転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

15 / 34
第1章ー14

 「『ふっ、今度は魔法で攻撃ですか。だが詠唱させる暇など……』」

 

 「【火球《フレール》】!!」

 

 「『なにっ?!』」

 

 エイシャが油断している隙に、無詠唱の火球を放った。

 奴は詠唱に時間がかかると踏んでいたのだろう。

 

 しかし今の俺は、二〇〇%の力を引き出せる状態だ。

 無詠唱魔法とはいえ、地面を抉るほどの巨大な火球を放つことも容易い。

 

 「『くっ!』」

 

 とはいえ、速度は決して速いわけではなく、油断していたエイシャにすら避けられてしまった。

 やはり攻撃魔法を当てるのは難儀だ。

 

 ――だが、今はそれでいい。

 おかげでエイシャと、俺の刀を奪った手との距離が開いた。取り返すなら今しかない。

 

 「はあああああっ!!」

 

 離れたことを確認した俺は、脱兎跳躍を駆使して手へと飛ぶ。

 

 一瞬で辿り着き、即座に刀を掴む。

 今度こそ、取り返してみせる。

 

 「ふんっ!!」

 

 「?!」

 

 刀に魔力を込めると、噴火のような勢いで炎が噴き出し、手の内部を焼き尽くしていく。

 これだけの火力なら抜けるはずだ。

 底なし沼のようだと比喩したが、所詮は魔法で作られた存在。魔力の攻撃に耐えられるはずがない。

 

 「よしっ!」

 

 炎で満たされた手は弾けるように消失し、俺は刀の奪還に成功する。

 

 ――あとは。

 

 「あとは、お前だけだ」

 

 「『……』」

 

 取り返した刀をエイシャへ向ける。

 さすがにもう余裕はない。この一撃で確実に仕留めなければならない。

 

 「炎獅子、蒼炎、光炎万丈」

 

 刀を上段に構え、詠唱を開始する。

 刀身へ炎が集束し、真紅の炎が次第に青白く変わっていく。

 

 極限まで濃縮された炎を解き放つ一振りは、赫火断刀の数倍の威力を誇る。

 その代償として、業炎刀は一度限りで砕けてしまうのが欠点だが――今は関係ない。

 

 「燎原《りょうげん》の火、劫火《ごうか》、業火、瞋恚《しんい》の炎!」

 

 詠唱を重ねるほど、青白い炎は刀身の内側で膨れ上がり、

 あまりの魔力に、刀が自ら震えだす。今にも砕けそうだ。

 

 ――頼む。もう少しだけ持ってくれ。

 

 「『ほう、面白い』」

 

 「!?」

 

 その瞬間、エイシャから桁違いの魔力が噴き上がる。

 奴も全力の魔法で迎え撃つつもりか。

 

 「『イノス・レールステン。私も全力の魔法をお見せしましょう。これで、どちらが立っていられるか――勝負です』」

 

 「……」

 

 エイシャは眼前に巨大な黒い球体を出現させる。

 ゴーレムの時よりも遥かに大きい。

 

 「『■■■、◆◆◆!』」

 

 「ッ?!」

 

 詠唱が始まる。

 だがその発音は、明らかに人語ではない――魔族の言葉。

 

 詠唱に合わせ、黒球はさらに膨張していく。

 すでにゴーレムを超える大きさだったそれは、気づけば結界の三分の一を占めるほどにまで成長していた。

 

 ――間違いない。規格外の魔法だ。

 

 あれを斬り裂き、さらに奴自身も斬らねばならない。

 ……できるのか?

 

 「業火滅却!!」

 

 ――いや、やるんだ!

 絶対に!!

 

 村を。

 村の人々を。

 家族を――守るために!!!

 

         「獅炎咆斬《ライム・ロアッシュ》!!!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。