転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第5章ー42

 「これで全員終了したな?」

 

 先生は周囲を見渡し、全員がテストを終えたことを確認する。

 

 ――正確には一人、始まる前に不合格を言い渡された者がいるのだが。

 

 まあ、もう蒸し返しても仕方がない。

 

 「いいか。今回のテストは俺の独断だが、贔屓も冷遇もしていない。公平に見た上での判断だ」

 

 先生の声はいつもより低く、真面目だった。

 

 「合格者との差は、お前ら自身が一番よく分かったはずだ」

 

 「……」

 

 誰も反論しない。

 

 三十人中、合格者は二人。

 

 数字だけ見れば惨憺たる結果だ。

 

 だが、あの二人の実力を目の当たりにしてしまえば、納得せざるを得ない。

 

 マヒロの、無駄を削ぎ落とした魔剣の一閃。

 そしてアラガの、無詠唱で野原一帯を凍らせた氷魔法。

 

 どちらも圧倒的だった。

 技術、制御、完成度――文句のつけようがない。

 

 「遺憾ながら、これが現状だ」

 

 先生は腕を組む。

 

 「お前らはまだ、魔法学の基礎を学ぶ土台すら整っていない。これまでの試験や模擬戦で“たまたま”上手くいったからといって、天狗になるな」

 

 言葉が突き刺さる。

 

 「その伸びきった鼻を、俺たちが容赦なくへし折ってやる。まずは基礎中の基礎――体力づくりからだ。徹底的にやる。覚悟しておけ」

 

 「「はい!」」

 

 返事だけは威勢がいい。

 

 「他の先生方とも話は通してある。今後は、各担当が“充分だ”と認めた者から次の段階へ進む形式にする」

 

 段階制。

 

 つまり、全員一律ではないということだ。

 

 「魔剣の方はすでに合格だ。次に進みたいと判断したら、そのとき相談しろ」

 

 「うむ! 了解したでござる」

 

 マヒロは元気よく応じる。

 

 「白髪の方は、明日の担当から指示を受けろ。いいな?」

 

 「……ああ」

 

 アラガは短く返した。

 

 「今日はここまでだ。解散――」

 

 「あ、あの!」

 

 突然、ギリスケが手を挙げた。

 

 先生の眉間に皺が寄る。

 

 「あ゛あ゛ん?」

 

 次の瞬間。

 

 「ぐおっ!?」

 

 先生はギリスケの顔面を片手で掴み、そのまま軽々と持ち上げた。

 

 何という握力だ。

 

 見ているこちらの頬まで痛くなりそうだ。

 

 「さっさと終わらせて帰れると思ったのに、余計な口を挟みやがって。殺すぞテメー」

 

 「ご、ごめんなさいでででででっ!?」

 

 どうやら怒りの理由は授業進行ではなく、帰宅時間らしい。

 

 とはいえ、生徒に対してその扱いはどうなのだろう。

 

 顔面を握り潰されかけているギリスケが、さすがに気の毒になる。

 

 ――今日は自分より不運な男がいたな。

 

 「ちっ……それで? 何だ。手短に言え」

 

 解放されたギリスケはその場に崩れ落ち、涙目で息を整える。

 

 本気で危なかったに違いない。

 

 「あ、あの……前から聞いてた“派遣任務”ってやつ……あれって、いつから始まるんすか?」

 

 その問いに、場の空気がわずかに引き締まる。

 

 確かに、それは皆が気になっていたことだ。

 

 定期的に行われるという派遣任務。

 だが、具体的な日程については説明を受けていなかった。

 

 ――ギリスケにしては、いい質問だ。

 

 先生は一瞬だけ沈黙し、口元を吊り上げた。

 

 「……ああ。説明してなかったか」

 

 そして、にやりと笑う。

 

 「ふっ。聞いて喜べ」

 

 嫌な予感しかしない前置きだ。

 

 「お前らの初めての派遣任務は――二週間後だ」

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