転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第4章ー34

 「死ねっ――――――!!」

 

 「なっ?!」

 

 脱出口へと足を踏み出した、その刹那だった。

 前方から突如として、視界を埋め尽くすほどの弾幕が襲いかかってくる。反射的に全身が強張った。ヤバい。判断が一瞬でも遅れたら、確実に蜂の巣だ。

 

 「くっっそ!」

 

 即座に脱兎跳躍《ラジャスト》を発動。地面を蹴り、横方向へ全力で跳躍する。弾丸が空気を切り裂く音が耳元を掠め、背中に冷たい汗が走った。視界の端に、ちょうど良い大きさの岩が映る。あそこだ。

 

 着地と同時に岩陰へと滑り込み、体を丸めて身を隠す。直後、岩に無数の弾丸が叩きつけられ、乾いた金属音と破砕音が連続して響いた。

 

 「はあ……はあ……あっぶね……」

 

 荒い呼吸を必死に整えながら、背中を岩に押し付ける。

 今のは何だ? トラップか? 脱出口付近に仕掛けられた自動迎撃装置……? いや、違う。あまりにも殺意が高すぎる。警告や牽制の域じゃない。明確に“殺し”に来ていた。

 

 受験者同士の殺害行為は禁止されているはずだ。あの弾幕を真正面から食らっていたら、即死していてもおかしくなかった。どうなっている、この試験。

 

 「ちっ、仕留め損なったか。ゴミの分際で私の攻撃を避けるとは……生意気だな」

 

 「ぶへへっ。まあまあ落ち着けよ、パット。せっかくなんだ、じっくり甚振ってやろうじゃないか」

 

 岩陰で歯を食いしばっていると、二人分の男の声が耳に届いた。

 ……人の声? じゃあ、今のは学園側の仕掛けじゃない?

 

 混乱しながらも、そっと岩陰から顔を出し、様子を窺う。

 

 「ッ……?!」

 

 次の瞬間、背筋が凍り付いた。

 

 脱出口の前に立っていた二人の男。

 そいつらは――昨日、ミオを無理やり連れて行こうとした、あの貴族気取りの連中だった。

 

 「……あいつら……」

 

 思わず低く呟く。なんで、あいつらがここに居る?

 貴族は今回の試験に参加していないはずだ。ソワレル学園は二系統に分かれており、貴族は魔法学園ではなく、別枠の通常学園に進学する。表向きは貴族学校だが、実際の魔法学園は平民主体――そんな話を聞いている。

 

 つまり、あいつらがこの洞窟に居る時点でおかしい。

 まさか、貴族ですらなかったのか? あの煌びやかな服装、尊大な態度……全部ただのハッタリだったってわけか。

 

 「……チッ」

 

 思い返すほど腹が立ってくる。見せかけだけのクソガキ共め。

 

 状況を整理する。

 洞窟の端に脱出口が一つ。自分はそれを発見し、脱出しようと近づいた。すると突然、あいつらに発砲され、今は岩陰に身を潜めている。

 

 つまり――あいつらは、脱出口を独占している。

 

 「おい。いつまでそこに隠れているつもりだ、ゴミ」

 

 「……」

 

 太った方の男が、嘲るような声で呼びかけてくる。相変わらず、人を下に見る口調だ。まだ貴族を演じるつもりらしい。

 

 「出てこないなら――」

 

 男はニヤつきながら、両手で構えた機関銃をこちらに向けた。

 

 「この魔装シリーズ№1339【蜂の巣《ビーハイブ》】で、その岩ごと貴様の全身を穴だらけにしてやるぞ!」

 

 銃身がこちらを捉える。

 冗談じゃない。あいつら、本気で殺す気だ。

 

 ……さて、どうする。

 正面から出れば撃たれる。だが、ここで引けば脱出口は諦めることになる。しかも、ミオのことを考えれば――このまま黙って引き下がるわけにはいかない。

 

 岩陰で、ゆっくりと拳を握り締めた。

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