兵器か……!?)
煙幕を押し破り、リーズの目前に立ちふさがったのは――無骨でありながらも極限まで無駄を削ぎ落とした細身のシルエットに、深い緑と不気味な黒のラインが走る、どこか見たことのあるシルエットのマキナだった。
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