転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第4章ー28

 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 「くっ……!」

 

 底の見えない深淵へと投げ出され、受験者達の悲鳴があちこちから反響する。上下も左右も分からない暗闇の中、叫び声だけが耳を刺し、恐怖を何倍にも増幅させていた。

 

 どこまで落ちるのか分からない。

 ただそれだけで、十分すぎるほど絶望的だ。

 

 ――これ、本当に試験か?

 

 初めて、リーフさんの正気を疑った。

 仮に魔法や仕掛けがあるとしても、説明なしでこの状況は異常すぎる。このまま地面に叩きつけられたら、死ぬ可能性が高いどころの話じゃない。

 

 「受験者を……皆殺しにする気か……?」

 

 そんな考えが頭をよぎった、その時だった。

 

 「……ん?」

 

 落下を続ける中で、ふと違和感に気づく。

 さっきまで周囲に溢れていた悲鳴が、明らかに減っている。

 

 「うわっ?!」

 

 「きゃっ!?」

 

 「ッ?!」

 

 一瞬、落下速度が変わったのかと思った。だが違う。体にかかる感覚は何も変わっていない。

 ――なら、消えた人達はどこへ行った?

 

 答えを探す間もなく、最悪の光景が目に飛び込んできた。

 

 「サダメッ!?」

 

 「ッ?! ミオォッ!!」

 

 近くにいたミオが、何かに飲み込まれる瞬間だった。

 

 土のような、泥のような物質が、人一人分の筒状になって下からせり上がり、ミオの体を包み込む。まるで意思を持っているかのように、それは次々と受験者達を捕らえ、暗闇の奥へと引きずり込んでいった。

 

 「なんだ……あれは……?」

 

 魔物か?

 それとも、誰かの魔法?

 

 考えるより先に、体が動こうとする。

 まずはミオを助けなければ――

 

 そう思い、右手を翳して魔法を放とうとした瞬間。

 

 「ッ!?」

 

 自分の真下からも、同じ“それ”が迫ってきているのが視界に入った。

 

 ――しまった。

 

 完全に油断していた。

 回避する余裕も、魔法を撃つ時間も、もうない。

 

 「……クッソォッ!」

 

 エイシャ()の時のように身を翻すこともできず、俺はそのまま謎の物体に飲み込まれた。

 

 中は、まるで巨大なウォータースライダーのようだった。

 暗く、狭く、曲がりくねったトンネルの中を、強制的に滑り落ちていく感覚。

 

 人一人がやっと通れるほどの幅しかなく、体勢を変えることすらできない。

 気づけば俺は万歳状態のまま、下方向へと落下していた。

 

 ――最悪だ。

 

 この姿勢では、下に向かって魔法を撃つこともできない。

 さっき、ミオの方へ魔法を放とうとした動きが、完全に裏目に出ていた。

 

 「どうする……?」

 

 業火剣《ヘルファード》で、この物体を斬り裂くか?

 だが、外の状況が一切分からない今、無理に脱出するのは危険すぎる。

 

 ……そもそも。

 

 これは本当に“試験”なのだろうか?

 

 ふと、頭が冷えた。

 落下を止める方法を考えるより、学園側(むこう)の意図を考えた方がいい。

 

 『会場の準備を済ませてからだね』

 

 リーフさんの言葉が、脳裏に蘇る。

 

 会場の準備?

 つまり、あの野原はまだ“会場ですらなかった”ということか。

 

 「……ってことは……」

 

 答えは、一つ。

 

 この下に、本当の試験会場がある。

 

 そう結論づけた俺は、歯を食いしばり、覚悟を決めた。

 この謎の物体がどこへ向かうのか――最後まで、見届けてやる。

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