翌日。
本来なら魔法学の授業がある時間だが、今日は中止となり、各班ごとの任務ミーティングが行われることになった。
任務内容は他言無用。よって、一組ずつ教室に入り、コールスタッシュ先生と直接打ち合わせを行う形式らしい。残りの班は別室で待機だ。
順番は昨日と同じくクジで決まり――そして運の悪いことに、俺たちは最後だった。
「おっ、次俺たちの番じゃね?」
ギリスケが立ち上がりながら言う。
「そうみたいだな」
三組目の班が戻ってきたのを確認し、俺も席を立つ。待機時間はおよそ一時間弱。長かったような、短かったような微妙な時間だ。
「それじゃあ行こうか」
俺が促すと、全員が立ち上がり、揃って教室へ向かった。
「さて、お前らで最後だな。任務の概要を確認するぞ」
教室に入ると、先生はすぐに扉へ顎をしゃくった。俺が鍵をかける。
この学園の教室は、施錠と同時に特殊な魔法が発動する仕組みになっている。完全防音。どれだけ大声で叫ぼうが、爆発音を鳴らそうが、外には一切漏れない。
……これ、普通にライブ会場として使えそうだよな。
くだらないことを考えつつ席に着くと、先生は黒板に一枚の紙を貼り出した。
「今回の任務は、レルトという集落に自生しているタリスターの花の処分、だったな?」
「先生。タリスターって、魔物除けの花ですよね?」
ミオが即座に反応する。
「ほう。よく知ってるな。なら話は早い」
タリスターの花。昔、ラエルから聞いたことがある。魔物を遠ざける効果を持つ特殊な植物で、女性用の香水にも加工されていたはずだ。
「その花を処分するんですか? 回収じゃなくて?」
俺が疑問を口にする。
「ああ。いいところに気づいたな。今からそこを説明する」
珍しく、先生が素直に褒めた。
……今日は煙草も吸っていない。機嫌がいいのか?
「まず、サダメの言う通り、タリスターは魔物除けの効果を持つ特殊な花だ」
「先生、ようやく生徒の名前覚えてくれたんっすね?」
ギリスケが茶々を入れる。
「アホか。俺を誰だと思ってる。生徒の名前くらい覚えてるわ」
即座に返され、教室に微妙な沈黙が落ちた。
……いや、以前は“赤髪”とか“そこの目つき悪いの”とかで呼ばれてましたよね?
心の中だけで突っ込んでおく。
「話を戻すぞ」
先生は軽く咳払いをした。
「タリスターは各地に自生しているが、最近になって騎士団が全面的に処分する方針を打ち出した」
「全面的に……?」
マヒロが眉をひそめる。
「何故ですか?」
俺もすぐに問いかけた。
つい最近まで香水として流通していた花を、今さら“全部”処分するなど、どう考えても不自然だ。
何かが起きたに違いない。
先生は一瞬だけ視線を伏せ、それから淡々と告げた。
「それはな――タリスターの花が『魔薬《マラッグ》』だと判明したからだ」