どうも。今日も今日とてお庭いじりに精を出している〈
今日は私が木造アパートに来てから、初めての日曜日です。つまるところ、今日の私は〈終末機構〉ではなく〈週末機構〉なのです、ふふん。上手いことを言えたので私は胸を張りました。
さて。そんなこんなで週末専用フォームの私ですが、なんとお庭いじりのためにとってもつばが大きな麦わら帽子を被っています!
なんとなんと、〈
ちなみに。ここで記されている
何を隠そう、〈
一体一体が小さいからか、大きいものに憧れがあるのでしょうね。それ故に私へ贈った麦わら帽子にもまた、巨大なつばが
そんなものを貰ってしまえば、当然私もご機嫌になるというものでしょう。そういった
何はともあれ、草むしりをしないことには始まりませんからね。よっぽど根深いのか、それともこの木造アパートの土がおかしいのか。引っこ抜いても引っこ抜いても翌日にはすくすく育っていやがるのです。
いっときは〈
……と。私が最先端かつ最高性能の
「あれっ、今日も草むしりしてるの? 毎日毎日よくやるわね──私なんて、三日で速攻諦めたのに!」
やや高めかつ気が強いことを隠そうともしない声色。この木造アパートにおいてそんな声音を発することのできる方は、たったの一人しかいませんでした。
私は確信を抱きつつも、しかし振り返ってその姿を捉えることにしました。視線の先には──やはり勝気そうな少女。
木造アパートいちのしっかり者。
「おはようございます、小槌さん。今日は日曜日だというのに、随分と朝早いんですね」
「んー……本当はもう少し寝てるつもりだったんだけどね。ほら、八咫さんが……」
「……あの人、私以外の部屋にも入り浸っているんですか?」
「うん、そうなのよ。多分マキナの部屋にはまだ歯ブラシとコップしかないだろうけど、私の部屋には八咫さん用のシャンプーとリンスと、あとは化粧水に乳液、保湿液に顔パック、それから羽毛布団に──」
その後もつらつらと語られる八咫さんの
あの人まさか、この木造アパートの全ての部屋でそんなことをしているわけじゃないですよね? そんなことしてるから木造アパートを改修するお金がなくなるんですよ。
とか、そんな感じで天衣無縫の擬人化こと八咫さんに対して内心毒付いていたところで。気付いた時には、私の隣に小槌さんがしゃがみ込んでいました。
「軍手の控えってある? 予定もないのに早起きしちゃって暇だし、草むしり手伝うわよ」
「えっ、いいんですか? とっても助かります、ありがとうございます。それじゃあ……よいしょ。これをどうぞ」
私はありがたい申し出に対して首肯で返しつつ、
が、しかし。それを受け取った小槌さんは、なんだかもの凄い表情をしていました。その視線は私の両手にたっぷり注がれています。
「ちょっと、マキナ……あんたなんで軍手を付けてないのよ。庭をいじるときは軍手をしなきゃ! 何かあったら怪我しちゃうわよ?」
「ああ、そういうことですか。いえ、私ってアンドロイドの最終系なので。そんじょそこらの雑草程度では私の人工タンパク質に傷を付けることはできません。安心してください」
「……まあ、確かにそれもそうね。言われなきゃ気付かれないくらいに人間に近い見た目だけど、それならまあ、私から言うことは何もないわ」
小さくため息をつきながら、私の一部だった軍手を装着する小槌さん。なんだかんだで飲み込みの早い人なのでした。
それから私たちは、雑草という雑草を終末に導きました。いやあしかし、一人でやるのと二人でやるのとでは、作業効率がまるで違いますね。しかも、会話も弾むのでいいことづくめです。
小槌さんは本当に面倒見のいい方です。木造アパートに引っ越してきたばかりの私に、色々な生活のコツを教えてくださいましたから。
小槌さんの体格は私とほとんど合致しているので、もう着なくなった(と本人は言っていましたが、実のところそれが真実かは分からない)服をくれたりもしました。
おかげで私は、
昨日なんて、手料理を作って持ってきてくれましたからね。本人は「作りすぎちゃっただけで、別にあんたのために作ったわけじゃないんだからね」と言いながらポトフをお裾分けしてくれました。
……明らかに一口も食べられていなかったので、私のために作ってくれたのだろうことは容易に推測できましたけど。
何というか、やはりこの木造アパート、色々と古風です。小槌さんの
と、そんな感じで。小槌さんの秘められた(かは怪しいですが)優しさについて考え、心をほっこりさせていた所で。
突如として、私の右手に
「……えっと、小槌さん。一つ質問があるのですけど、構いませんか?」
「ん? ええ、何でも聞いて。私に答えられることなら答えるわよ」
「ありがとうございます。それじゃあ思い切ってお聞きするのですが──このお庭って、
そう言いながら、私は右手の掌を小槌さんに見せてみることにしました。すると彼女は「げっ……」と声を漏らしつつ、とっても嫌そうな表情を浮かべました。
そうなるのも致し方ないことではあると思います。
だって、私の掌には──
「……それ、怪我とかはしてないわけ? とは言っても、マキナなら全然へっちゃらなんだろうけど……、というか、なんでそんなよく分かんない奴がここにいるのよ」
「私にも分かりません。いやあしかし、たった今検索しましたけれど、こんな虫はどの
えいっ。私は
すると、虫たちは吹っ飛ばされた直後にも関わらず、即座に復帰して私目掛けて飛んできました。しかも、五匹全てが。
流石にこれは異常です。
私は虫から恨みを買うような真似をしたことはありませんからね。
しかし、どうしたものでしょうか。私だから無傷で済んでいますけれど、あんな電流を喰らえば普通の人間は即座に
うーん……まあ私が叩き潰すのが最善なのでしょうが、しかし私は力加減が下手っぴです。虫を叩いた衝撃でお庭が丸ごと吹っ飛びかねませんし──とか、そんなことでうんうんと頭を悩ませていたところで。
小槌さんは即座に行動を開始していました。
「拝借致す、〈
直後、小槌さんの右手に握られるようにして現れた、
というか。
私に激突したハンマーがひしゃげてしまって凄い顔をしていた『神降し』の少女って、小槌さんのことですから。
……なんでこの人、私と仲良くしてくれてるんでしょうか? とっても優しい人なんでしょう、きっと。ありがたいことです。
そんな彼女の持つ力の一つ、〈
ですから、単純な分扱いは難しいです。願い過ぎてしまえば破滅をもたらす破壊兵器となってしまいますし、願わな過ぎればそもそもハンマーを振り回すことすらできません。
しかし流石の『神降し』、その辺りの制御は完璧なようで。小槌さんの振り回したハンマーは見事五匹の虫を叩き潰した上、お庭には一切の被害をもたらしませんでした。
「ふうっ……なんであんなキモい虫がうじゃうじゃいるのよ! というかマキナ、大丈夫? 怪我とかしてない?」
「ええ、大丈夫ですよ小槌さん──ところでああいう虫って、その辺にいるものなんでしょうか……?」
「あんなのがそこら中にいるわけないでしょ……。とりあえず、一緒に殺虫剤でも買いに行きましょうか。あんなのほったらかしてたら、この木造アパートの評判がさらに悪くなっちゃうもの!」
そんなことを言いながら両の拳をぐっと握り込み、ふんすと鼻息を荒くする小槌さん。それを見た私は、何だかとっても微笑ましくなってしまって、くすりと笑いをこぼしてしまいました。
小槌さんはそんな私の様子を受けて、ひっそりと顔を紅く染めていましたが……、まあ、わざわざ指摘するのも無粋ですからね。私は気遣いのできるアンドロイドなのです。ふふん。
……思えば、誰かと一緒にお出かけするのは初めてです。
うふふ。
とっても楽しみです。
感想や評価などいただけると大変嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたします。