転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー11

 「木刀? ああ、それならもちろん私が作ったよ。護身用としては悪くない出来だろ?」

 

 「やっぱり、そうでしたか」

 

 ミーティング終了後、確認のためにソンジさんの研究室を訪れていた。ちょうど向こうも用があったらしく、タイミングは悪くなかった。

 

 相変わらず、研究室は物と機材で溢れている。壁際には魔導回路の設計図、机の上には分解途中の魔導具。彼女はいつもの白衣姿で、どこか生活感の薄い空間の中に立っていた。

 

 ――やはりこの人が作ったか。

 

 木刀から雷を発生させる、という発想。

 どこかロマンに振り切った設計思想。

 

 中二心をくすぐる感じが、実に彼女らしい。

 

 「君たち、初任務まであと少しだろう? コールスタッシュ先生に頼まれて急ごしらえしたんだ。どうだい、扱えそうかな?」

 

 「……それなんですけど」

 

 ちょうど彼女が興味を示したところで、本題に入る。

 

 

 

 「ふむふむ……少し重い、か」

 

 俺たちの意見を一通り聞き終えると、ソンジさんはすぐさま机に向かい、端末を操作し始めた。画面には魔導回路の構成図と数式が並ぶ。

 

 「刀身を長めに設計したのが裏目に出たな。重心が前に寄りすぎている。これでは初心者は振り回される」

 

 カタカタと軽快にキーを叩く。

 

 やはり、あの木刀も思いつきで作ったわけではないらしい。内部構造まできっちり計算されているのが分かる。

 

 申し訳なさもあるが、こちらも命が懸かった任務だ。妥協はできない。

 

 「間に合いそうですか?」

 

 「うーん……物理サイズの調整だけならすぐできる。ただ、魔力許容量の再設定も必要だな。出力を下げすぎればスタン効果が落ちるし、上げすぎれば回路が焼き切れる」

 

 画面を睨みながら続ける。

 

 「早くて二、三日といったところだ」

 

 「それなら、任務には間に合いそうですね」

 

 「理論上はな。だが“お望み通りの完成度”になるかは別問題だ。私は剣術の専門家ではない。実戦での使い心地までは保証できない」

 

 「まあ、そうですよね」

 

 彼女は発明家だ。武術家ではない。

 

 「できれば明日、例の彼女を連れてきてくれないか。実際に扱う本人から直接フィードバックをもらった方が効率的だ」

 

 「俺もそう思います。声をかけてみますよ」

 

 「頼んだよ」

 

 とりあえず、木刀の件は解決の目処が立った。

 マヒロが協力すれば、より実戦的な仕上がりになるはずだ。

 

 

 

 「あ、そういえば。用があるって言ってましたよね? 何の話ですか?」

 

 こちらの用件が終わったところで、今度は彼女の要件を尋ねる。

 

 さっき“ちょうど私も用があってね”と言っていたはずだ。

 

 「ん? ああ、私の用事か」

 

 くるりと椅子を回転させ、こちらを向く。

 

 「……えーっとねぇ~、こんばんわぁ~、わたしとぉ~、一緒に寝てほしぃ~なぁ~って」

 

 妙に甘ったるい声色。

 不自然に首を傾げ、わざとらしい仕草。

 

 「……で、用件は?」

 

 即座に切り返す。

 

 「ちっ。妹キャラでも駄目だったか」

 

 素に戻った。

 

 「いや、目の前でキャラ作り始めた時点でアウトでしょう」

 

 というか、切り替えが早すぎる。

 

 どうやら本気で誘惑する気は最初からなかったらしい。完全にからかい目的だ。

 

 研究者としては天才的だが、こういう悪ノリも忘れないのがこの人の厄介なところだ。

 

 「冗談だよ、冗談。君の反応を見てみたかっただけさ」

 

 まったく悪びれない。

 

 ……本当に用事は何なのか。

 

 今度こそ、まともな話であることを祈るばかりだ。

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