転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第5章ー36

 翌日。魔法学の授業が始まった――のだが。

 

 「はあ……はあ……はあ……」

 

 荒い呼吸と、草を踏みしめる足音が野原に響く。

 

 『ほらほらー! もっと走れ走れー!』

 

 拡声器越しに飛んでくる、やる気の欠片も感じられない声。

 

 今日の担当はコールスタッシュ先生だ。

 しかし授業内容は昨日と寸分違わず、ひたすら野原を走るだけだった。

 

 「ぜえ……ぜえ……なんで……魔法の授業で……こんな走らされてんだよ、俺たち……」

 

 隣を走るギリスケが、途切れ途切れに愚痴をこぼす。

 

 その気持ちはよく分かる。周囲を見渡せば、他の生徒たちも同じように不満を漏らしながら走っている。自分も正直、二日連続はきつい。

 

 『昨日な、オーヴェン先生からありがたいご指摘をいただいてな。“どいつもこいつも基礎体力がなってねぇ!”だとよ』

 

 先生はのんびりした調子で続ける。

 

 『だからまずは徹底的に体力づくりから始めることにした』

 

 なるほど、言いそうではある。

 オーヴェン先生の顔を思い浮かべれば、違和感はない。

 

 だが、それにしてもだ。

 

 魔法を学ぶ場で、二日連続の走り込み。

 まるで校内マラソン大会前の体育の授業である。

 

 当然、生徒たちからは不満の声が上がる。

 

 「ええー……」「また走るのかよ……」

 

 野原に広がるブーイング。

 

 『……はあ、めんどくせーな』

 

 先生は頭をかき、煙草をくわえた。

 

 『分かった分かった。ちゃんと説明してやるから、全員集合!』

 

 数分後、一年生は先生の前に整列した。

 

 コールスタッシュ先生は煙草を指に挟み、面倒くさそうに煙を吐いている。今日は酒瓶は見当たらないが、生徒の前で堂々と喫煙する教師というのもなかなか豪胆だ。

 

 「いいかお前ら。俺の貴重な時間を使って講習してやる。一回で理解しろ。二度は言わん。理解できなかった奴はぶっ殺す」

 

 開始早々、物騒な前置きである。

 

 時代が違えば確実に問題視される発言だろう。

 というか、今でも十分問題ではないかと思う。

 

 「まず、なぜ基礎体力が必要かだ。答えは単純。魔法を扱うには体力が必要不可欠だからだ」

 

 その言葉に、ギリスケがすぐさま手を挙げる。

 

 「でも先生、俺たち普通に魔法使えてますよ?」

 

 確かにその通りだ。

 自分もこれまで何度も魔法を行使してきた。連続使用すれば疲労は感じるが、体力不足が致命的だと感じたことはない。

 

 先生は煙草をくわえ直し、じろりと睨む。

 

 「おい。話の腰を折るな。最後まで聞け。ぶっ殺すぞ」

 

 「……えぇ…」

 

 ギリスケが渋々手を下ろす。

 

 ギリスケを一蹴した先生はそのまま話を続けた。

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