TS転生アンドロイドはありふれた日常を送りたい   作:異音

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#4 終末させちゃいます

 

 

 どうも。お庭に湧いたよく分からない虫を終末に導いています、〈MA-Ⅺ[n/a](終末機構)〉──こと、機織マキナです。

 

 ついさっき小槌さんとホームセンターに赴いて購入した「どんな虫でも確実にぶっ殺します薬」は、例の変な虫には効きませんでした。大層な名前のくせに情けない奴です。そのうち訴えに行きますからね、ええ。

 

 ……というのは冗談です。いや、例の確殺薬(「どんな虫でも確実にぶっ殺します薬」の略です)なのですが、どうやら本当に強い薬のようで。

 

 あえて〈MA-Ⅱ[kill](殺戮機構)〉姉様風に言うのであれば、確かに例のよく分からない虫こそ殺(・)戮(・)できなかったものの、それ以外の普通の虫は殺(・)戮(・)できていましたから。

 

 つまるところ。

 どうやらあの変な虫、普通の虫ではないようです。どころか虫かどうかも怪しいです。何せ無限湧きですからね、ゲームなら喜ばれるでしょうが、現実はゲームではないので。

 

 そりゃあ普通の虫なわけないですよね。普通の虫は機械(ひと)の機体(ボディ)に噛み付いて電気を流したりしません。あと、殺(・)戮(・)するたびに数を増やして帰ってきたりしません。

 

 今や私のお庭は、あの妙ちくりんな虫たちの巣窟(すみか)です。しくしく、ひぃん。私のカメラアイから涙っぽいのが流れました。

 

「──と、そんな感じです。八咫さん、こういう場合ってどうすればいいんでしょうか?」

 

「……いや、どうするっつってもな。んだよその虫、気色悪いにも程があるだろ。根絶だ根絶、アタシの城に虫は必要ねーよ」

 

「ですよね、そういう言葉を待っていました。腕が鳴ります、胸が躍ります。よぉし、あんちくしょう共に思い知らせてやりますよ、私の土地に手を出したらどうなるかを」

 

「さらっとアタシの土地を奪ってんじゃねえ。いかにマキナといえど、出るとこ出るぞ。ほら、手とか」

 

「そうですか。私は出るとこ出てないですけどね。ドラム缶みたいに起伏のない体型なのです」

 

 この後、ゲンコツを喰らいました。

 とっても痛かったです。

 なんで。

 

 


 

 

 十分後。

 私と神楽坂ミコト、そして小槌さんはお庭へと集合し、「変な虫対策本部」を結成していました。

 

 目標、変な虫の根絶。木造アパートのお庭がどうこうではなくて、こんな奴が現代日本にいること自体が間違っていますからね。

 

「へ、変な虫対策本部……。マキナ、この名前ってもっとどうにかならなかったのか?」

 

「何ですか、文句ありますか。あるというなら相手になりますよ。あの変な虫よりも先に、あなたの方をけちょんけちょんにしてやりますから」

 

「そうよミコト。いいじゃない『変な虫対策本部』、可愛げに溢れてて。ごちゃごちゃ言ってるとまずはあんたからやっちゃうんだからね」

 

「小槌お前、マキナに甘すぎるだろ……」

 

 私の呼び名の名付け親がぶつくさと文句を垂れていますが、決まりは決まりです。変な虫対策本部の部長である私は絶対的な権力を有しているのですから、逆らうことは許しませんよ。

 

 腰に手を当てて頰を膨らませ、漫画的表現さながらにぷんすこと怒ってみせる私。頭の上には怒っている時に出る煙みたいなエフェクトを、左目の上辺りにはいわゆる怒筋──怒りマークを完備。

 

 するとどうでしょう。神楽坂ミコトは堪えきれずといった風に吹き出し、小槌さんは私の機体(ボディ)を愛しむかのように優しく撫でてくれました。

 

 ふふん。ふふふん。

 最終機体たる私の前では、人間などまさしく骨抜きなのです。かかってきなさいペットロボット、お前などより私の方がよっぽど人間と仲良くやれるぞ。

 

「……撫でられて悪い気はしませんけれど、しかし今はこんなことをしている場合ではありません。さっさと駆除に取り掛かりますよ、二人とも」

 

「くっ、ふふっ……はあ、笑った! んじゃまあ、さっさと駆除しちまおうぜ。当然だけど、庭は壊さないように!」

 

「そうね、さっさと終わらせちゃいましょう。マキナの夜ご飯を作ってあげ──じゃなくて、作り過ぎたご飯をお裾分けしに行かなきゃいけないし」

 

「……小槌さん。流石に私でももう気付いていますから、今更取り繕わなくてもいいんですよ? というか毎日『作り過ぎちゃったから』は無理があります」

 

「しょうがないじゃない。私って目分量が下手くそなのよ、だから毎日作り過ぎちゃうの」

 

「〈過剰契約(うちでのこづち)〉をばっちり扱える奴がそんなこと言ったって通用するわけねぇだろ」

 

 瞬間、隣の男をぎ(・)ろ(・)り(・)と睨む小槌さん。これ以上刺激してはまずいと判断したのか、神楽坂ミコトは下手っぴな口笛を吹いて誤魔化すことにしたようです。

 

 ……さて。

 おふざけは程々にしておいて、そろそろ本題に入らなければなりませんね。だって、今も私たちの目の前には変な虫たちが犇めいているのですから。

 

 私たちは三人揃って啖呵を切り、それぞれの獲物を取り出しました。

 

「来い、〈断理神話(とつかのつるぎ)〉!」

 

「拝借致す、〈過剰契約(うちでのこづち)〉!」

 

「虐殺を享受しろ……く、〈クサカリーパー〉!」

 

 二人に続いて私がそう叫んだ瞬間、二人とも思わずといった風に吹き出しちゃいました。

 

 う、うう、うるさいですね。分かってますよ、分かってますとも。私だって「もうちょっとちゃんとした銘を刻んでおくべきだったかな」と思っています。

 

 いや、違くて。私は別にいいんですけど、私の核(コア)である成(・)人(・)男(・)性(・)の(・)部(・)分(・)がとてつもなく恥ずかしがっていてですね。おかげで私の機体(ボディ)はオーバーヒート寸前です。

 

「う、うぅ……! ああもうっ、ぼさっとしていたら私が全部終末させちゃいますから! 一番終末させた数が少ない人には罰ゲームですからっ!」

 

「なっ!? ちょっとマキナ、それはいくら何でも……!」

 

「俺たちに不利すぎるだろ、なあ!?」

 

「知ったこっちゃありません! 私のネーミングセンスを笑った自分たちを恨んでください! 行きますよ〈クサカリーパー〉、あの二人に目にもの見せてやるのです!!」

 

 ああ、恥ずかしい。それでいて、結局締まらない。

 私ってこんなに子供っぽかったのでしたっけ。〈MA-Ⅺ[n/a](終末機構)〉が聞いて呆れます。

 

 あの頃の格好良かった私は何処へ。

 よよよ。カメラアイからはらりと雫がこぼれました。

 

 






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