転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第4章ー45

 『報告。只今、一名の脱出を確認。脱出者三十名を確認しました。これにて本試験は終了となります。受験者の皆様、お疲れ様でした』

 

 場違いなほど淡々としたアナウンスが響いた、その直後だった。

 

 「うおっ!?」

 

 次の瞬間、自分はなぜか空中に放り出されていた。

 視界がぐるりと回転し、慌てて下を見る。……普通に高い。

 

 反射的に下半身へ部分魔力強化を施し、なんとか着地。膝をついて衝撃を逃がした。

 

 「……あっぶな」

 

 体勢を崩していたら、確実に頭から落ちていた。

 というか、そもそもだ。どうして脱出したら上空から落下する仕様なのか。設計者は一度でいいから自分で試してみるべきだと思う。

 

 そんな文句を心の中で垂れ流しつつ、立ち上がったところで違和感に気づいた。

 

 「……アレ?」

 

 試験会場は、たしか緑一色の野原の地下だったはず。

 だが、今足元に広がっているのは赤みがかった床。石材だろうか、人工的な質感がはっきりしている。

 

 顔を上げると、どうやらどこかの建物の内部らしい。

 周囲には人の姿もあるが、数は少ない。

 

(……なるほど)

 

 おそらく、合格者だけがここに転送されたのだろう。

 そう考えれば、この人数の少なさにも納得がいく。ここにいるのは、皆自分より先に脱出した合格者たちなのだ。

 

 そう思った、そのときだった。

 

 「サダメー!!」

 

 「ッ?! ……ミオ!?」

 

 聞き覚えのある声に名前を呼ばれ、反射的に振り向く。

 そこには、こちらへ向かって駆け寄ってくるミオの姿があった。

 

 「はあ……はあ……。さっきから、ずっと探してたんだけど……全然見つからなくて……」

 

 自分の前まで来た彼女は、肩で息をしながら続ける。

 

 「も、もしかして……落ちたのかもしれないって……すごく、不安になっちゃって……」

 

 「お、おお……。いや、まあ、色々あってな。というか、大丈夫か?」

 

 息も絶え絶えな様子に、ひとまず彼女を落ち着かせる。

 ……ということは、自分が脱出するまで、ずっと探し回ってくれていたのだろうか。

 

(それはそれで、申し訳ないな……)

 

 そんなこちらの心配など気にする様子もなく、ミオはふっと表情を緩めた。

 

 「で、でも……サダメが受かってて、本当によかった。えへへへ」

 

 「……ミオ」

 

 自分のことのように嬉しそうな笑顔。

 そのあまりの純粋さに、思わず言葉に詰まる。

 

 なんだろう、この感じ。

 恥ずかしいような、照れくさいような……胸の奥が少しだけ、むず痒い。

 

 「その様子だと、ミオも合格したみたいだな」

 

 「うん。よく分かんないけど、私が一番早かったらしいよ?」

 

 「……えっ?」

 

 一瞬、思考が止まった。

 

 話を聞けば、開始直後に脱出口の争奪戦が起きたらしい。

 だが彼女は、風魔法で周囲の受験者たちを一掃。そのままあっさり脱出したのだという。

 

(……確かに)

 

 広範囲を制圧できる彼女の風魔法は、この試験との相性が抜群だ。

 正直、炎魔法で小細工していた自分より、よほど理にかなっている。

 

 改めて、彼女の魔法の才能に感心させられた。

 

 「で、ここってどこなんだ?」

 

 「うーん……私もよく分かんないんだよね。学園の人には『ここで待機してて』って言われただけで」

 

 「全員揃ったら、リーフさんとかから説明があるのかもな」

 

 「えっ? サダメが最後じゃないの?」

 

 「いや、俺じゃない……はずだが……」

 

 その瞬間だった。

 

 「おわわわわわわわわわわわわわわわわわわ……!」

 

 「……ん?」

 

 聞いたことのない絶叫が、どこからともなく降ってくる。

 

 次の瞬間、自分の頭頂部に――

 弾力のある、何かが直撃した。

 

 「けどぅっ!?」

 

 視界が一気に潰れ、顔面から床に叩きつけられる。

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