転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第5章ー33

 今、彼女はなんと言った? テレビゲームって言った? テレビゲームって、コンピューターゲームの事か? ギリスケが持っているようなあの電子機器の事を言っているのだろうか。

 

 「そりゃあ最初は上手くいかなくてね。ゲーム機の製造やらC言語の確立やら色々あるが、まずは電子機器という文化がないこの時代でどうやって電子機器を生み出すかが問題だった。電気を使う文化自体はあるものの、照明として使う以外の用途をどうやすれば見出せるか考えなければならなかった。今までの知識と勝手が違う故、かなり苦戦させられたよ。だって物があるかどうかも分からない訳だからね。けど、ガラスという概念があるならディスプレイを生み出す方法はあるのでは考えた私は…」

 

 「あ、あの、ソンジさん。話逸れてませんか?」

 

 「おっと、そうだったね。この話はまた今度にしよう」

 

 テレビゲームの話になってから彼女の熱量が高くなり、話が逸れそうになったので一旦彼女を落ち着かせる。その話に興味なくはないけど、今はその話よりも本題の方が聞きたい。

 

 「私はその過程でテレビや携帯電話、マイクやスピーカー等を発明した事で学園に目を付けられたんだ」

 

 「つまり、ここで機械工学を発展させる為に援助を受けている、って感じですか?」

 

 「正確には魔法工学だね」

 

 なんとなく知りたかった事は理解した。この人、ひょっとしたら、いや、間違いなく天才だ。ほぼ下着姿同然の恰好で堂々としている所だけ見ると変人ではあるが。天才と変人は紙一重って聞くし、彼女はその類なのだろうな。

 

 「まっ、ゲーム機とか音響機器以外の電子機器が普及するにはまだまだ掛かるけどな」

 

 「そうなんですか?」

 

 「ああ。この世界はあまりにも電磁波の波が不安定でね。恐らく、魔力という概念が深く関わっているのではと私は考えている」

 

 「魔力と?」

 

 「魔力は全ての根幹に繋がっている。今私達が吸っている空気や飲んでいるお茶にも僅かながら魔力を宿している」

 

 「それはなんとなく知ってます。けど、それとなんの関係が?」

 

 「この都市、基この国は魔力の質が高いっていうのは知ってるか?」

 

 「? いえ」

 

 「なんでもこの国の中心部、つまりソワレルには魔力の根源ともいわれる【魔女の地脈(マジック・ベイン)】が存在しているからなんだ」

 

 「マジック・ベイン?」

 

 「母なる大地とかって言うだろ? 多分、それにちなんで付けられた名前だよ」

 

 「それは分かりましたけど、魔力と電磁波の波がどう関わってるんですか?」

 

 「あー、そういう話だったね。この国にはその質の高い魔力を制御する為の建物があるんだ」

 

 「魔力を制御?」

 

 「質が高い分、魔力の濃度が濃くなると人的被害のリスクが高い」

 

 「ああ。濃度を抑える為にってことか」

 

 「そういうこと。魔女の地脈に近い程魔力の濃度が高くなる可能性が高い。だから制御する必要があるのさ。要するに私が言いたいのはこの都市の魔力が安定しているから電磁波の波長もある程度合わせやすい。けど、他の所は魔物が居たりして非常に魔力が不安定になる」

 

 「? それはなんでですか?」

 

 「魔物は魔力の塊が具現化したようなものだからさ。魔物は基本魔力を接種するだけで半永久的に生きていられる。その分、魔力の吸収量は人間よりも多い。するとどうなる?」

 

 「…その辺の魔力の濃度が薄くなる?」

 

 「逆だよ。さっき魔物は魔力の塊って話しただろ? 魔物が吸収して吐き出した空気には通常の濃度より僅かだが高い魔力が生み出されるわけだ」

 

 「あっ!」

 

 彼女の話を聞いていて、ふと魔障結界の事を思い出した。たしか、魔力の濃度は魔物には影響しないとエイシャ(あいつ)が言っていた気がする。だからあいつらは魔障結界の影響を全く受けていなかった。それは恐らく、魔物自体が魔力の塊だという説明も納得出来る。

 

 「魔力の不安定な場所は電磁波の波も不安定になる。あくまで私の色々試した上での話ではあるが、今の所その説が濃厚だと思っているよ」

 

 なるほど。天気が悪いと電波が悪くなったりするし、あり得ない話ではないな。

 

 「だから今は学園周辺でしか運用してない。下手に流通させると圏外に持ち込まれた時にもっと範囲を拡大しろと催促されるだろうし、あんまりトラブルになると面倒なんだよねー。ゲームはオフラインで遊べるから問題ないけど」

 

 「ああ、たしかに」

 

 話を聞いていると、どうやら彼女も色々と苦労しているようだ。現状ここだけに留めておくのは悪くない判断かもしれないな。

 

 「ところでサダメ君。君に聞きたい事があるんだけど」

 

 「はい?」

 

 ひとしきり話を終えると、今度は自分に質問を投げかけて来た。

 

 「君、元日本人だろ?」

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