「し、失礼しましたー」
なんとか説教が終わり、職員室からようやく解放された。代償として一時限目の授業を丸ごと欠席することになり、事情は説明してくれるらしいが……教師陣や学校側から見れば、初日から大目玉を食らった生徒という印象は間違いなく最悪だろう。
「はぁ……なんか今日、異常に疲れるんですけど」
「一日でトラブル続きだったしね」
職員室を出た途端、深いため息が漏れた。こんなにヘトヘトになる日って久しぶりだ。まだ午前中だというのに。ミオの優しい言葉一つでは到底埋められないほどの精神的ダメージを受けていた。学園生活が始まってまだ数時間しか経っていないのに、もう帰りたい。
「ごめんでござる~、サダメ~!!」
「ごふっ?!」
そんな最悪の気分に浸っていると、前を歩いていたマヒロが突然、勢いよくタックルするように飛びついてきた。あまりの急展開に一瞬体勢を崩しそうになり、腹に軽く頭突きを食らって地味に痛い。
「拙者、あやつに謝罪させること叶わず、師範方の喝を入れさせてしもうた……。お主は何も悪くないというのに~!!」
「わ、わかったから! マヒロ、俺はもう大丈夫だから。とりあえず、その体勢で動くのやめてくれ?!」
彼女は涙声で謝り続けているが、こちらは「気にしてないよ」と必死に宥めようとしていた。
……それもそのはず。今の体勢だと、彼女の胸がまともに股間に当たってしまっている。しかも彼女が泣きじゃくりながら上下に揺れるたび、否応なく刺激されてしまう。これは完全に生理現象で、どうにもならない。とにかく一刻も早く引き剥がさないとマズい……!
「サダメー、ごめんよー!」
「うへっ?!」
そう思って彼女の体を離そうとした瞬間――今度は後ろからギリスケが泣きついてきた。なんという絶妙(最悪)のタイミングだ。こいつ、わざとか?
「お前がマヒロちゃんの疑似パイ〇リで勃〇しそうだから引き離そうとしてるけど、なんか面白そうだからそのまま続けてくれー!」
「おまっ?! それ分かってて、ていうか大声で言うなよ!?」
どうやら完全に状況を把握した上で、わざと抱きついてきたらしい。
「ごめん」って、そっちの「ごめん」かよ。
なんで俺が公衆の面前でこんな恥ずかしい目に遭わなきゃいけないんだ……!
「……サダメ……」
「ミ、ミオさん? いや、その、これはですね……」
ギリスケの余計な一言で、ミオの表情が一気に曇った。いや、曇るを通り越して嵐の前触れレベルだ。必死に言い訳を探すが、彼女はすでに拳を握りしめ、血管が浮き出ている。その瞬間、悟った。
ああ、もう駄目だ、と。
「死ね! 変態っ!!」
「ぶほぉっ!?」
観念した次の瞬間、彼女の怒りの鉄拳が顔面にクリーンヒット。
前後から二人にがっちり捕まっているせいで、逃げることもガードすることもできず、真正面から全力パンチを食らった。
「がはっ……なんで俺だけ、こんな目に……」
「サダメー?!」
「ぷっ……あっはははははははっ!」
「こらー! お前ら、また何やってるー?!」
その後、顔面が腫れ上がった上に、再び職員室に連行されて説教の二ラウンド目。
本当に今日は、自分の人生史上最悪級の厄日だった。
――転生勇者が死ぬまで、残り4098日。