話は、初任務まで残り九日のところまで遡る。
いつも通りの走り込みを終え、軽く息を整えていたその時だった。どこからともなく現れたコールスタッシュ先生が、再び生徒たちを集め始めた。
昨日、あれだけ空気を重くしておいて、今度は何の話だというのだろうか。
ざわつく中、先生は腕を組み、短く告げた。
「昨日、理事長から任務の内容が正式に発表された。というわけで、今からお前たちには五人一組でチームを作ってもらう」
「五人一組、ですか?」
誰かの問いに、先生は頷く。
「ああ。全員を同じ任務に行かせれば、どうせサボる奴が出る。かといって、一人一人別の任務を受けさせるのも不安が残る。だから安牌を取った。五人一組で動いてもらう」
なるほど、と内心で納得する。
大人数で一つの依頼を受ければ、依頼主にとっては過剰戦力だろうし、逆に単独行動はまだ危険すぎる。五人という人数は、確かに妥当だ。
「人数的にも丁度いい。その方がお前たちとしても、多少は気が楽だろう」
「まあ、たしかに……」
反論の余地はなかった。
「というわけで、さっさと決めろ。自分たちでチームを組め」
「自分たちで決めていいんですか?」
「その方が手っ取り早い。どうせ俺が決めたら文句言うだろ? ああ、それと――友達がいない奴もちゃんと仲間に入れてやれよ」
教室のあちこちで、苦笑や乾いた笑いが漏れる。
自分たちで決めていい。
その言葉を聞いた瞬間、ほぼ結論は出ていた。
「じゃあ、俺たち四人は確定だな」
ギリスケが迷いなく言う。
「うむ。やはり気心の知れた友人と組むのが一番でござる!」
マヒロも頷き、ミオはちらりとこちらを見た。
「サダメ、それでいいの?」
「ああ。もちろんだ」
俺、ミオ、マヒロ、ギリスケ。
この四人は自然とまとまった。ここまでは何の問題もない。
「問題は、あと一人だよな」
ギリスケが腕を組む。
「そうでござるな。拙者はあの者以外なら誰でもよいでござるが……」
「ああ。それには俺も同意見。ぼっちはともかく、あいつだけは絶対入れねぇ」
言外に指している人物は一人しかいない。
視線が、自然とアラガの方へ向いた。
実力は間違いなくクラス随一。彼が加われば、初任務の成功率は格段に上がるだろう。だが、俺たちと彼の間には微妙な因縁がある。互いに譲らない気質も相まって、同じ班になれば揉め事になる可能性は高い。
正直、俺自身も気が進まない。
しかし、問題はそこではない。
彼は今、一人で立っている。
周囲の連中は次々と班を決めていくが、アラガは動かない。いや、動けないのか。
このままでは、余り物同士という形で、俺たちの班に入る流れになる可能性が高い。
――それは避けたい。
ならば、先にもう一人確保するしかない。
だが、俺には心当たりがない。ギリスケたちも同じだろう。
ダメ元で誰かに声をかけるしか――
「……あ、あの。ちょっといい?」
予想外の声に、全員が振り向いた。
「ミオ? どうした?」
普段あまり前に出ない彼女が、珍しく手を挙げている。
少しだけ緊張した表情で、それでもまっすぐこちらを見た。
「私、一人誘ってみたい子がいるの」