悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
煙が晴れていく空間で、レタリアが広範センサーの表示を確認すると、二つの機影が急速に遠ざかっていくのが映し出された。
一つは先ほどまで死闘を繰り広げていた紺色の重装機だろう。
そして――それとは別に、こちらへまっすぐ近づいてくる機影が一つ。
「無事か、レタリア」
通信とともに、グレインのリーズが旋回しながら近づいてきた。
「ええ、妙な相手でしたわ……逃げられてしまいましたけれど」
悔しさを滲ませながら、レタリアは敵機が走り去った闇の彼方を指し示す。
「そうみたいだな。俺がここへ急行する直前、別の不審な機体とすれ違ってな、そっちを追いかけようとしていたところだ」
モニターに映るグレインの表情を見つめ、レタリアが問う。
「センサーの遠方に映っているもう一つの影が、それですの?」
グレインは頷いた。
「ああ。しかもあいつのシルエット、先日のレストフル宙域に現れた例の細身のマキナに見えた。君とやり合っていた重装機をワイヤーで強引に回収し、脱出したようだ」
グレインのセンサーには、細身の機体に引きずられるようにして、紺色のマキナが宙域を離脱していく様子が記録されていた。
「最後に横から機雷を誘爆させて攻撃を仕掛けてきたのも、そのマキナですのね。……あの不埒者どもとこの者たちが繋がっているというお話、正しかったようですわ」
「ああ、連中が体制を立て直して戻ってこないとも限らない。自警団の後続隊が到着するまでは周辺の警戒を優先する。……それにレタリア、君はかなり消耗しているな。少し休むといい」
グレインの指摘に、レタリアは自分が胸を大きく上下させ、激しく息を切らしていることに今さら気づいた。感覚を研ぎ澄ませていた反動が、一気に疲労となって身体に押し寄せてくる。
「そう……ですわね。……後はお任せいたしますわ……。わたくし、少し疲れました……」
レタリアの脳裏にはあの重装機から感じる、不気味と言うよりは焦りを感じさせる粗い息づかいが思い起こされていた。
◆◆◆
グレインたち先発隊の手によって周辺宙域の安全が確保され、航路の妨げとなる浮遊機雷が粗方排除された頃――遠方から4隻の小型艇と、それに護衛された十数機のルード隊が到着した。
「待っていたぞ、イーサン」
グレインが通信を開く。
「随分と派手にやり合ったみたいだな。それも、割とギリギリの戦闘だったようだ」
小型艇から降り立った副団長イーサンの視線が、他のルードに回収されて漂うアランドの脱出ポッドへと向けられる。周辺には、粉々に散らばった敵機の無残な残骸が漂っていた。
「妙な……いえ、とにかく不気味な連中でした。機能停止に追い込んだはずの機体まで、容赦なく自爆させやがりましてね」
回収されたポッドの中から、アランドが説明を付け加える。
「今回の件、どうやら一筋縄ではいかなそうだな」
イーサンの呟きに、グレインも真剣な面持ちで頷いた。
「ここからの現場引き継ぎは俺たちに任せてくれ。フリーランスにも声をかけて、外周の警戒網を強化してある」
「助かる。建造物の内部調査が本番になるが、残されたトラップや自動防衛システムには十分に注意してくれ」
「ああ、心配するな。お前たちはボートを使って先に帰還してくれ」
イーサンは手際よく指示を出し、消耗したグレインたちを小型艇へと誘導していく。
レタリアのアーデンも指示に従い、小型艇へとおそるおそる近づいた。
「これは……一体なんですの?」
「『ボート』と呼ばれている、マキナを長距離輸送するための専用ハンガー艇だ。さあ、アーデンでこいつのフレームに掴まってくれ」
言われるがまま、レタリアは他のルードたちと並んでボートの側面に移動し、頑丈な固定グリップを両腕でしっかりと握りしめた。
一隻のボートにつき、およそ6機ほどのマキナを側面に固定して牽引できるようだ。アランドの脱出ポッドも、途中で脱落しないようボートの中央へ強固に固定された。
「後は頼んだぞ、イーサン」
グレインが後発隊へ声をかけると、小型艇の推進器が青白い光を放ち始める。
ボートに引き取られる形で、傷ついた自警団の一同は、一路セルディアを目指して静かに宙域を離脱していくのだった。
どういうお話が好きですか?
-
キャラクターの日常
-
戦闘
-
政治的な駆け引き
-
技術系
-
主人公の活躍
-
レタリアがかわいい!
-
いや、ミレアがかわいい!
-
他のキャラが良い!
-
その他(自由記入欄欲しい)