転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第4章ー26

 『こちらが試験会場となりまーす!!』

 

 案内人の明るい声が響き渡り、列はその場で止まった。

 

 そして――。

 

 自分が抱いていた不安は、いい意味で裏切られることになる。

 途中で迷うことも、トラブルに巻き込まれることもなく、俺達は本当に“普通に”試験会場へと辿り着いていた。

 

 ……流石に考えすぎだったか。

 

 「取り越し苦労だったな」

 

 胸の奥に溜まっていた緊張が、少しだけ緩む。これでようやく試験に集中できそうだ。そう思ったのも束の間――。

 

 「……試験会場って、ここでか?」

 

 「ここ、ただの野原だよな?」

 

 「俺てっきり、物凄いデカい建物の中でやるもんだと思ってたわ」

 

 「嘘でしょ……私達、なんか試されてない?」

 

 周囲から次々と困惑の声が上がり始める。

 

 俺も改めて周囲を見渡し、言葉を失った。

 

 案内人が示した“試験会場”は、建物ひとつ存在しない、どこまでも広がる草原だった。整地されているわけでもなく、特別な設備がある様子もない。ただ、風に揺れる草と、広い空があるだけだ。

 

 ……これは流石に怪しい。

 

 試験会場と呼ぶには、あまりにも何もなさすぎる。

 まさかとは思うが、学園側が俺達を騙している可能性も、微レ存ながら浮かんでくる。

 

 ――いや、待て。

 もしかして、もう試験は始まっているのか?

 

 この状況そのものが試験内容。受験者の反応や行動を観察しているとか……。

 さっきまで「杞憂だった」と安心していた自分の考えが、再び揺らぎ始める。

 

 『はっはっは、安心してくれたまえ』

 

 そんな疑念が頭を巡っていた、その時だった。

 

 『試験会場は、ちゃんとここで合っているよ。この場所を選んだのは、会場を用意するのに都合が良かったからさ』

 

 どこからともなく、別の男性の声がマイク越しに響き渡る。

 

 「ッ?!」

 

 突然の声に、会場全体がざわめく。受験者達は一斉に辺りを見回し、声の主を探すが、こちらからは何も見えない。

 

 「お、おい! あそこ!」

 

 前方の方から、誰かが叫んだ。

 

 その声に引き寄せられるように、受験者達の視線が一斉に前方へと向かう。

 

 「はっ?! なんだアレ?!」

 

 「階段?! なんでこんな所に?」

 

 「さっきまで何もなかったよな?」

 

 「なにこれ……魔法?」

 

 「いやいや、ホログラムとか映像だろ?」

 

 俺も目を凝らして前方を見る。

 

 ――そこには、確かに“なかったはずのもの”が存在していた。

 

 広大な草原の真ん中に、白く輝く巨大な階段。

 受験者全員を見下ろせるほどの高さを誇り、まるで最初からそこにあったかのように堂々と佇んでいる。

 

 魔法なのか、機械による演出なのか。距離があるせいで、はっきりとは判別できない。ただ一つ確かなのは、尋常ではないということだ。

 

 『ようこそ、ソワレル学園へ』

 

 その白い階段を上がりながら、男性は演説を続けていた。

 

 『未来ある若人達の奮起、我々学園一同、心から歓迎しよう!』

 

 まだ姿はよく見えない。だが、その声を聞いた瞬間、胸の奥が微かにざわついた。

 

 ……どこかで聞いたことがある声だ。

 

 『おっと、自己紹介がまだだったようだね』

 

 学園関係者。

 聞き覚えのある声。

 まさか――。

 

 自分の中で、否定と肯定がせめぎ合う。そんなはずがない、と理性は言う。だが、感覚は強く一致を訴えていた。

 

 『ソワレル学園、四十九代目理事長――リーフ・エンドレッドだ』

 

 その名が告げられた瞬間、俺の中の葛藤は、完全に決着がついた。

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