悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~!   作:エスカド

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170話:考えている暇はありませんわ

 激しくぶつかり合い、漆黒の宙域で火花を散らすアーデンとゴードのフォトンセイバー。

 

 眩いプラズマの光芒が二機の機体を照らし出す。その苛烈な鍔迫り合いが始まったまさにその瞬間、ゴードの腰部に懸架されたリニアガンが、密着距離からアーデンへ向けて照準を合わせていることにレタリアは気づいていた。

 

「やらせませんわよ……!」

 

 レタリアは瞬時にアーデンの胸部装甲を展開し、至近距離から内蔵バルカンを連続掃射。ゴードのカメラセンサーを痛打しながら、脚部スラスターを逆噴射させてリニアガンの射線を回避した。

 

 アーデンから叩き込まれたバルカンを受け、ゴードの胸部装甲が激しく削り取られていく。

 重装甲ゆえに致命傷には至らなかったものの、被弾による強烈なノックバックでゴードの巨躯が大きくバランスを崩した。

 

「あなたも……きっと苦しいのでしょう。わたくしが、あなたに対して出来ることは……これです!」

 

 レタリアは寸分の迷いもなく姿勢を崩したゴードの足元へとアーデンを潜り込ませる。ゴードは迎撃のため、両腕のフォトンセイバーを振りかざして振り下ろしてきた。

 

 アーデンはその光刃を正面から受け止める動作を見せると同時に、機体を上部へと大胆に傾け、鋭く右脚を蹴り上げた。

 

 アーデンの脚部装甲に内蔵された実体刃が、ゴードの振り下ろされた左腕を関節から切り飛ばす。

 レタリアは休むことなく、左手に保持したフォトンライフルをゴードの胴体へ連続で叩き込んだ。

 

 連射されるフォトンの高エネルギー弾。

 受け止めたゴードはなおも装甲で持ちこたえていたが、機体内部に蓄積されたダメージはもはや限界に達していた。

 

 著しく動作が鈍りながらも、ゴードは残された右腕のフォトンセイバーを再起動する。だが、レタリアの操作するアーデンはすでにゴードの死角となる背面へと回り込んでいた。

 

 光る刃が一閃。

 

 腰部のリニアガンと右腕部をまとめて一瞬で切り飛ばされ、すべての攻撃能力を失ったゴード。だが、パイロットはなおも無言のまま、機体そのものをアーデンへ向けて突進させてきた。

 

 レタリアの魔力は、ゴードの狭いコックピットの中に存在するパイロットの生命反応を感じ取っていた。……しかし、その肌で感じ取った感覚は、苦痛も恐怖もない、完全な『無』だった。

 

「……ならば、せめて……!」

 

 レタリアの一閃が、ゴードを縦に真っ二つへと切り裂いた。

 コアを正確に断たれたゴードは、パイロットを巻き込む大きな爆散を起こすこともなく、静かにその機能を停止し沈黙した。

 

「考えている暇はありませんわ、行かなければ……」

 レタリアはアーデンを戦場の奥へと進ませた。

 

 ◆◆◆

 

 一方、アランドたち三機が立ち向かう戦場では、残る2機のゴードから放たれる圧倒的な火力が暗闇を焼き尽くしていた。

 

 1機は両腕の三連フォトンライフルによる猛烈な連射。もう1機は両肩に備え付けられた巨大なフォトンキャノンから極太の光条を交互に放ってくる。

 

『くそっ……なんて火力なんだ……!』

 

 アランドが機体を激しくスライドさせ、弾幕をかいくぐりながら叫ぶ。

 

 迫り来るフォトンキャノンの圧倒的な光線に対し、レッタはシールドを傾けて斜めに受け流す。

 

『俺が奴らの射線を全部引き付ける! 二人がかりで確実に一機ずつ仕留めてくれ!』

 

 レッタのバリスがシールドを前に構え、前に躍り出た。2機のゴードはその突出に反応し、火力を一斉にバリスへと集中させ始める。

 

『今だ!』

 

 レッタの決死の合図に呼応するように、アランドとステシアのラスタが同時に動いた。

 ステシアの持つアルシアンによる正確な狙撃と、アランドの肩部レールキャノンによる高初速実体弾の同時斉射が、狙いを定めた右側の1機へ集中的に叩き込まれた。

 

 バリスの足止めに気を取られていたゴードの頭部にレールキャノンの強烈な一撃が直撃し、続けてアルシアンの高エネルギー光弾が腹部の装甲を破壊して炸裂した。

 

『よし、いけますよ!』

 

 敵1機の戦闘能力を大幅に奪うことに成功した。

 

 だが、2機分の集中砲火を一身に受け続けたレッタのバリスも無傷では済まなかった。

 上半身こそ辛うじて原型を保っているものの、直撃を受けた左脚はひざ下から吹き飛び、黒煙を吹き上げている。

 

『レッタ、もう十分だ! 後は俺たちに任せて下がれ!』

 

 アランドが通信越しに叫ぶ。

 

『いや、まだだ……! ここで退くわけにはいかない! こいつらだけでもなんとかしないと……!』

 

 レッタは痛む操縦桿を強く握り直し、ゴードの猛攻をシールドで受け止め続けた。

 

『レッタさんを、これ以上やらせるわけにはいきません!!』

 

 ステシアが叫び、機体を最高速で突進させる。

 

『アランドさん! 私に合わせて援護を!』

 

『おい、ステシア! ……分かったよ!』

 

 アランドはステシアの背中を追うようにフォトンライフルとレールキャノンを同時に発射。先ほど損傷を与えたゴードの足を止めるべく援護射撃を叩き込む。

 

 ゴードが咄嗟に回避行動をとったその瞬間、激しい回避運動の隙を突いてステシアの『フロード』が潜り込んだ。

 

『やああああっ!!』

 

 ステシアの叫びと共に、左腕に展開した光輝くフォトンセイバーがゴードの損傷した腹部へ深く深く突き刺さった。

 

『ステシア! 後ろだ、逃げろ!!』

 

 アランドの声が響く。

 無傷だったもう1機のゴードが、間近で静止したステシアのラスタへ向けて三連フォトンライフルの銃口を向けた。

 

『やらせないッ!!』

 

 敵の死角から、ボロボロになったレッタのバリスが強引に割り込んだ。

 掲げたシールドで至近距離からのフォトンライフルを強引に受け止める。正面から高威力のフォトン弾を連続で受け止めたシールドは融解し、そのままバリスの右腕ごと吹き飛ばした。

 

『まだだ……! まだ終わってないぞ!』

 

 バリスは残された左腕に保持したマシンガンを掲げ、ゴードの頭部とセンサー類へ向けて至近距離から弾丸を撃ち込み続けた。

 

 激しい弾丸の雨を浴びながらも、堅牢な装甲を誇るゴードは意に介さず、バリスを破砕するための次弾をチャージし始める。

 

 だが、そのゴードの胴体が内側から弾け飛ぶように激しく炸裂した。

 

『無茶しやがって……!』

 

 間一髪で追いついたアランドのレールキャノンが、ゴードの背後から打ち抜いていたのだ。

 

『終わりだッ!!』

 

 レールキャノンの直撃と同時に、アランドが放った腕部グレネードがゴードの胸部に着弾。レッタのマシンガンによって集中的に装甲が薄くなっていた開口部から爆炎が内部へとなだれ込み、ゴードは凄まじい大爆発と共に宇宙空間へ散っていった。

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