「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「くっ……!」
底の見えない深淵へと投げ出され、受験者達の悲鳴があちこちから反響する。上下も左右も分からない暗闇の中、叫び声だけが耳を刺し、恐怖を何倍にも増幅させていた。
どこまで落ちるのか分からない。
ただそれだけで、十分すぎるほど絶望的だ。
――これ、本当に試験か?
初めて、リーフさんの正気を疑った。
仮に魔法や仕掛けがあるとしても、説明なしでこの状況は異常すぎる。このまま地面に叩きつけられたら、死ぬ可能性が高いどころの話じゃない。
「受験者を……皆殺しにする気か……?」
そんな考えが頭をよぎった、その時だった。
「……ん?」
落下を続ける中で、ふと違和感に気づく。
さっきまで周囲に溢れていた悲鳴が、明らかに減っている。
「うわっ?!」
「きゃっ!?」
「ッ?!」
一瞬、落下速度が変わったのかと思った。だが違う。体にかかる感覚は何も変わっていない。
――なら、消えた人達はどこへ行った?
答えを探す間もなく、最悪の光景が目に飛び込んできた。
「サダメッ!?」
「ッ?! ミオォッ!!」
近くにいたミオが、何かに飲み込まれる瞬間だった。
土のような、泥のような物質が、人一人分の筒状になって下からせり上がり、ミオの体を包み込む。まるで意思を持っているかのように、それは次々と受験者達を捕らえ、暗闇の奥へと引きずり込んでいった。
「なんだ……あれは……?」
魔物か?
それとも、誰かの魔法?
考えるより先に、体が動こうとする。
まずはミオを助けなければ――
そう思い、右手を翳して魔法を放とうとした瞬間。
「ッ!?」
自分の真下からも、同じ“それ”が迫ってきているのが視界に入った。
――しまった。
完全に油断していた。
回避する余裕も、魔法を撃つ時間も、もうない。
「……クッソォッ!」
中は、まるで巨大なウォータースライダーのようだった。
暗く、狭く、曲がりくねったトンネルの中を、強制的に滑り落ちていく感覚。
人一人がやっと通れるほどの幅しかなく、体勢を変えることすらできない。
気づけば俺は万歳状態のまま、下方向へと落下していた。
――最悪だ。
この姿勢では、下に向かって魔法を撃つこともできない。
さっき、ミオの方へ魔法を放とうとした動きが、完全に裏目に出ていた。
「どうする……?」
業火剣《ヘルファード》で、この物体を斬り裂くか?
だが、外の状況が一切分からない今、無理に脱出するのは危険すぎる。
……そもそも。
これは本当に“試験”なのだろうか?
ふと、頭が冷えた。
落下を止める方法を考えるより、
『会場の準備を済ませてからだね』
リーフさんの言葉が、脳裏に蘇る。
会場の準備?
つまり、あの野原はまだ“会場ですらなかった”ということか。
「……ってことは……」
答えは、一つ。
この下に、本当の試験会場がある。
そう結論づけた俺は、歯を食いしばり、覚悟を決めた。
この謎の物体がどこへ向かうのか――最後まで、見届けてやる。