悪役令嬢の私が追放された先の世界で機械人形に乗って無双しますわ~!   作:エスカド

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81話:招かれざる来訪者ですの?

「いやあ、わざわざ出迎えありがとうございます、ミレア主任、スティーブさん」

 

 シンセ・フィブラ社セルディア支部のエントランスホールに、快活な声が響いた。

 声をかけてきたのは、見事な金髪に、仕立ての良いスーツが映える恰幅の良い男だ。年齢は四十代半ばといったところで、ミレアよりはかなり年上だが、ベテランのスティーブよりは若い。

 

「よくお越しくださいました、ペルダ支部主任。ショーン・ヘンリケスさん」

 

 ミレアが差し出した手を、ショーンは人当たりの良い笑みを浮かべて力強く握り返す。

 

「久しぶりだね、ショーンさん。相変わらず忙しそうだ」

 

「スティーブさん! お久しぶりです。お元気そうで何より」

 

 旧知の仲であるスティーブとも固い握手を交わし、ショーンは満面の笑みを浮かべた。その温和な佇まいは、一見すると「気の良い人物」そのものに見える。

 

「さあ、紹介しよう。我がペルダ支部から連れてきた、期待の若手だ。研究員兼、専属テストパイロットを務めてもらっている、リッテ・フォン君だよ」

 

 ショーンの傍らに一歩進み出たのは、まだ十代後半とおぼしき、どこか畏まった佇まいをする青髪の少女だった。彼女はミレアとスティーブに向かって正確な角度で一礼し、それぞれと淡々と握手を交わす。

 

「お会いできて光栄です。リッテ・フォンです」

 

(研究員と、テストパイロットを兼任……?)

 

 どこか事務的で硬い口調の少女に対し、ミレアは内心で少なからぬ驚きを覚えていた。研究者でありながら、自らコックピットに乗り込んで限界値を探るパイロットなど、そうそういるものではない。

 

「研究員とパイロットを、彼女一人で兼任されているんですか?」

 

「ええ。ウチの将来有望株ですよ。例の……あなたたちに貸し出した装備の初期テストも、すべて彼女が担当していたんですよ」

 

(なるほど……手の内を見せて牽制してきた、というわけね)

 

 ミレアは思考を表情には出さずに微笑んだ。

「素晴らしい人材ですね。――では、長旅でお疲れでしょう。案内いたしますわ」

 

 二人の来訪者を促し、ミレアは管理局エリア内へと足を進めた。

 

 ◆

 

 その後、一行はセルディアの管理局への挨拶、そして今回の件を表向き処理した自警団のグレインたちとの短い面会を終えた。グレインはいつも通りの「頼れる自警団隊長」として表面上の書類手続きに不備がないことをショーンたちに印象付けてくれた。

 

 そして現在。

 四人は、最も機密性の高いセルディア支部の第1特別研究室へと席を移していた。

 部屋を包むのは、ホログラムディスプレイの淡い光と、どこか張り詰めた空気。

 

「ところで――ミレア主任。さっそくですが、本題に入らせていただいても?」

 

 ショーンがソファに深く腰掛け、手元のお茶に目を落としながら笑顔で切り出した。

「ペルダ支部に送られてきたデータを拝見しました。……『グラーヴ・アークス』。あの重兵器についてです」

 

(……きたわね)

 

 ミレアは背筋を伸ばし、内心の警戒レベルを最大まで引き上げる。

 

「はい。あのデータが、機動兵器『レストフル』に対して実戦投入されたグラーヴ・アークスのものです。私たちも解析結果には驚きました。ペルダ支部の試作兵器は、私たちの想像を絶するポテンシャルを秘めていたのですね」

 

 ミレアはあらかじめ用意していた、模範解答をスラスラと告げた。相手の技術を称賛し、こちらの落ち度を濁す大人の対応。

 ショーンの顔から笑みは崩れない。しかし、その細められた目は、全く笑っていないように見えた。

 

「ええ、とても良いデータです。技術者として、これほど誇らしい数値はありません」

 

 ショーンはデータパッドを空間にスワイプし、あの戦闘でグラーヴ・アークスが叩き出した、異常な出力スパイクのグラフを空中へと展開した。

 

「アレの限界スペックと耐久値の理論上マージンは、スティーブさんを通してミレア主任にも事前にすべてお伝えしてあったはずだ」

 

 そこでショーンは言葉を切り、間を置いた。

 

「――大きく超えているんですよ。あの兵器が持つ、本来の出力をね」

 

 部屋の温度が一段階下がったような錯覚。

 ショーンの背後に控えるリッテの表情が、わずかに硬くなったのをミレアは見逃さなかった。

 

 ある程度想定はしている。ミレアは切り返した。

 

「それは、私たちも確認しています。……現段階では、パイロットの極めて特異な戦闘技量、および、あの瞬間における機体との適合率が、我々の想定を遥かに凌駕していたためである、と分析していますわ」

 

 少々苦しい言い訳であることは承知だった、本来の性能を凌駕した結果。

 試作兵器では起こりえない事ではない、特殊な状況を加味すれば十分ありうる、一先ずそれで納得してもらいたかった。

 

 ショーンは「なるほど、なるほど」と深く頷き、ふむ、と顎を撫でた。

 しかし、核心を突く言葉を投げかけてくる。

 

「パイロットの技量、ですか。……であれば、なおさら興味がありますね。ミレア主任、その奇跡を起こした素晴らしいパイロットの方に、ぜひ直接お会いしたいのですが……。もちろん、彼女が乗っているというその機体も、一緒に見せていただけるのでしょう?」

 

(やっぱり、そこが狙いか……)

 

 ミレアは一拍、短く息を吐き、静かに視線を上げた。

 

「……分かりました。今、こちらへお呼びしましょう」

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