転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー10

 「でも先生。殺しに来る相手を無力化するって言っても、今の私たちじゃ……とても」

 

 ミオが不安げに言葉を濁す。

 

 確かに理屈は分かる。

 だが実力が伴っていないのが現実だ。

 

 「ああ、そうだろうな」

 

 先生はあっさり認めた。

 

 「だから今回――こんなものを用意してきましたー」

 

 やけに軽い口調でそう言うと、教壇の机の引き出しから何かを取り出す。

 

 机の上に置かれたそれを見て、全員が目を瞬かせた。

 

 「……木刀?」

 

 ごく普通の、どこにでもありそうな木刀だった。

 

 なるほど。これなら斬れない。

 マヒロの魔剣《魔妖》のように命を奪う心配はない。

 

 ……だが、それだけで本当にどうにかなるのか?

 

 先生はニヤリと口角を上げる。

 

 「この木刀には特殊な加工が施されている。柄を握って、少しだけ魔力を流すと――」

 

 次の瞬間。

 

 バチバチッ!!

 

 木刀の刃部から青白い電光が走った。

 

 「ッ!?」

 

 思わず身を引く。

 

 どう見てもスタンガン仕様である。

 

 「一定量の魔力を流すと電撃が発生する仕組みだ。殺傷力は抑えてある。これなら相手を殺さずに無力化できる」

 

 なるほど。

 物理衝撃+電撃。確かに実用的だ。

 

 「ただし」

 

 先生が人差し指を立てる。

 

 「許容魔力量は多くない。流しすぎると内部の魔導回路が焼き切れて壊れる。だから使うときは“確実に触れられる間合い”で、一瞬だけ流せ」

 

 ピーキーな仕様だな。

 

 「それはいいんだけどさー」

 

 ギリスケが木刀をまじまじと見つめながら言う。

 

 「俺、剣術なんて習ってないんすけど? もっと短い武器とかないんすか?」

 

 「残念ながら現状はこれのみだ」

 

 即答。

 

 「剣に自信がないなら、今から素振り一万回やれば多少はマシになるだろ」

 

 「いやいやいや、一万回って。今からじゃ無理ゲーでしょ!?」

 

 「嫌なら俺が直々に身体に叩き込んでやる。前に出ろ」

 

 圧。

 

 「が、がんばりまあぁすぅ……」

 

 あっさり陥落した。

 

 確かに素人がいきなり長物を扱うのは難しい。ミオやフィーも近接戦は得意分野ではないはずだ。

 

 「まあ」

 

 先生は視線をマヒロへ向ける。

 

 「お前がいればなんとかなるだろ。試しに振ってみろ。専門家の意見を聞いておきたい」

 

 「う、うむ」

 

 マヒロは木刀を受け取り、慎重に構えた。

 

 いつもの魔剣とは違う感触に、わずかに眉をひそめる。

 

 数度、空を斬る。

 

 ヒュン、と風切り音。

 

 「……ふむ」

 

 評価が始まった。

 

 「長さは魔妖よりやや長いでござるな。重さもこちらの方がある。重心も僅かに前寄り。素人では振り回されるであろう」

 

 的確だ。

 

 「それに、鞘のない刀を常に抜き身で扱う感覚は不慣れでござる。間合い管理にも違和感がある。拙者でも馴染むまで時間を要する」

 

 彼女がここまで言うのだから、相当だろう。

 

 先生は腕を組む。

 

 「改善の余地あり、か。後で開発班に伝えておく。今ならギリギリ調整が間に合うかもしれん」

 

 「流石に間に合わせてくれねーと困るんですけど」

 

 ギリスケがぼやく。

 

 「専門外だ。一応急がせるが、最終判断は向こう次第だな」

 

 マヒロはもう一度木刀を振るい、軽く魔力を流した。

 

 バチッ、と電光。

 

 その光が刃の軌跡をなぞる。

 

 視覚的威圧も十分だ。

 

 「……発想としては悪くないでござる」

 

 小さく、だが素直に認めた。

 

 確かに。

 

 木刀に雷を纏わせる。

 殺さずに止めるための武器。

 

 理にかなっている。

 

 ただ――

 

 「……にしても」

 

 俺は木刀を見つめながら思う。

 

 こんな魔導回路を内蔵した武器を、急造で作れるものなのか?

 

 電撃出力の制御。耐久限界。魔力許容量の調整。

 

 どう考えても、相当な技術が必要だ。

 

 まさか――

 

 これを設計したのは。

 

 俺の脳裏に、ある人物の顔がよぎった。

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