悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~!   作:エスカド

148 / 148
147話:わたくしもセルディアのために一肌脱ぎますわ!

 セルディア管理局に併設されたドック。

 

「ふむ……このような装いも、なかなか悪くありませんわね」

 

 ホログラムの姿見を前にレタリアは裾を軽やかにはためかせた。

 いつもの幻想的なダークパープルの髪は輝くような金色に染め上げられ、癖のある毛先も美しくストレートに整えられている。身に纏うのは彼女の好みに合わせた上品な仕立ての服だが、一見すると裕福な宙域を旅する身なりの良い旅行者にしか見えない。

 これまでにない大掛かりな変装に、映る自分を珍しそうに見つめる。

 

「へえ、すごく可愛いじゃないですか」

 

 背後から歩み寄ってきたアデリナが、感嘆の声を上げながらレタリアの服装をまじまじと眺めた。――そして、おもむろにレタリアの脇腹を軽くつまむ。

 

「ひゃっ!? な、何をなさいますのっ!?」

 

 跳ね上がるようにして抗議するレタリアを見て、アデリナはくすくすと楽しそうに笑った。

 

「あはは、ごめんなさい! でも潜入先でどんなハプニングがあるか分からないから、油断して『素』を出しちゃダメですよ?」

 

 もっともらしい理屈を並べてはいるが、その悪戯っぽい表情からして単にからかわれただけだとレタリアは確信した。

 

 そんな賑やかなやり取りの中、ドックの奥からミレアが歩み寄ってくる。

 

「……本当に大丈夫なの? 別に、あなたが行かなくても他の人に任せればいいのよ?」

 

 どこか落ち着かない様子で、ミレアが心配そうに声をかけてきた。

 その表情を見て、レタリアは数日前の会議室でのやり取りを思い返す。

 

 ◆◆◆

 

『乗り込むって……コルーシェに潜入するってこと!?』

 

 レタリアが「直接乗り込んで証拠を掴めばいい」と口にした直後、ミレアは跳ね起きる勢いで声を荒らげた。

 

『そうですわ! わたくしがササッと潜入して、魔――ではなく、まあ、その……証拠を見つけてまいりますわ!』

 

 胸を張るレタリアに対し、ミレアは焦りを隠せない。

 

『ダメよ、危険すぎるわ!』

 

『どうなさったのですミレア、あなたらしくもありませんわね』

 

 珍しく動揺を見せるミレア。その様子を見かねて、グレインが静かに間に入った。

 

『まあ落ち着け、ミレア。レタリアが君にとってどれだけ特別な存在かは分かっている』

 

 グレインの言葉に、ミレアが一瞬だけ言葉を詰まらせる。傍らにいたプリシラも「まあ……」と呟き少し頬を朱に染めた。

 

『この子がセルディアにとって……どれだけ重要なのか、グレインもプリシラ中尉もお分かりでしょう!?』

 

『ああ、分かっているさ。……だが、ここで手をこまねいて事態が悪化するのを待つわけにはいかない。それに、土壇場における彼女の「勘」は、俺たちにとっても一番頼りになる』

 

 グレインの説得に、ミレアは悔しそうに眉をひそめた。

 

『そうですわよ、ミレア。わたくしの身を案じてくださるのは素直にありがたいですが、わたくしもセルディアのために一肌脱ぎますわ!』

 

 毅然と言い放つレタリアの言葉に、ミレアの勢いが徐々に削がれていく。

 

『ミレアさん、私たち本国特務部隊も今回は同行し、コルーシェへと潜入いたします。リスクは十分に承知の上ですが……いかがでしょうか』

 

 プリシラからの後押しもあり、最終的にミレアは深く溜め息をついて折れるしかなかったのだった。

 

 ◆◆◆

 

「ふふ、ミレアは本当に心配性ですわね」

 

 回想から戻ったレタリアは、目の前のミレアへ柔らかく微笑みかけた。

 

「心配するわよ……。向こうで感づかれるわけにはいかないから、せっかく渡したブレスレットの通信だっておいそれと使えないし……。グレインやプリシラさんたちに任せるしかないなんて……」

 

 ミレアはブツブツと小声で溢しながら、小さな可愛らしい包みをレタリアの手へ手渡した。

 

「これ、ちょっとした携帯食よ。手軽に高栄養が摂れるの。あなた、よくお腹を空かせるでしょう?」

 

 これといった特別な機能があるわけではない、ただの携帯食。けれど、それがミレアなりの「お守り」なのだとレタリアには伝わってきた。

 

「……大切にしますわ。ありがとうございます、ミレア」

 

 レタリアが包みをバッグの中に入れると、ドックの奥から足音が近づいてくる。

 

「レタリア、そろそろ出発の時間だ。行くぞ。……ミレアもそう心配するな、必ず良い結果を持ち帰ってきてやるさ」

 

 旅装を整えたグレインに声をかけられ、レタリアは力強く頷いた。

 

「それでは行って参りますわ~!」

 ミレアに手を振るレタリア。

 

「無事に帰ってきなさいよ……」

 

 静かに遠ざかっていくレタリアたちの背中を、ミレアは不安な面持ちで見送り続けるのだった。

どういうお話が好きですか?

  • キャラクターの日常
  • 戦闘
  • 政治的な駆け引き
  • 技術系
  • 主人公の活躍
  • レタリアがかわいい!
  • いや、ミレアがかわいい!
  • 他のキャラが良い!
  • その他(自由記入欄欲しい)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった(作者:ぷに凝)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

 スキルが一人につき一つしかない世界で、小林大翔が引き当てたのは『性転換』。▼ 性別を変えるだけの戦闘向きではない産廃スキル――のはずだった。▼ だが、女性専用装備『魔法少女のドレス』との組み合わせにより、その常識は覆る。▼ ドレスの力で圧倒的な戦闘能力を手に入れた大翔は、正体を隠したまま謎の魔法少女『プリムノヴァ』として活動を開始。▼ 少女の体と魔法少女の…


総合評価:984/評価:6.86/連載:71話/更新日時:2026年08月11日(火) 18:49 小説情報

押し入れの向こうは異世界でした(作者:Brooks)(オリジナル:現代/コメディ)

▼練馬区江古田の古いアパートで一人暮らしをする女子大生・篠原澪は、友達の少ないボッチ気質の二十歳。趣味は彫金とギター。貯金は十万円ほどしかなく、大学、家賃、生活費に追われながら、六畳一間で静かに暮らしていた。▼ある日、小さな地震のあと、部屋の押入れの向こうが異世界の市場につながる。▼幸い、言葉は通じた。澪は恐る恐る異世界へ足を踏み入れ、手元にあった爪切りを売…


総合評価:258/評価:6.8/連載:418話/更新日時:2026年10月09日(金) 20:11 小説情報

【トリッカル】エーリアス転生者総合スレ【もちもちほっぺ大作戦】(作者:lumi27)(原作:トリッカル・もちもちほっぺ大作戦)

気がついたらどこかの次元のエーリアスでもちほっぺになっていた転生者たちの記録▼この作品はフィクションでトリッカル・もちもちほっぺ大作戦の【同人作品】です。▼登場する人物や設定は全て架空のもので、実在するほっぺ・団体・地名・事件などとは一切関係ありません。▼この作品の登場キャラクターは全て人間換算で18歳以上です。▼ネタは某所を参考にしています。▼トリッカル・…


総合評価:1768/評価:8.65/連載:122話/更新日時:2026年10月08日(木) 00:15 小説情報

前世が大魔道士だった俺、宇宙戦艦を魔改造して銀河を成り上がる 〜退役寸前のゴミ艦隊ですが、魔法で動かせば最強です〜(作者:オカノヒカル)(オリジナル:SF/戦記)

魔力がない?▼なら、宇宙に満ちているものを使えばいい。▼撃てない旧式主砲?▼なら、砲身そのものを巨大な魔導杖として使えばいい。▼退役寸前の旧式戦艦?▼使えるものは残して、魔法で組み直せばまだ戦える。▼魔力が枯れゆく世界で生涯を終えた大魔道士レオンは、宇宙戦艦が星々を渡る銀河世界へ転生した。▼そこは恒星間航行も艦載AIも当たり前の、高度な科学文明の世界。▼ただ…


総合評価:286/評価:7.4/連載:42話/更新日時:2026年10月06日(火) 20:13 小説情報

転生したら異世界の宇宙最強の龍でした!〜0から星と生命を作り出して一大文明の支配者になったので現代日本へ帰還します。自分は日本が一番暮らしやすい。〜(作者:電動ガン)(オリジナル:現代/コメディ)

目覚めたら無だった。何も無い。宇宙さえも。自分の身体を見る。銀色の甲殻、長い尻尾これモンスターだ!?よく見ると俺の他にも二頭のモンスターが。ドラゴンだこれ!!▼俺たち三頭の女神龍は宇宙創成の前の世界にいる。俺たちを生み出した主神の指示で世界を作り生命を繁栄させることとなったけど・・・・・・それ何年掛かるの?▼何億年も掛けて生命が宿れる星を何個も作り、失敗し、…


総合評価:2878/評価:7.61/連載:146話/更新日時:2026年09月27日(日) 17:07 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>