悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
「報告を確認させていただきました」
セルディア管理局の会議室。ウィステルム本国軍特務部隊のプリシラ・ハレヴィ中尉が、静かに口を開いた。
テーブルを囲むのは彼女の他に、レタリア、グレイン、そしてミレアの3名だ。
「後続隊によるその後の調査で、件の建造物がアーグリア社の極秘所有物であると確定いたしました」
グレインが腕を組み、重々しい声で補足する。
「メインサーバーのデータはことごとく消去されていましたが、こちらの手で一部の復元に成功しました。それによって確証を得ることができました。……加えて」
ミレアが手元のコンソールを操作し、空間に解析データを展開しながら言葉を継ぐ。
「アーグリアがあの施設でテストを行っていたのは、間違いなく旧エスカド社に関連する技術でした」
その報告を聞き、プリシラは神妙な面持ちで瞳を細めた。
「さらには……『強化人間』の存在も確認された、ということですね?」
「セルディア自警団と直に交戦したパイロットたちが、その強化人間そのものであったかについては、現時点では未だ推測の域を出ません。……ですが、復元したデータログの中には、人体実験と思わしきテストデータと、複数のコードネームが存在していました。『R1』『M5』『C2』……現状で解読・確認できたのはここまでです」
ミレアの発言を受け、プリシラは青白く浮かび上がるホログラムモニターの数値を真剣な眼差しで追う。
「強化人間……」
吐息とともに呟くプリシラ。ミレアは静かに頷き、考察を深めていく。
「先日のレストフル宙域での不法侵入と併せて考えるならば、アーグリアは私たちが回収した旧エスカド社のコア情報を喉から手が出るほど欲している可能性が高い。もちろん、私たちが得たデータは脳波同調システムにまつわる概要が主で、生体強化に関する技術情報は含まれていませんけれど……」
「ええ。ですが向こうがそれを誤認し、技術奪取を目的にステーション間紛争へと発展させてくる可能性も十分に考慮する必要がありますね」
プリシラの言葉に、ミレアが深く頷く。
「ステーション同士の局地紛争に対し、本国軍が安易に介入できないのは周知の事実です。……ですが、仮に『強化人間』の存在が証明できれば、それは本国軍が直接介入する正当な口実となり得ますか?」
嫌味や皮肉ではなく、純粋な状況分析として述べるグレインの問いかけに、プリシラは困ったような苦笑いを浮かべた。
「おっしゃる通りです、グレインさん。非人道的な人体実験によって生み出される強化人間は、国際条約においても厳しく禁止されている非合法なもの。……現代において完全に根絶されたとは言い切れない暗部ですが、本国が動くためには動かぬ『確証』が必要不可欠となります」
プリシラは一度瞳を閉じ、腕を組んで深く思案に暮れた。証拠をどう掴むか、国際的な手続きをどう踏むべきか――大人たちが思惑と懸念を交錯させる中。
「証拠がないとおっしゃるのであれば、わたくしたちが乗り込んで、掴んでくれば宜しいのではなくて?」
ここまで静かに話を聞いていたレタリアが、事もなげに口を開いた。
あまりにも直球で破天荒な提案に、会議室の全員が一瞬ピタリと固まる。
「……その考え、実に素晴らしいですね」
凍りついた空気を切り裂くように、プリシラが柔らかく、けれどどこか楽しげに微笑んだ。
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