悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
アーデンと紺色の重装機――激突した両機の光刃が火花を散らし、互いのエネルギーが爆発的な反発音を上げる。
レタリアは瞬時に敵機の光刃をいなし、間髪入れずに鋭い蹴りを叩き込もうとアーデンの脚部を繰り出した。
――その直後、敵機の足先から金属の摩擦音が響く。装甲を割って突如として伸び出してきたのは、関節の細い不気味な小型の腕部と、その先端に装着された鋭利な実体刃だった。
「そんなところにも腕が付いておりますのっ!?」
思わぬ不意打ち。回避すること自体は不可能ではない。――だが、この最中に強引に体を捻れば体勢を大きく崩し、続く追撃を許してしまう。
(……信じますわよ、ミレア!)
レタリアは腹を括り、蹴りの威力を極限まで高めた。アーデンの右脚が、敵機の足先から伸びる隠し腕と実体刃へ正面から激突する。
強烈な衝撃がコックピットを激しく揺らす。
アーデンの脚部装甲は、敵の実体刃を強引に粉砕し、そのまま隠し腕の関節ごと叩き折ってみせた。
予期せぬ威力の前に、敵機が一瞬だけ硬直する。レタリアはその隙を逃さなかった。
「そこですわッ!」
軸足を一新し、回転の勢いをそのまま乗せた左のローリングソバットを敵機の腰部へ叩きつける。
打撃が炸裂し、アーデン自体も強烈な反動で後方へと弾き飛ばされる。一方、直撃を受けた紺色の重装機は勢いよく宙を舞い、広域の機雷地帯へと一直線に突っ込んでいった。
連続する機雷の大爆発。高熱の爆炎と黒煙が敵機の巨躯を完全に飲み込んでいく。
「や、やりましたの……?」
荒い息を整えながら、レタリアは広域へと再び魔力の感覚を研ぎ澄ませた。
……聞こえる。あの息づかい。先ほどよりも明らかに荒く、小さく、そして弱々しく――しかし確かに、生存の気配を主張していた。
「……まだやる気ですのね!」
レタリアの叫びとほぼ同時に、黒煙を撒き散らしながら紺色の影が跳ね起きてきた。
機雷の連鎖爆発を食らった装甲は随所が破れ、内部装甲が露出している。しかし真に異様だったのはその身構えだった。
先ほど右足から出現した不気味な隠し腕――それと同じような機巧アームが、もう片方の脚部だけでなく、左右の肩部装甲からも生えていたのだ。
「一体どれだけおててが付いておられますの……」
機雷のダメージにより機動の滑らかさは失われ、ぎこちなさが目立つ。しかし、肩と脚から生えた複数の腕がそれぞれフォトンガンや小型ブレードを構え、執拗にアーデンへ襲いかかってきた。
多角的な交差射撃と連続突刺がアーデンを襲う。
レタリアはアーデンを上下左右へ細かく跳躍させ、最小限の挙動で弾幕と刃を回避しつつ、左手のフォトンセイバーで伸びてくるアームを切り飛ばす。
確実にダメージは蓄積しているはずだ。しかし、敵機は異様なまでに食らいついてくる。
「手数を増やせば押し切れるとお思いでして!?」
迫り来る複数の腕をスライド移動で紙一重でかわすと、レタリアはアーデンの右拳を限界まで引き絞った。
出力を拳の一点に集中させ、敵機の胸部装甲へ向けて渾身の正拳突きを叩き込む。
重厚な装甲を歪ませ、敵機を大きく後方へと押し返す。だが、距離を取った敵機を見据えるレタリアの額には、びっしりと汗が浮かんでいた。
(早い……早すぎますわ……)
機体全体の速度もさることながら、こちらの動作に対するレスポンスが異常だった。レタリアがアーデンを操作した瞬間に、まるでそれを察知したかのように回避・防御行動をとってくるのだ。
グレインやイーサン達が使う先読みとは根本的に異なる。もっと感覚的な応答速度。
(まるで……まるで、わたくし自身のような……)
神経を極限まで削り直すような戦いが続き、レタリアの全身に重い疲労感がのしかかる。
敵機は突撃を控え、間合いを保ったままじっとこちらの様子を伺っているように見えた。
――その時。
レタリアの鋭敏な魔力が、横方向からの「敵意の高まり」を捉えた。
「見えていますわよッ!」
視線すら向けず、レタリアは右手のフォトンライフルの砲身を即座に横方向へ向けて撃ち抜いた。
アーデンの目と鼻の先で、巨大な爆風が巻き起こる。
「くっ……機雷……!?」
爆煙が瞬く間に空間を遮蔽する。レタリアは咄嗟に視界を確保しようとセンサーを切り替えたが――煙が晴れたとき、そこには横から迫っていた敵意も、目の前に立ち塞がっていた紺色の重装機の姿も、消え去っていた。
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