転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第4章ー37

 どうする――。

 

 銃声音が洞窟内に鳴り響くなか、必死に冷静さを保ちつつ周囲を見回す。

 他に身を隠せそうな場所はないかと探すが、少なくともこの近辺には見当たらない。このままでは、いずれ弾幕を防ぎきれなくなるのは時間の問題だ。

 

 ならば、いっそのこと反撃に出るか?

 

 だが、あの機関銃の嵐の中で正面から反撃するには、相当な覚悟と決断力が必要になる。しかも、上空にはドローンがいる。こちらの動きを逐一監視され、少しでも動けばすぐにチクられる。下手をすれば、さらに厄介な攻撃を重ねられるだけだ。

 

 ――詰んでいる。

 

 くそ。考えがまとまらない。

 せめて、せめてもう少し時間が稼げれば、なにか打開策が見えてくるかもしれないのに。

 

 時間稼ぎといえば、質問攻めが無難だ。

 だが、先ほどの対応を見る限り、下手な質問は逆効果になりかねない。あいつらが思わず口を開くような問いでなければ意味がない。

 

 「……」

 

 考えろ。

 今、この状況で、あいつらが反応せざるを得ない質問は――。

 

 しかし、そんなに悠長に悩んでいる余裕はない。銃撃が再開されれば、それで終わりだ。今すぐにでも、切り札になり得る言葉を投げなければならない。

 

 「……そうだ」

 

 必死に思考を巡らせていると、ふと一つの疑問が頭をよぎった。

 これなら――いけるかもしれない。

 

 時間はない。

 こうなったら、イチかバチかだ。

 

 「お前ら、今回のルールはちゃんと把握してるのかー?!」

 

 洞窟内に、張り上げた声が響く。

 

 「はっ?」

 

 『なにぃ?』

 

 予想通り、第一声には反応があった。

 そのおかげか、太った方の男は銃撃の手を止めている。今は、それだけで十分だ。

 

 「今回の試験内容は脱出口からの脱出だ! 脱出口は一つにつき一人だけ! 誰か一人が入った時点で、その脱出口は使えなくなる!」

 

 勢いのまま、言葉を畳みかける。

 

 「つまりだ! お前ら二人で結託しても、どっちか一人は入れないってことだぞ?! もう一つ脱出口を探さないとマズいんじゃないのかー?!」

 

 「『……』」

 

 問いかけた瞬間、二人は揃って沈黙した。

 洞窟内が、嘘のように静まり返る。

 

 ……え?

 まさか、本当に知らなかったのか?

 

 試験内容の説明を最後まで聞かずに動き出していたのだろうか。それなら、ある意味で気の毒ではある。もっとも、自業自得と言えばそれまでだが。

 

 『……ぶへへっ、ぶへへへへへへっ!』

 

 「はーっはっはっはっはっはっは!!」

 

 次の瞬間、突然の爆笑。

 

 「……?」

 

 さっきまで黙り込んでいた二人が、まるで示し合わせたかのように笑い出した。

 なんだ? 事実を突きつけられてショックで頭がおかしくなったのか?

 

 『へへへへっ! おいゴミィ! 頭の悪いお前に、いいもんを見せてやる!』

 

 「……はっ? いいもの?」

 

 やせ細った男が、やけに得意げな口調でそう言った。

 いいもの? そんな余裕がどこにある。

 

 それよりも、今の反応からすると、ルールを理解していないわけではなさそうだ。なら、なぜ笑う?

 

 『これを見てみろ!』

 

 男は意気揚々と、脱出口のある壁を指さした。

 

 嫌な予感が胸を締めつける。

 

 恐る恐る、その指の先へ視線を向けた瞬間――。

 

 「ッ……!?」

 

 目の前の光景に、思考が一瞬止まった。

 

 「……脱出口が、二つ?」

 

 そこにあったはずの脱出口が一つ、音もなく消え去り、代わりに――

 まったく同じ形状の脱出口が、二つ並んで姿を現していた。

 

 あり得ない。

 そんな仕様、聞いていない。

 

 理解が追いつかないまま、冷たい汗が背中を伝う。

 

 ――この試験、想定していたより、ずっと歪んでいる。

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