どうする――。
銃声音が洞窟内に鳴り響くなか、必死に冷静さを保ちつつ周囲を見回す。
他に身を隠せそうな場所はないかと探すが、少なくともこの近辺には見当たらない。このままでは、いずれ弾幕を防ぎきれなくなるのは時間の問題だ。
ならば、いっそのこと反撃に出るか?
だが、あの機関銃の嵐の中で正面から反撃するには、相当な覚悟と決断力が必要になる。しかも、上空にはドローンがいる。こちらの動きを逐一監視され、少しでも動けばすぐにチクられる。下手をすれば、さらに厄介な攻撃を重ねられるだけだ。
――詰んでいる。
くそ。考えがまとまらない。
せめて、せめてもう少し時間が稼げれば、なにか打開策が見えてくるかもしれないのに。
時間稼ぎといえば、質問攻めが無難だ。
だが、先ほどの対応を見る限り、下手な質問は逆効果になりかねない。あいつらが思わず口を開くような問いでなければ意味がない。
「……」
考えろ。
今、この状況で、あいつらが反応せざるを得ない質問は――。
しかし、そんなに悠長に悩んでいる余裕はない。銃撃が再開されれば、それで終わりだ。今すぐにでも、切り札になり得る言葉を投げなければならない。
「……そうだ」
必死に思考を巡らせていると、ふと一つの疑問が頭をよぎった。
これなら――いけるかもしれない。
時間はない。
こうなったら、イチかバチかだ。
「お前ら、今回のルールはちゃんと把握してるのかー?!」
洞窟内に、張り上げた声が響く。
「はっ?」
『なにぃ?』
予想通り、第一声には反応があった。
そのおかげか、太った方の男は銃撃の手を止めている。今は、それだけで十分だ。
「今回の試験内容は脱出口からの脱出だ! 脱出口は一つにつき一人だけ! 誰か一人が入った時点で、その脱出口は使えなくなる!」
勢いのまま、言葉を畳みかける。
「つまりだ! お前ら二人で結託しても、どっちか一人は入れないってことだぞ?! もう一つ脱出口を探さないとマズいんじゃないのかー?!」
「『……』」
問いかけた瞬間、二人は揃って沈黙した。
洞窟内が、嘘のように静まり返る。
……え?
まさか、本当に知らなかったのか?
試験内容の説明を最後まで聞かずに動き出していたのだろうか。それなら、ある意味で気の毒ではある。もっとも、自業自得と言えばそれまでだが。
『……ぶへへっ、ぶへへへへへへっ!』
「はーっはっはっはっはっはっは!!」
次の瞬間、突然の爆笑。
「……?」
さっきまで黙り込んでいた二人が、まるで示し合わせたかのように笑い出した。
なんだ? 事実を突きつけられてショックで頭がおかしくなったのか?
『へへへへっ! おいゴミィ! 頭の悪いお前に、いいもんを見せてやる!』
「……はっ? いいもの?」
やせ細った男が、やけに得意げな口調でそう言った。
いいもの? そんな余裕がどこにある。
それよりも、今の反応からすると、ルールを理解していないわけではなさそうだ。なら、なぜ笑う?
『これを見てみろ!』
男は意気揚々と、脱出口のある壁を指さした。
嫌な予感が胸を締めつける。
恐る恐る、その指の先へ視線を向けた瞬間――。
「ッ……!?」
目の前の光景に、思考が一瞬止まった。
「……脱出口が、二つ?」
そこにあったはずの脱出口が一つ、音もなく消え去り、代わりに――
まったく同じ形状の脱出口が、二つ並んで姿を現していた。
あり得ない。
そんな仕様、聞いていない。
理解が追いつかないまま、冷たい汗が背中を伝う。
――この試験、想定していたより、ずっと歪んでいる。