転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第5章ー21

 「……えっ?!」

 

 今度こそ、教室全体が騒然となった。

 

 魔王を殺す――?

 

 それはつまり、勇者になるということではないのか。

 

 「魔王を殺すということは、サダメ君と同じく勇者に――」

 

 「違う」

 

 リーフさんの言葉を遮るように、アラガは即座に否定した。

 

 「俺の目的は魔王を殺すこと。それだけだ」

 

 教室の空気が、ひやりと冷える。

 

 理事長相手にも一歩も引かないその態度。

 強がりや虚勢ではない。確信に満ちた声音だった。

 

 勇者になるのではない。

 魔王を殺す。ただそれだけ。

 

 そこに理想も名誉も感じられない。

 あるのは、純粋な殺意だけだ。

 

 「話は終わりだ。これで満足か?」

 

 淡々とした物言い。

 

 「イッ!? マジかよ、アイツ……」

 

 隣でギリスケが小声で引いている。

 

 それも無理はない。

 理事長に向かってあの態度だ。普通なら叱責されてもおかしくない。

 

 だが。

 

 「うん、ありがとう。よし、これで全員の自己紹介は終わりだね」

 

 リーフさんは、顔色一つ変えなかった。

 

 まるで何事もなかったかのように、穏やかな笑みを浮かべて進行を続ける。

 

 あれだけあからさまな物言いをされても動じないのは、大物なのか、それとも本当に鈍感なのか。

 

 「さて、今日から君たちは三年間、苦楽を共にする仲間だ。全員と親友になるのは難しいだろう。だが少しずつ親交を深め、月に一度の依頼任務を協力してこなしてほしい。そうすれば、ここにいる全員が無事卒業を迎えられるはずだ」

 

 依頼任務。

 

 その言葉に、教室内の空気がわずかに引き締まる。

 

 「では本日の授業はここまで。この後は各教科の担当教諭から説明がある。遅れないように各教室へ向かうように。それでは私はこれで。……コールスタッシュ先生も、そろそろ限界のようなので失礼するよ」

 

 「うぅ……もうちょっと丁寧に運んでくれません……うぶっ!?」

 

 リーフさんは軽々と担任を担ぎ上げ、そのまま教室を後にした。

 

 結局あの人は何一つ教師らしいことをせず退場である。

 

 ……教室で戻さなかっただけ、まだマシだったのかもしれない。

 いや、基準が低すぎる。

 

 

 

 ひとまず一時限目は終了。

 

 理事長と担任が去った途端、教室は一気にざわめきに包まれた。

 

 「ふあー、自己紹介だけなのに変に疲れたわー」

 

 「アンタが変なこと言うからでしょ」

 

 「けど拙者は男らしくて良かったと思うでござるよ。勝負していたのなら拙者にも一声かけてほしかったでござる」

 

 「だから何の勝負なのよ」

 

 いつもの調子で掛け合う仲間たち。

 

 「とりあえず次の教室に移動しようぜ。なあ、サダメ」

 

 「……ああ」

 

 返事はしたものの、意識は別のところにあった。

 

 アラガ。

 

 あの視線。

 

 目が合った瞬間、確かに感じた。

 嫌悪か、憎悪か、それとも――敵意。

 

 なぜ俺に向けられた?

 

 まだ何もしていないはずだ。

 

 それに、魔王を殺すというあの言葉。

 

 理想でも使命でもなく、ただ目的として語った声音。

 

 まるで個人的な復讐のようだった。

 

 俺は仲間たちの後を追い、次の教室へと向かった。

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