悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~!   作:エスカド

173 / 174
172話:立ちふさがりますのね!

『敵機接近っ!!』

 

 アランドの警告が通信に鋭く響き渡った。

 

 直後、極太のフォトンの光条がステシア機のすぐ隣の空間を削り取るように通り抜けていく。

 

『あれは……アクイタス!!』

 

 レッタの緊迫した叫びと同時に、散り散りになる爆炎を突き破って、強化人間マレイの操る緑の大型機『アクイタス』が三機の目の前に牙を剥いた。

 

『ゴードをやったみたいだな。だが、図に乗るなよ雑魚ども……お前らの命もここまでだ!』

 

 マレイは凶悪な声と共に、右腕に懸架された巨大なクローを展開して身構えた。

 

『レッタ! お前の機体じゃもう無理だ、下がれ!!』

 

 アランドが遮るように前に出る。

 

『くそっ……分かった! 二人とも、絶対に死ぬなよ!!』

 

 足腰を大破したバリスを駆るレッタは、足手まといになることを悟り即座に後方へ後退。

 マレイの追撃を阻止すべく、ステシアがアルシアンで牽制射撃を放つが、アクイタスは巨躯を感じさせない俊敏さでそれを難なく回避した。

 

 この場に残されたのは、アクイタスと、アランド、ステシアの2機のラスタ。

 

 間髪入れずにアランドとステシアがフォトンライフルと肩部レールキャノンを連射するが、アクイタスは曲線を描いて回避し続ける。

 

『赤いヤツといい、この緑のヤツといい……このデカさでどうしてこれほど速いんだ……!?』

 

 互いに激しい射撃戦を繰り広げるものの、アランドもステシアもアクイタスの圧倒的な弾幕を回避し、防ぐだけで手一杯だった。

 

『どうしたぁ!? セルディアの自警団の主力ってのはその程度かよ!!』

 

 マレイが挑発しながら、左手のクローからステシア機へ向けてフォトンマシンガンの雨を降り注がせる。

 

『まだ……負けませんッ!!』

 

 ステシアはシールドを掲げて必死に耐える。弾丸の大半はシールドが弾き返したものの、受けきれなかった弾数が足を削り、肩の装甲を鋭く削り取った。

 

『やらせるかよ!!』

 

 アランドが超低空から一気に距離を詰め、右腕の大型フォトンセイバーを振り下ろす。

 

 しかし、アクイタスはステシア機への牽制射撃を維持したまま、首を傾げるような最小限の制動でアランドの一閃をかわした。

 

『遅いな! そんな生ぬるい攻撃で俺を墜とせると思うなよ!』

 

 フォトンマシンガンを止め、回避のバックブーストから一転、前進運動へ切り替えたアクイタスが右腕のクローを力任せに振るう。

 

 アランド機は寸前で回避行動をとったものの、鋭利なクローの爪先が左肩部の大型レールキャノンを激しく切り裂いた。

 

『くそっ……!!』

 

 アランドは即座に誘爆寸前のレールキャノンを切り離してパージ。爆散するレールキャノンの衝撃波に弾かれながらも距離を取った。

 

『アランドさんっ!!』

 

『問題ない、装甲を少し持っていかれただけだ!』

 

 アランドは瞬時に体制を立て直すと、通信越しに強く叫んだ。

 

『二人がかりで仕掛けるぞ! 死ぬなよステシア!!』

 

『はいっ!!』

 

 2機のラスタが同時にスラスターを吹き上げ、フォトンセイバーを交差させてアクイタスへ同時に襲いかかった。

 

 交差する刃、弾け飛ぶ閃光。ラスタ2機による絶え間ない連続攻撃を、アクイタスは超機動で回避し、左腕のフォトンシールドで受け流しながら、クローとフォトンマシンガンのカウンターで苛烈に反撃する。

 2対1の数的な有利でありながら、戦況は明確にアクイタスが圧倒していた。

 

 重苦しい衝撃音が響き、アクイタスの力強い蹴りがステシア機のシールドを直撃。その強烈な運動エネルギーにより、ステシアのラスタは遥か後方へと弾き飛ばされた。

 

『きゃあああっ!!』

 

『ちっ、意外としつこい奴らだ……! くそっ……頭が痛みやがる……!』

 

 マレイはコックピットの中で額を押さえ、激しい頭痛に苦々しく毒づいた。

 

『強い……なんて強さなの……!』

 

 弾き飛ばされたステシアは、荒い息吐きながら肩を揺らした。

 

『いや……時間を稼ぐにはこれで十分だ』

 

 アランドは射撃でマレイの意識を惹きつけながら、緩やかに後方へと後退していく。

 

『本当は前に機体を壊された貸しをここで返してやりたかったが……後は頼みます!』

 

 アランドの言葉と同時に、暗闇を破って一機の黒白のマキナが前に躍り出た。

 

『ああ、任せておけ』

 

 声の主は――自警団長、グレインの乗る『リーズ』だった。

 

 ◆◆◆

 

「……っ!?」

 

 愛機アーデンを操縦するレタリアの胸を、突如として強いざわめきと気配が貫いた。

 

『な、なんだあれは……!?』

 

『くそっ……脱出装置起動!』

 

 前方宙域から、自警団員たちの切迫した通信が途切れ途切れに聞こえてくる。

 遠方の視界で、味方機の爆風が幾つも立ち上がり、それに混ざって空間を縦横無尽に切り裂く巨大な光の刃が目撃できた。

 

「みなさま、ご無事ですの!?」

 

 レタリアはアーデンの通信機越しに、撃破された自警団員たちへ向けて必死に問いかけた。

 

『お、お嬢様か……! こっちのポッドは生きている、案ずるな。それより……コイツはヤバすぎる! アンタに任せるしかなさそうだ……!』

 

『すまん……足を引っ張った……!』

 

 脱出ポッドで離脱していく団員たちの反応を確認し、レタリアは安堵の息を漏らした。

 だが、その安堵を一瞬で塗りつぶすほど強烈な気配が、爆煙を割って姿を現した。

 

 青緑色の重厚な装甲を纏ったマキナ。

 現在のフルアーマー改修が施されたアーデンとほぼ同等の体躯を持ち、ゴードやアクイタスに比べると一回り小柄であるものの、全身に過剰なまでの高出力兵装が盛り込まれていることが一目で見て取れた。

 そして、その機体のシルエットは追加装甲によって大きく変貌を遂げていたが、露出した頭部形状や腿のフレームには、明確な見覚えがあった。

 

「あれは何度も見たあの機体……!立ちふさがりますのね!」

 

 レストフル宙域で初めて姿を見せ、コルーシェでも見ていた、あの細身のマキナに間違いなかった。

 

『レタリア・アーデニアム……! あなたという存在が、フィンドレーの妨げになるのよ!!』

 

 スピーカー越しに叩きつけられたその声は――間違いなく、キャロルのものであった。

どのキャラクターが好きですか?

  • レタリア
  • ミレア
  • グレイン
  • ステシア
  • ソラ
  • メリー
  • イーサン
  • レッタ
  • アランド
  • ゼイン
  • ファル
  • レストフル
  • 上記以外
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。