転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー13

 「なるほど。それなら、まあ……いいですけど」

 

 転移魔法。

 

 この実験が成功すれば、学園内に正式採用されるかもしれない。

 

 そうなれば、あの無駄に広い敷地を毎日歩き回らずに済む。

 教室棟から訓練場、寮までの移動時間が消えるだけでも革命だ。

 

 ――できれば自室から教室まで直通で頼みたい。

 

 「で、俺は何をすれば?」

 

 「慌てなさんな。今準備するから」

 

 ソンジさんは木刀の調整作業を中断し、机の下から何かを取り出した。

 

 黒いタイル状の板が二枚。

 

 思ったより薄く、そしてコンパクトだ。

 

 「あれが……転移装置?」

 

 彼女はそれを抱え、部屋の隅へ移動する。

 

 「まだ試作段階だから簡易版だけどね。これが成功すれば上出来だ。まずはこの距離でいこう」

 

 一枚を入口付近の床に設置。

 もう一枚を作業スペースの手前に置く。

 

 距離はおよそ五メートル。

 

 室内実験としては妥当な範囲だろう。背後には高価そうな機材が並んでいる。暴発でもしたら被害は甚大だ。

 

 「このタイルが転移基点だ。上に乗った状態で魔力を流すと、対になる装置へと瞬間移動する仕組みになっている」

 

 さらりと言うが、理屈がおかしい。

 

 「じゃあ、この上に乗ればいいんですね?」

 

 「そうそう。ただし注意事項があるから、まだ魔力は流さないように」

 

 言われた通り、装置の上に乗る。

 

 ――狭い。

 

 座布団一枚分ほどのサイズしかない。両足を揃え、腕を畳んでようやく収まる程度だ。

 

 「こ、これで……大丈夫ですか?」

 

 無理やり体を装置内に収める。

 

 少しでも姿勢を崩せば、端からはみ出しそうだ。

 地味にバランスがきつい。

 

 「うん、大丈夫。そのまま全身が装置から出ないようにね」

 

 「ぐっ……結構きついっすね」

 

 「簡易版だからね。大型化はまだこれからだよ」

 

 さらっと言うが、こちらは既に限界が近い。

 

 太ももが震えている。

 これ、長時間維持する体勢じゃない。

 

 「ちなみになんですけど」

 

 自分は恐る恐る尋ねる。

 

 「もし装置からはみ出した状態で起動したら、どうなるんです?」

 

 万が一、ほんの少しでもズレたら。

 指先や踵が外に出ていたら。

 

 安全装置くらいあるだろう、と僅かながらに期待しながら。

 

 ソンジさんは顎に手を当て、少し考える仕草をした。

 

 「うーん……」

 

 嫌な間。そのせいで変に不安を掻き立ててくる。

 

 「はみ出した部分は転移対象外になるね」

 

 「……対象外?」

 

 「つまり、その場に残る」

 

 「……」

 

 「最悪、身体が分断されるから――死ぬね」

 

 「……えっ?」

 

 そして、彼女から衝撃的な事実が告げられるのだった。

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