三人が学園を去ってから、事態は明らかに良くない方向へと転がり始めた。
翌日、その噂を聞いた女子生徒が二人、その日のうちに退学を申し出た。さらに翌々日には四人、その翌日には一人と、まるで連鎖反応のように生徒が減っていく。
結果、入学からちょうど一週間が経過した時点で、三十人いた一年生は二十人にまで減少していた。
繰り返すが、これは入学してから、わずか一週間の出来事だ。
「……」
そんな異様な空気の中でも、魔法学の授業は何事もなかったかのように続いていた。
今日も内容は変わらず、ひたすら走るだけ。最初の頃に比べれば多少は体力も付いた気がするが、少しでもペースを上げるとすぐに限界が来る。これでは、初任務までに次の段階へ進むという目標に間に合わないかもしれない。
朝練の内容を、もう少し厳しくするべきだろうか。
……いや、今の時点でも十分すぎるほどきつい。これ以上増やしたら、身体が先に悲鳴を上げそうだ。
そんなことを考えていた矢先だった。
『全員、今日はここまでだ。俺の所に集合しろ』
「……? なんだ、急に」
「さあな?」
突然、コールスタッシュ先生から終了の合図がかかり、全員集合するよう指示が出た。
普段は面倒くさがりで最低限しか喋らない先生が、わざわざ全員を呼び出すのは珍しい。嫌な予感を覚えつつも、言われた通りに集まる。
「ふー……えー、君達が入学してから一週間が経過しました」
先生は気の抜けた声で切り出した。
「遺憾なことに、生徒数は三十人から二十人まで減りました。せんせいは、とってもかなしいです」
「……」
感情が一切こもっていない。
悲しんでいると言われても、棒読みすぎて逆に怖い。
まさか、この場で一人ずつ呼び出して根性焼きでも始める気じゃないだろうな。
この人ならやりかねない、という妙な信頼があるのが余計に厄介だ。
「いいか?」
先生の声が少しだけ低くなる。
「この学園はな、厳しい壁を次々に用意する。こんな程度で音を上げるようなら、卒業なんて出来ねーと思っとけ」
「……」
「お前らがボイコットみたいに辞めていこうが、方針は変わらねー。甘やかす気も一切ねー。変えるならな、テメーら自身を変えてみせろ」
その言葉が、ずしりと胸に落ちた。
「初任務まで、残り十日だ。それまでに、甘ったれた性根は捨てておけ。話は以上。解散!」
相変わらず容赦のない物言いだった。
根性焼きは免れたものの、精神的な圧力は十分すぎるほどだ。
正直、これでさらに脱落者が出るんじゃないかと不安になった。
追い詰めすぎではないか。もう少し配慮してもいいんじゃないか。そんな考えが頭をよぎる。
――だが。
そんな不安を抱えたまま数日が過ぎ、気がつけば初任務当日を迎えていた。
自分の予想とは裏腹に、その間、誰一人欠けることなく二十人全員が残っていた。
先生の言葉が突き刺さったのか、それとも単に意地だったのかは分からない。
ただ一つ確かなのは、
この学園に残った者たちは、もう後戻りできない場所に足を踏み入れているという事実だった。
―転生勇者が死ぬまで、残り4082日。