悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~! 作:エスカド
セルディア自警団とコルーシェ・アーグリア混成軍が、ついに真正面から激しく衝突した。
一刻前まではどこまでも静寂が支配していた暗黒の宙域は、一変して実弾の曳光弾、高機動ミサイル、そして幾千のフォトンの光条が乱れ飛ぶ壮絶な死闘の戦場へと姿を変えた。
コルーシェ側の主力を担うアーグリアの量産機『グリド』が、鋭い駆動音を響かせながらフォトンライフルを連射してくる。
だが、黒白の愛機『リーズ』を駆るグレインは、その激しい弾幕を最小限の機体制動で難なく回避。すれ違いざまにフォトンライフル『アルシアン』を放った。
収束されたフォトンの光弾はグリドを貫き、宇宙空間で激しく爆散する。
グレインはその爆炎に目もくれず、全周モニターを鋭く警戒しながら、本命である敵の強化人間部隊――『ゴード』の存在する方向へと機体を推し進める。
そこへ、乱戦の隙を突くようにしてコルーシェ自治軍の汎用機3機が迫ってきた。
素早く周囲の戦況を確認する。すでに戦場は入り乱れる乱戦状態へと突入しており、味方機との距離は大きく開いていた。自警団の面々もそれぞれ敵部隊に囲まれ、各地で死闘を繰り広げている最中だ。
『数ではこちらが劣る……! 一刻も早く強化人間の連中を叩きたいところだが……邪魔をするなら容赦はせん!』
グレインは言い放つと、リーズの右腕に握り締められたアルシアンを力強く構え直した。
◆◆◆
一方、コルーシェ軍の側面に鋭く切り込んだセルディア部隊のただ中で、三機の機体が絶妙な連携を見せていた。
アランドの駆るラスタ『エノメイル』、レッタのルードカスタム『バリス』、そしてステシアのラスタ『フロード』。この三機はどうにか互いを見失うことなく、塊となって敵陣の隙間を突き進んでいた。
飛び交うコルーシェ自治軍やアーグリアの激しい砲火を潜り抜けてはいるものの、混乱のさなかでグレインやイーサン、そしてレタリアたち主力メンバーとは完全に分断されてしまっている。
『レッタ、前だ!』
アランドの切迫した叫びが通信に跳ねる。
見れば、レッタの乗るバリスの直前に、牽制射撃をかいくぐった一機のグリドが立ちふさがっていた。
グリドが至近距離から放つマシンガンの豪雨を、レッタは左腕のシールドを巧みに傾けて弾き返し、受け流す。その最小限の動作の隙を突いて、右腕のフォトンライフルをカウンターで叩き込んだ。
正確に放たれたフォトンの閃光が、グリドの構えていたライフルをピンポイントで貫通し破壊。内部エネルギーの激しい誘爆が巻き起こり、グリドの左腕ごと肩口が吹き飛んだ。強烈な衝撃と反動により、敵機は推進力を失って完全に沈黙する。
『今すぐ機体を放棄しろ!』
レッタはそれ以上の追撃を行わず、輝くフォトンセイバーの光刃を敵コックピットの目前でピタリと突き付けた。
数秒の緊迫の後、観念したグリドから小さな駆動音が響き、緊急脱出ポッドが宇宙空間へと射出された。
遠ざかる脱出ポッドを見送るレッタ。
『……レッタ、甘いんじゃないか? 戦場でそんな事をしてたら、いつかこっちが足元を掬われちまうぜ』
通信越しにアランドが少し呆れたような、だが心配そうなトーンで釘を刺す。
『分かってるよ……でも仕方ないだろ』
レッタが困ったように苦笑いを返した、その直後だった。
『レッタさん! アランドさん! 上です、赤いヤツが来ましたよ!!』
ステシアの警告が響き渡る。
見上げれば、頭上の暗闇から、血のように禍々しい赤色に塗られた大型機『ゴード』が2機、凄まじい威圧感を撒き散らしながら迫ってきていた。
◆◆◆
「くっ……敵の数が多すぎますわ……!」
レタリアはアーデンを躍動させ、牽制のフォトンライフルを連射しながら敵陣の渦中を突き進む。
俊敏に回避行動をとる敵機体に対して無理に射撃を当てることはせず、あえて一瞬で懐深くへと潜り込むと、一閃。光り輝くフォトンセイバーで敵機の両腕部を素早く切断し、力強い蹴りを叩き込んで空間へと弾き飛ばした。
『くそっ……! なんだあの機体は……早すぎる……っ!!』
両腕を失い、完全に戦闘不能となった敵パイロットの悲鳴がオープン回線から聞こえてくる。
「あなた方に構っている暇はありませんの!」
レタリアは無力化した敵機に見向きもせず、アーデンをさらに前方へと加速させた。
「あの少女――ロフィではない……けれど、この感覚……彼らこそが、コルーシェの『強化人間』部隊……!」
レタリアの視線の先、漆黒の宇宙空間に立ちはだかったのは、あの赤い大型機『ゴード』だった。
かつて対峙したレイダーが乗っていた機体、そして中立宙域でロフィが駆っていた機体と酷似する重厚なフォルム。
次の瞬間、ゴードの腰部から、強烈な殺気が解き放たれるのをレタリアは察知した。
(――左側へ……!)
瞬時に危険を判断したレタリアは、素早くアーデンを真横へとスライドさせる。
直後、ゴードの腰部から解き放たれたリニアガンの弾丸が、空間を歪めるほどの超高速でアーデンがほんの一瞬前まで存在していた空間を削り取っていった。
間髪入れず、ゴードは左手に保持した3つの砲身を持つ大型フォトンライフルをこちらへ向け、極太の光条を乱射してくる。
「早いですわ……! ですが……この程度でわたくしを止められると思わないことですわ!」
迫り来るフォトンの弾幕を回避しながら、アーデンは超低空の機動でゴードとの間合いを一気に潰す。
右上に振り抜きながらフォトンセイバーを形成し、薙ぎ払う。
同時に、ゴードも左腕に形成した大型フォトンセイバーを力任せに振り下ろしてきた。
漆黒の宇宙に、互いの光刃が激しく衝突し、眩いスパークとプラズマの閃光が撒き散らされた。
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